地獄の幕引き
ベッドの上には、両足を失い、包帯でぐるぐる巻きにされた辺境伯が横たわっていました。彼は痛み止めで眠らされており、夢の中でさえ足の痛みに呻いています。
「……さあ、起きてください。夢の続きを見ている場合ではありませんよ」
あなたは枕元に置かれた水差しに、ほんの微量の媚薬を滴らせました。辺境伯の乾いた唇を濡らすと、彼は数秒の痙攣ののち、朦朧と目を開けます。
「……あ、あぁ……? 誰だ、貴様……薬師か? 痛い……足が……私の足が……ッ!」
彼は激痛で狂乱しかけましたが、あなたの放った微量の媚薬が、彼の脳内の神経伝達物質を強制的に書き換えます。痛みは消えるどころか、より鮮明な苦痛として彼を襲いつつ、同時に、目の前にいるあなた(ミアの姿をした復讐者)に対して、言いようのない「渇望」と「執着」を抱かせ始めました。
彼はベッドの上で、ないはずの足の痛みに悶えながら、潤んだ瞳であなたを見つめます。
「ああ……お前、なぜだ……。痛いのに、お前のそばにいたい……なぜこんな……ッ!」
「ええ、それはとても素晴らしいお薬だからですよ。絶望と愛着、その両極端な感情があなたの内側で踊っているのです」
あなたは優雅に立ち上がり、彼の耳元で囁きます。かつてエリンであった時の、冷たく澄んだ声で。
「……私の名前、もう一度言います。セレスティア・ヴァルカス。あなたがかつて、石畳の上でゴミのように踏みつけ、殺したはずの女です。……その両足がなくなったのも、私の仕業。……どうですか? 自分で引き起こした復讐の痛みは、甘美でしょう?」
「セ、レスティア……!? 馬鹿な、貴様は、あの時……ッ!」
彼は恐怖と愛情、そして断ち切られた肢体の痛みによって、完全に精神が崩壊しかけています。彼は愛してやまないはずのあなたに向かって這い寄ろうとし、断端から噴き出す血でシーツを真っ赤に染め上げました。
「……ああ、もっと見せてください。あなたが私を殺した時と同じくらい、いえ、それ以上に美しい『最期の顔』を」
【復讐の最終判定:恐怖と快楽の極致】
ダイスロール: (9)
判定: クリティカル(成功)
結末:地獄の幕引き
辺境伯は絶叫を上げ、そのまま過呼吸に陥り、意識の深淵へと沈んでいきました。心臓は、恐怖と愛着の極限に耐えきれず、自ら鼓動を止めたのです。
彼は安らかな死とは無縁の、悪夢の中で自分の両足を探し続けながら息絶える――という最高の死に様を遂げました。
部屋には、執事が番をしている扉の外から騎士たちの焦った声が聞こえてきますが、執事は忠実に扉を閉ざし、あなたを守り続けています。
「……終わりましたね。ですが、私の旅はまだ続きます」
あなたはミアの身体からゆっくりと立ち上がり、血に染まったシーツを一瞥すると、窓を開けました。そこには聖都の夜景が広がっています。
「まだ復讐が終わっていない人間が、他にも数人……いえ、何人いたかしら」
あなたはミアの持ち物から旅の資金を抜き取り、窓から闇夜へと飛び降りました。復讐の第一幕は、血と愛欲の匂いを残して完遂されました。
スキル成長:
禁忌(意識転移): 65 → 75
交渉(演技・言いくるめ): 60 → 75
第一章:終幕のモノローグ
「……甘い、匂いがしましたね。血と、薬草と、そして男の魂が腐り落ちる匂い。
私はこれまで、幾度となく死に、幾度となく誰かの生を奪い、その泥濘のような記憶を飲み干してきました。今回もまた、ミアという名の平凡な行商人の夢を汚し、彼女の人生を灰に帰した。――でも、不思議です。胸の奥にこびりついていたあの冷たい石畳の感触が、ほんの少しだけ薄らいだ気がするのです。
辺境伯は死んだ。あの肥え太った豚のような男が、愛と絶望に溺れながら、最後には自分の存在すら見失って果てた。……ええ、最高の死に様でしたわ。
この街の霧は、私の復讐を祝福しているのでしょうか。それとも、さらに多くの血を啜るようにと、喉を鳴らしているのでしょうか。
私は夜に溶ける。まだ私の復讐帳には、他にもいくつかの名前が刻まれているのですから。神も仏も地獄の悪魔ですら、私の行く手を阻むことはできません。
さあ、次の舞台へ。今度はどんな声で、どんな人生を、その心臓を、踏み潰して差し上げましょうか」
第二章:腐敗の連鎖
彼女が次に標的とするのは、かつてセレスティアの一族を陥れるために、虚偽の証言を捏造した「元・法廷魔導士官:アルベール」です。
彼は自身の権力を守るため、広大な結界で街を覆い、異端審問官を雇って街の住民たちを監視・抑圧する恐怖政治を敷いていました。




