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青春分岐点が増えていく  作者: こむぎ


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我が家の両親は普通ではないらしい

 リビングでは、パパとママがいつものようにふざけ合っていた。


「あなたはちょっと黙ってなさい!」


「え〜っ!? なんでだよ、加奈ちゃ〜ん!」


「なんでじゃないでしょ!」


「だって、加奈ちゃんが可愛いから、つい構いたくなっちゃうんだも〜ん!」


「も〜っ! そういうこと、みんなの前で言わないでよ!」


 ママは困ったように笑いながらも、どこか嬉しそうだった。


 そんな二人のやり取りを、伊織と月姫が並んで眺めている。


「ふふっ、ママとパパって本当に仲良しだね!」


「うんっ! なんだか、いいなぁ……」


 月姫が微笑むと、伊織も小さく頷いた。


「……うん。いいなぁ、ああいうの」


 二人の言葉を聞いて、俺は不思議そうに首を傾げた。


「……でも、夫婦ってあんなもんじゃないの?」


「「あれは普通じゃない!!」」


「だって、俺はあれを見て育ってきてるからな。夫婦って、ああいうもんだと思ってた!」


 俺がそう言うと、伊織と月姫は顔を見合わせた。


「そっか……。あっきーはずっとああいう二人を見てきたんだもんね」


「うん。なんか、ちょっと羨ましいなぁ」


「いや、毎日あんな感じだぞ? たまには静かにしてほしいくらいだけど」


「え〜っ!? あっきー、そんな事思ってた!?」


 会話を聞いていたパパが、わざとらしくショックを受けた顔をする。


「俺と加奈ちゃんの愛のやり取りを、そんなふうに思っていたなんて……!」


「愛のやり取りって自分で言うなよ!」


「あははっ!」


 伊織が笑い、月姫も口元を押さえてくすくすと笑った。


「も〜っ! コイツは本当に……!」


 ママは呆れたようにため息をついたものの、やっぱり笑顔だった。


 ……まあ、こういうところも含めて、うちの日常なんだよな。


「よ〜し! じゃあ、そろそろケーキにしよっか!」


 パパがパンッと手を叩く。


「ケーキ!?」


「やったぁ!」


 伊織と月姫の目が一気に輝いた。


「そう! ジャーン!」


 パパがテーブルの上に置いてあった箱を開けると、中にはハロウィン仕様の可愛らしいケーキが並んでいた。


「わぁ〜! 可愛い!」


「すごい! どれも美味しそう!」


 二人は身を乗り出して、ケーキを眺めている。


「ほら、それ、お前の好きなやつだろ?」


 父が俺に差し出したのは、シンプルなショートケーキだった。


「おおっ! よくわかってんな〜!」


「だろ〜? お前の好きなものくらい、ちゃんと覚えてるって!」


 パパは得意げに胸を張った。


「でも、ちゃんとあっきーの好きなのも買ってきてくれたんだね。ありがと」


 ママが笑顔でそう言うと、パパは勢いよく振り返った。


「え!? 今、俺のこと愛してるって言った?」


「はぁ!?言ってませんけど!?」


「俺も愛してるよ、加奈ちゃ〜ん!」


「だから!!言ってない!!!」


 ママのツッコミがリビングに響く。


「あはははっ!」


「ふふっ、やっぱり仲良しだね!」


 伊織と月姫は楽しそうに笑っていた。


「も〜っ! ちょっと黙っててよ!!」


「え〜っ!? ひどい!」


「ひどくない!」


 ……本当に、いつもこんな感じだ。


 俺たちはそれぞれ好きなケーキを選び、みんなで食べ始めた。


 伊織は可愛い飾りが付いたケーキを嬉しそうに頬張り、月姫も幸せそうに目を細めている。


「ん〜っ! 美味しい!」


「こっちもすっごく美味しいよ!」


「だろ? パパのセンスがいいからな!」


「ケーキ屋さんのセンスね!!」


 ママの冷静なツッコミに、また笑いが起こった。


 そんなこんなで、楽しいケーキタイムはあっという間に過ぎていった。


「ふぅ〜、美味しかった!」


 俺が満足して息をつくと、パパが待ってましたとばかりに手を挙げた。


「よ〜し! じゃあ、次はみんなでゲームしようぜ!」


「いいね!」


「私もやりたい!」


 伊織と月姫も乗り気のようだ。


「悪い。俺、先にシャワー浴びてくるわ」


「おっ、了解! 戻ってきたら一緒にやろうぜ!」


「ああ」


 俺はそう返事をして、リビングをあとにした。


 シャワーを浴びてさっぱりした俺がリビングに戻ると、三人がソファに座っていた。


 ママと伊織、そして月姫が並んで座り、その前の床ではパパがゲームのコントローラーを握りしめている。


「うおおおっ! なんでだよぉぉぉっ!!」


 パパが頭を抱えた。


「また負けたの?」


「いや、今のは絶対おかしいだろ! 相手、強すぎるって!」


「さっきも同じこと言ってたよね?」


「だって本当に強いんだって!?」


「はいはい」


 ママは呆れたように返事をしながらも、楽しそうに笑っていた。


「おっ、あっきー! 戻ってきたか! ちょうどいい、次はお前がやってくれ!」


「いや、俺はまだやるって言ってないだろ」


「え〜っ! いいじゃん、ちょっとだけ!」


「ちょっとだけって言いながら、絶対長くなるだろ」


「あははっ! あっきー、パパのことよくわかってるね!」


 伊織が笑いながら言った。


「まあ、長年の付き合いだからな」


「おいおい、そんな言い方ないだろ〜!」


 パパが大げさに肩を落とす。


 俺は苦笑しながら、ソファのほうへ向かった。


「あっくん! おかえり!」


 月姫が俺に気づくと、ぱっと笑顔になった。


「おう、ただいま」


「こっちこっち!」


 月姫は自分の隣をポンポンと叩いた。


 俺が腰を下ろすと、月姫は何かを思いついたように「あっ!」と声を上げた。


「そうだ! あっくん、膝枕してあげようか?」


「ん? いいのか?」


「うんっ!」


 月姫は嬉しそうに頷き、自分の膝を軽く叩いた。


「はい、あっくんの指定席!」


「じゃあ、遠慮なく」


 俺は特に気にすることもなく、体を横にして月姫の膝に頭を預けた。


 月姫は俺の頭を優しく撫で始める。


(あっくんがこうして素直に膝枕してくれるの、嬉しいなぁ……。えへへ)


 月姫は顔に出さないようにしながらも、内心では幸せを噛みしめていた。


 ……月姫って、最近よく膝枕してくれるよな。


 まあ、気持ちいいから別にいいけど。


 そんな俺たちを、隣に座っていた伊織がじっと見ていた。


「……また月姫があっきーを甘やかしてる」


「えへへ……」


 月姫は照れくさそうに笑う。


「……ほんと、あっきーに甘いんだから」


 伊織は少し呆れたような顔をした。


 すると、月姫がニコッと笑って伊織の顔を覗き込む。


「……ねえ、伊織もあっくんに膝枕したいんだ?」


「はぁっ!? な、なんでそうなるの!?」


「ふふっ、だって、そんなに気になるのかなって思って」


「ち、違うってば! もう、月姫!」


 伊織は顔を赤くして、ぷいっとそっぽを向いた。


「あれ?じゃあ伊織ちゃんには、俺が膝枕してもらおうかな〜!」


「えっ!? ちょっと、パパ! それはないって〜!」


 伊織は慌ててママのほうを振り向いた。


「ママ〜、助けて〜! パパが変なこと言ってる〜!」


 ママはニコニコと笑ったまま、ゆっくりと拳を握りしめた。


「おい……?」


「……はい」


「うちの子たちに、変なこと言わないでくれる?」


「じょ、冗談に決まってるだろ! ははっ、いやだなぁ!」


「そう?」


「も、もちろんです!」


 パパは慌てて姿勢を正した。


「あははっ! パパ、怒られてる!」


 伊織が楽しそうに笑う。


「おいおい、伊織ちゃん……!?」


 パパはしょんぼりしたふりをしたあと、何かを思いついたようにポンッと手を叩いた。


「そうだ! 俺は加奈ちゃんに膝枕してもらおうかな!」


「……は?」


 ママの笑顔がピタリと止まる。


 そんなことには気づかず、パパはママの膝に頭を預けようとした。


 その瞬間。


 ママがスッと立ち上がった。


「えっ?」


 ゴンッ!!


「いっっっっったぁぁぁぁぁっ!!」


 パパの頭が床に勢いよくぶつかった。


「ちょっ、加奈ちゃん!? なんで立つんだよぉぉぉっ!!」


「え? あなたが床に頭を置きたいのかと思って」


「そんなわけあるかぁぁぁっ!! 膝枕だよ! 床枕じゃないよ!」


「え〜? でも、もう頭が床についてるじゃない」


「そういう問題じゃないって!」


 ママは涼しい顔で首を傾げた。


「もう、いい年して甘えようとするからよ」


「えぇ〜……。じゃあ、俺が調子に乗らなかったら、膝枕してくれた?」


「調子に乗らないの」


「はい……」


 パパはしょんぼりと床に座り直した。


「あはははっ!」


 伊織が声を上げて笑い、月姫も俺の頭を撫でながら楽しそうに笑っていた。


 ……今日も、うちは平和だな。

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