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青春分岐点が増えていく  作者: こむぎ


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こういう顔の時は告白だと相場が決まってる

 

———ここに来て、この人を見てるだけで心が軽くなった気がした。


晃星がふと月姫を見る。


「……で?」


「え?」


「どうしたの?」


月姫が答えようとするより先に、晃星が続けた。


「わざわざこっちまで来なくても、俺が言ったのに」


「……何を?」


「月姫が疲れたなら、俺がそっちまで行くって」


「あ……」


月姫は少しだけ目を伏せる。


「うん。でも……」


駅の周りを見渡す。


「花火の時にここに来た時の印象が強くて」


「うん?」


「もう一回来てみたかったの」


「ああ、なるほど」


晃星が笑う。


「確かに、あの日いろいろあったもんな」


「うん」


二人は駅の近くを歩きながら、花火の日のことを話し始める。


「そういえば、あの時の花火さ」


「うんうん」


「あっくん達めっちゃ騒いでたよね」


「だってあんなの騒ぐでしょ!!」


「ふふっ」


そんな他愛もない話をしていると――


「……あの子、かわいくない?」


「え、芸能人かな?」


少し離れたところから、そんな声が聞こえてきた。


月姫が振り返る。


どうやら、自分のことを話しているらしい。


「……」


さらに別の声が聞こえた。


「……と、その割に男の方普通だな」


「うん、普通すぎる」


「なんであいつがあんな可愛い子と?」


「……」


月姫の表情が曇る。


胸の奥が、きゅっと締めつけられる。


――また。


昔と同じ。


自分を見て。


隣にいる人を見て。


勝手に比べられて。


「……あっくん」


月姫が小さく声をかける。


「ん?」


晃星は何事もなかったような顔をしている。


「……ごめんね」


「え?」


「私が一緒にいるから……」


「??」


晃星が首を傾げる。


「何が?」


「さっきの人たち……」


「ああ」


晃星はようやく気づいたように、後ろを見る。


「……あれ?」


そして、あっさり前を向いた。


「別に何にも思わないけど?」


「でも……」


「俺、あんな全然知らない奴らになんて思われようが、全然気にならないから」


晃星はケロッとしている。


「……」


月姫は目を丸くする。


「気にならないの?」


「うん」


晃星は笑った。


「だって、知らない人だし」


「……」


「まぁ、外見だけで人の評価決めるならそれはそれでいいんじゃない?そんなの損するだけ!!」


そして、少しだけ胸を張る。


「むしろ俺は――」


晃星が月姫を見る。


「こんな可愛い子と友達でいいだろぉぉ?」


「……え?」


「って思ってるけど?」


「……っ」


月姫の目が見開かれる。


「な、何それ……」


顔が熱くなる。


「いや、普通にそう思わない?」


晃星は本気で不思議そうな顔をしている。


「月姫、外見だけでめちゃくちゃ可愛いって言われるなのに、俺はその可愛い子の他のいい所までいっぱい知ってるんだぜ!!って感じじゃん!!」


「……」


「俺なんかと一緒に歩いてるの、むしろ俺の方が得してるだろ」


「……あっくん」


月姫は思わず笑った。


「ほんと……変な人」


「なんでだよ!」


「ふふっ」


さっきまで胸にかかっていた雲が――


晴れていく気がした。


「つか、月姫」


晃星がふと思い出したように聞く。


「ん?」


「同窓会って、何時までなの?」


「えっと……22時までだよ」


「22時?」


晃星が時計を見る。


「まだいいの?」


「うん」


月姫は短く答える。


晃星は少し考える。


そして――


「あのさ」


「ん?」


「俺がお願い聞きに来たのに悪いんだけど……」


晃星が月姫を見る。


「俺のお願い、聞いてくれる?」


「え?」


月姫が目を瞬かせる。


「何?」


晃星は答えない。


いつものふざけた表情ではなかった。


真剣な顔で、まっすぐ月姫を見ている。


「……」


その表情に、月姫の胸がドクンと鳴った。


「……え」


一瞬、思考が止まる。


こんな顔をするあっくんを、ほとんど見たことがない。


心臓が、さっきまでとは明らかに違う音を立てる。


月姫は男子がこの雰囲気のときは発言は何か理解している。


(え!?ウソ?あっくんが!?全然今までそんなの意識してなかった。どうしよう)

「……」


そして――


晃星の口が動いた。


(あー、ヤバい!?どうしよう!?恥ずかしい!

 えー?)


「――付き合ってくれない?」


「……えっと…」


月姫の思考が完全に停止する。


「…………」


数秒。


何を言われたのか理解できない。


いや。


理解した瞬間――


「ええぇぇぇぇっ!?」


月姫が今までにないくらい大きな声を上げる。


「えっ!? いや、でも……!」


顔が一気に熱くなる。


何を言えばいいのか分からない。


「えっと……その……」


言葉が出てこない。


すると晃星は、少し残念そうに肩を落とした。


「やっぱ同窓会中だし、ダメだよなぁ〜」


「……え?」


月姫が我に返る。


「……今、なんて?」


「ん?」


「もっかい言ってくれる?」


晃星は不思議そうな顔をする。


「いや、今日ウチ、『お母さんお休みDAY』でさ、晩御飯ないんだよ」


「だからさ、俺の晩御飯付き合ってくれない?って聞いたんだけど?」


「…………」


月姫が固まる。


「…………あ」


数秒遅れて、意味を理解する。


「……あー」


顔がさらに熱くなる。


「そういうことか……」


勝手に別の意味で受け取ってしまった。


恥ずかしい。


恥ずかしすぎる。


さっきの自分の反応を思い出す。


「ええぇぇぇぇっ!?」


――絶対、変に思われた。


月姫は俯きそうになる。


けれど、晃星は何も気にしていない。


「よく行く店とかでも1人で行くのなんか恥ずかしくてさ」


「……ふふっ」


月姫は鼓動が早くなる胸を落ち着かせながら、顔を上げる。


そして、いつもの笑顔を作った。


「全然大丈夫だよ」


「ほんと?」


「うん!」


笑顔で答える。


けれど――


「……」


心臓は、まだ全然落ち着いていなかった。

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