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青春分岐点が増えていく  作者: こむぎ


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100/119

大歓声の全力疾走!!

その後も体育祭は次々と競技が行われていった。


綱引き、障害物競争――。


そして、一年女子100メートル走。


「次は一年女子、100メートル走です!」


晃星はトラックへ目を向ける。


そこには、紅団の月姫と白団の朝倉美咲が並んでいた。


「おっ」


二人がスタートラインにつく。


「位置について――」


「よーい……」


パァーン!


スタートの合図と同時に、一斉に駆け出す。


「美空さーん!!」


「頑張れー!!」


紅団から月姫への大きな声援が飛ぶ。


しかし――。


「速っ!」


晃星が目を見開く。


バレー部の美咲が一気に前へ出た。


そのまま勢いを落とさず、ゴールへ駆け抜ける。


「一着、朝倉美咲!」


「おおおお!!」


白団から大きな歓声が上がる。


一方、紅団からは――。


「あぁ~~……」


「惜しかったー!」


残念そうな声が上がった。


晃星はゴールした美咲に親指を立てる。


「朝倉、凄い!!」


すると、美咲が晃星に気づいた。


「あっ!」


満面の笑顔を浮かべ、そのまま晃星のところへ駆け寄ってくる。


「きりゅちゃん、ありがと!」


「うん! 速かったな!」


「でしょ!」


美咲は嬉しそうに笑う。


その様子に白団もさらに盛り上がった。


一方、月姫は悔しそうな表情を浮かべている。


晃星はそんな月姫のところへ近づいた。


「月姫も惜しかったよ!」


「……あっくん」


月姫は悔しそうにしながらも晃星を見る。


「次は負けないからね!」


「うん!」


晃星は笑って頷いた。


その後も競技は続いていく。


「一着、天川伊織!」


続いて行われた競技では、伊織が見事一着を取った。


「やったー!」


白団から大きな歓声が上がる。


その後も綱引きや障害物競争などが行われ、午前の競技は進んでいった。


そして――。


午前の大一番。


三年生の100メートル走が始まろうとしていた。


晃星がトラックを見る。


スタート地点には、緊張した面持ちの風間が立っていた。


「風間、大丈夫か?」


別の団ではあるものの、虎太が声をかける。


「すまない。大丈夫だ」


風間はそう答える。


そこへ晃星が近づいてくる。


「風間先輩!」


風間が晃星を見る。


「やれることやってきたから! タイムもめっちゃよくなったし! 頑張って!!」


「……ああ。ありがとう、桐生くん」


そのやり取りを聞いていた岩田が、鼻で笑う。


「まぁ、無駄な努力だけどな」


風間は岩田を一度見るが、何も言わない。


すると岩田は虎太たちのほうを向く。


「一ノ瀬! 神崎妹も一年のかわいい子も、紅団の俺の応援しろよ!」


「……何で俺まで?」


虎太が怪訝そうな顔をする。


「一ノ瀬! お前も紅団だろ!」


「いや、まあそうだけど……」


虎太は釈然としない顔をする。


奈緒と月姫も戸惑いながら岩田を見る。


その横で、晃星が風間に声をかける。


「ま、先輩の頑張りを楓先輩に見せるだけだから!」


風間が頷く。


「そうだね!」


そして、気合いを入れるように拳を握った。


やがて、風間と岩田の番になる。


二人がスタートラインに並ぶ。


「風間ぁ~、手加減してやろうか?」


この期に及んでも、岩田はまだ風間を煽ってくる。


だが、風間は無視して精神を集中させる。


晃星、伊織、虎太。


そして、彼女の楓も固唾を飲んで二人を見つめていた。


「位置について――」


風間が構える。


「よーい!」


パァーン!


号砲が鳴った。


スタートは悪くない。


風間は練習通りのフォームを崩さず走り出す。


「……!」


岩田が驚いたように風間を見る。


風間はそのまま加速していく。


間違いなく、練習初日の姿ではない。


あの日、ドタバタと走っていた風間とはまるで違う。


上体を安定させ、前を見て、腕を振る。


何度も何度も繰り返してきた動き。


その一つ一つが、今の風間の走りになっていた。


ヘラヘラしていた岩田の表情も変わり、真剣な顔になる。


そして、岩田も加速していく。


「おー!! 先輩いけるいける!」


晃星の声が響く。


「駿太郎! 頑張れ!!」


楓の声も飛ぶ。


その声援を力に変えるように、風間は走り続ける。


だが、加速した岩田との差は少しずつ広がっていく。


それでも風間は前だけを見ていた。


(まだだ)


(最後まで――)


(今の俺にできることを全部出す!)


風間は最後まで力を振り絞り、走り抜ける。


「ゴール!」


風間は6人中3位でゴールした。


「うおおおおおおお!!」


「すげー!!」


「風間、三位!?」


「そんな速かった!?」


一気にグラウンドが沸いた。


晃星は目を見開いたまま、ゴールした風間を見つめる。


「……すげぇ」


思わず声が漏れる。


初日に見た、あのドタバタした走り。


そこから何度も練習を重ねてきた。


だからこそ、この3位がただの順位には思えなかった。


「先輩!!」


晃星は風間のところまで走っていき、そのまま抱きつく。


「かっこよすぎ!! 凄かったよ!」


「はぁ……はぁ……」


風間は息を切らしながら、晃星を見る。


「……ありがとう、桐生くん」


そこへ楓がやってくる。


目には涙が浮かんでいた。


「駿太郎……」


楓は風間の手を握る。


「かっこよかったよ。駿太郎!」


風間は楓を見て、少し笑う。


「いや、桐生くんのおかげだよ」


「いやいや、俺は騒いでただけだから!」


「ははは!」


「ふふっ」


三人で笑う。


その少し離れたところでは、岩田がつまらなさそうな顔をしていた。


すると、陸上部の一年生たちが岩田のもとへやってくる。


「岩田先輩、さすがです!」


「やっぱり速いっすね!」


すると一年の河野が口を開いた。


「こうなったら白団ぶっ潰しましょ!」


「最終戦の一年リレーで、俺がぶっちぎりますから!」


河野はそう言って、闘志を燃やしていた。


⸻


そして、午前の競技が終わり――。


昼休憩。


晃星と伊織が教室へ戻ると、いつもとは違うざわつきが教室に広がっていた。


「どうしたの?」


伊織がクラスメイトに声をかける。


「それがさ……」


一人の男子が困ったように話し始める。


「一年生対抗リレーに出る予定だった三浦が、さっきの競技で足を挫いて出られなくなったんだよ」


「えっ、大丈夫なの?」


「歩けるみたいだけど、リレーは無理だって」


クラス内がさらにざわつく。


「どうする?」


「他に足の速いやつって言っても、もう選手に入ってるしな」


「じゃあ、体力残ってそうなやついるか?」


「昼からも競技あるだろ? そんな奴いるか?」


誰もすぐには答えられない。


そんな中――。


伊織がふと晃星を見る。


「あっきー」


「ん?」


「ねえ、あっきーってパン食い競争以外なんか出た?」


「いや? 出てないが?」


伊織が手を挙げる。


「はーい!! 桐生くんでお願いしまーす!」


「おいぃぃぃ!!」


晃星が思わず叫ぶ。


「勝手に決めんな!」


「でも、あっきーだけだよ? 一つしか出てないの」


「……う!」


そう言われると、晃星は言葉に詰まる。


確かに、朝一番の競技に出ただけ。


「あー、朝一の競技しか出てないんだったら、桐生も体力有り余ってんな!」


クラスメイトが納得したように頷く。


「いや、有り余るってことは……」


晃星が嫌そうな顔をする。


すると、リレーの他のメンバーが口々に言う。


「大丈夫だって!」


「桐生が走る頃には、俺たちがぶっちぎってるから!」


「アンカーまでに十分差つけとくし!」


「いや、そういう問題じゃ……」


晃星は教室を見回す。


だが、みんなの視線が自分に集まっている。


「…………」


しばらく黙ったあと、晃星は諦めたようにため息をついた。


「……わかったよ」


こうして――。


本来出る予定のなかった一年生対抗リレーに、急遽、晃星が出場することになった。

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