↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春分岐点が増えていく  作者: こむぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/117

無意識のやさしさが1番響く

 学園よろずやの部長と初対面したその日の夜。


 俺は自宅でスマートフォンを眺めていた。


 ――ピコン。


『桐生くん、今大丈夫?』


 美空さんからだった。


『うん。ゲームする?』


『うん! 昨日の続きやろう』


『了解』


 ゲームを起動すると、すぐに美空さんがログインしてきた。


『じゃあ、昨日の続きから!』


「うん」


 二人でゲームを始める。


「美空さん、そっち敵いる」


『えっ、どこ!?』


「右。右!」


『あっ、いた!』


「危なかったな」


『助かったー!』


 そんなやり取りをしながら、しばらくゲームを続ける。


『やっぱり桐生くんとやると楽しいよ』


「そう?」


『うん』


 その時――。


 ――ピコン。


『あ、伊織からだ』


「天川さん?」


『うん』


 美空さんがメッセージを確認する。


『今ゲームしてる?』


『うん! 桐生くんとやってるよ』


 すぐに返信が来る。


『私もやる』


『じゃあ一緒にやろ!』


『伊織も一緒にやりたいって』


「あ、うん。いいよ」


 ほどなくして天川さんがゲームに参加する。


「こんばんは」


「お、天川さん」


「……桐生くん」


「ん?」


「さっき私がこのアプリ始めたの知ってましたよね?」


「うん」


「なのに、なんで私には声かけなかったんですか?」


「え?」


「月姫とやるなら、私も誘ってくれてよかったんじゃないですか」


「いや、美空さんから今日もやろうって連絡が来たから……」


「だから?」


「……」


「私、さっき部室で始めたばっかりなの、桐生くんも知ってましたよね?」


「知ってたけど……」


「じゃあ、普通なら誘いませんか?」


「……次から誘うよ」


「最初からそうしてください」


「はいはい」


「はいはいじゃないです」


(……あれ?)


(天川さん、最近ちょっとめんどくさくない?)


「じゃあ、三人でやろう」


「……分かった」


『ふふっ』


 三人でゲームを続ける。


 しばらくすると――。


 ――ピコン。


 俺のスマートフォンに電話が入った。


「あ、ごめん。ちょっと電話だ」


「うん」


『分かった』


「ちょっと抜けるね!」


『うん』


 俺はゲームから一度抜ける。


 残ったのは天川さんと美空さんの二人。


 しばらくゲームを続けていると、天川さんが口を開いた。


「そういえばさ」


『ん?』


「月姫が彼氏でもない男子と、こんなに仲良くゲームしてるのって意外だよね」


『……そうかな?』


「だって、今までそんなことなかったじゃん」


『うん。確かにそうかも』


 少し間が空く。


『でもね』


「ん?」


『桐生くんって、私のこと普通に扱ってくれるんだよね』


「普通に?」


『うん。他の男子と違って、変に意識してこないし、下心もないし』


「それはわかる」


 伊織が少し笑う。


「最初に会った時なんて、桐生くん、月姫のこと眩しくて見れないとか言ってたくせにね」


『ふふっ。そうだったね』


「今じゃ普通に話してるもんね」


『うん。自分でもちょっと不思議』


「だから一緒にいて楽なんだ?」


『うん。そうだと思う』


「そっか」


「でも、やっぱり意外だな」


『それ言ったら、伊織が桐生くんと毎日二人でお弁当食べてる方が意外だよ』


「……まあ、それはそうかも」


『お互い様だね』


「そうかもね」


 少し間が空く。


「そういえば、月姫」


『ん?』


「桐生くんと私の最初の話、覚えてる?」


『もちろん。白米事件でしょ?』


「事件にすな!」


『だって、普通ないって』


「……まあ、それはそうだけど」


『ふふっ』


「私、お弁当におかず入れ忘れんだよね」


『うん』


「それを桐生くんが見て、おかずを分けてくれて」


『「よかったら」って?』


「そう」


『それで伊織が「全部いいの?」って聞いたんだよね』


「うん」


『桐生くん、なんて言ったんだっけ?』


「『全部じゃねえよ』って」


『あははっ!そりゃ全部はあげないよね』


「そうなんだけど」


「でもね、桐生くん、唐揚げ予約してた猫ちゃんの分と私の分に、ほとんどくれたんだよ」


『え、猫ちゃんにも?』


「うん」


『優しい……』


「でしょ?」


『じゃあ、実質ほとんど全部じゃん』


「そう。だから『全部じゃねえよ』って言ってたけど、ほぼ全部くれたようなもんだね」


『ふふっ』


「私、あの時こんな人いるんだと思って」


『そりゃ、桐生くんのこと優しいって思うよね』


「うん。あれがきっかけだったと思う」


『なるほどね』


「それから一緒にお昼食べるようになって……気づいたら毎日一緒に食べてる」


『最初は白米だけだったのにね』


「ふふっ、そうなんだよ」


 少し沈黙してから、月姫がふと思い出す。


『そういえば、桐生くんをぶっ飛ばしたこともあったよね』


「……あったね」


『あれもお昼だったよね』


「うん。いつもの場所で桐生くんが寝転んでた時」


『そうそう』


『あんなことでぶっ飛ばしちゃダメだよ』


「だって! 桐生くん、見てないって言い張ったんだよ!」


『それで?』


「だから私が桐生くんに聞いたの」


『何を?』


「『じゃあ、今思いつく色は?』って」


『ふふっ、何それ。それで桐生くんは?』


「水色」


『……水色?』


「そう」


『あははは!』


「だから『見てんじゃん!』ってぶっ飛ばしたの」


『ふふっ』


「だって、見てないって言ってたのに!」


『ふふっ、そんなことで怒らないの』


「月姫なら怒らない?」


『怒らないよ』


「えっ?」


『だって事故なんでしょ? それくらいで怒ることじゃないよ』


「……月姫、余裕ありすぎない?」


『ふふっ』


「あー、伊織は恥ずかしかったんだよね」


「……うるさい」


『伊織、かわいいね』


「月姫……!」


『ふふふっ』


「もう、その話やめて!」


 二人はゲームを続けながら、しばらく笑い合っていた。


 その時、俺の電話が終わった。


「あ、ごめん。戻った」


「おかえり」


『おかえり!』


「二人とも、どこまで進んだ?」


『まだここだよ』


「じゃあ、続きやろうか」


「うん」


『うん!』


 三人のゲームは、また再開した。


 しばらくして、ゲームも終盤に差しかかる。


「そろそろ今日は終わろうか」


「うん」


『そうだね』


「あ、そうだ」


「ん?」


「クエストのクリア報酬で石が結構貯まってるんだった」


『あ、本当だ』


「俺も結構貯まってる」


『じゃあ、最後にみんなでガチャ引いて終わろうよ』


「いいね」


「私も引いてみる」


 まず俺がガチャを引く。


 ――結果はハズレ。


「……まあ、こんなもんか」


『残念』


「天川さんも引いてみたら?」


「うん。やってみる」


 天川さんが貯めていた石を使ってガチャを回す。


 画面が光る。


「……え?」


「ん?」


『えっ?』


 いつもと違う演出。


 次の瞬間――


『SUPER RARE!!』


「ええっ!?」


『すごい!』


「ちょっと待って! 初めてでそれ引いたの!?」


「これ、そんなにすごいの?」


「めちゃくちゃ当たりだよ! 俺も欲しかったやつ!」


「へえ……」


『伊織、運いいね!』


「そうなの?」


「そうだよ……」


 俺は自分のハズレ結果を見ながら、悔しさを噛みしめる。


『じゃあ、私も引いてみようかな』


「美空さんも?」


『うん。石あるし』


 美空さんもガチャを回す。


 画面が光る。


「……ん?」


『えっ?』


 そして――。


『SUPER RARE!!』


「ええっ!?」


『やったー!』


「美空さんまで!?」


「ふふっ、すごいね」


 俺は自分の結果をもう一度確認する。


 ――ハズレ。


「…………」


『桐生くん?』


「……......」


「桐生くん、運ないね」


「天川さん、やめて?」


『でも桐生くん、昨日からやってるんでしょ?』


「そうだよ……」


『ふふっ』


「始めたばっかの天川さんが当てて、美空さんまで当てて……」


「運が良かっただけだよ」


「ちくしょう!!日頃の行いが悪いのか!?」


『ふふふっ』


「そこは否定して!!」


 三人の笑い声が、スマートフォン越しに重なった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。