腐敗の連鎖
第二章:腐敗の連鎖
セレスティア(ミアの肉体)は、聖都の喧騒を背に、闇へと消えていきました。
彼女が次に標的とするのは、かつてセレスティアの一族を陥れるために、虚偽の証言を捏造した「元・法廷魔導士官:アルベール」です。
彼は現在、聖都から遠く離れた、閉鎖的な山岳都市の領主となっています。彼は自身の権力を守るため、広大な結界で街を覆い、異端審問官を雇って街の住民たちを監視・抑圧する恐怖政治を敷いていました。
ミアの身体は、聖都での乱闘と過激な魔法行使の反動で、すでに限界を迎えつつあります。あなたの魂は、新たな器を求め、あるいはこの壊れかけの器を酷使しながら、次の地獄へと足を踏み入れます。
あなたは山岳都市の麓にある、うら寂しい宿場町に到着しました。
街には「アルベール卿による異端審問」を恐れる住民たちの、重苦しい空気が漂っています。
「……さて、ミアさん。あなたの貯めてきた銅貨の数々、少しばかり拝借しますよ。あなたの夢を叶える店は開きませんが、あなたの人生で一番高い買い物をすることになりますから」
あなたは宿場町の片隅にある、うらぶれた酒場へと足を踏み入れました。そこは、異端審問官の目を盗んで酒を飲む、疲れ果てた男たちが集う場所です。あなたはミアの荷車から取り出した、行商で蓄えたなけなしの財産をテーブルに投げ出し、声を潜めて酒場中の視線を集めました。
「アルベール卿の支配、うんざりでしょう? この金は、彼の結界の『隙』を知る者に差し上げます。……情報を売ってくれる方はいませんか?」
【情報収集・扇動:成功判定(成功率75)】
(財産を惜しみなく使うことで、成功率にボーナス+10)
ダイスロール: (22)
判定: 成功
酒場の空気が凍りつきます。しかし、一人の老いた元門番が、あなたの投げ出した金貨を震える手で覆い隠しました。
「……嬢ちゃん、命が惜しくないのか。あそこの結界はな、毎夜『贄』を要求する。領主アルベールが魔導儀式で食らっているのさ。明日、生贄として街から選ばれた者が、結界の維持装置へ連れて行かれる。……その隙間を狙うなら、その『生贄』の馬車に紛れ込むしかねえ」
老人は、明日行われる「生贄の選別」のリストと、護衛の交代時間を書き記した紙片を渡してくれました。
「……贄、ですか。実に興味深い。復讐のための特等席が用意されているとは、運命も粋な計らいをしてくれるものですね」
あなたは酒場を後にしながら、ミアの身体の限界を感じていました。肺が苦しく、指先は時折、意図せず痙攣を起こします。今のミアの肉体では、明日の潜入は死を意味するでしょう。
>>短時間だけ効果のある簡単な麻痺毒を作って潜入する
「……そうですね。生贄の馬車に紛れ込むにせよ、乗り移るにせよ。暴れる獣を捕まえるには、まずその脚を止めてあげるのが礼儀というものです」
あなたは宿でミアの道具袋を広げ、行商で培った薬草の知識と、かつての魔導知識を融合させます。完成したのは、短時間だけ神経を遮断し、対象を動けなくする無色透明の液体。匂いもなく、霧のように散布できる即効性の毒です。
【調合:麻痺毒(成功率75)】判定
ダイスロール: (42)
判定: 成功
「……完璧。あとは、明日の朝を待つだけですね」
翌朝。あなたは宿場町を出て、贄の護送車が通過する街道の隘路へと先回りしました。
遠くから、重々しい鎖の音と共に、護送の馬車が近づいてきます。乗せられているのは、アルベールの結界を維持するための動力源として、あてがわれた不幸な村人たち。
あなたは霧の中、道端で「怪我をした行商人」を装い、馬車が減速した瞬間に麻痺毒を散布する準備を整えます。
馬車の車輪が泥濘を噛む音が、霧の底から響いてきます。
あなたは道の傍らで泥にまみれ、荷車を横転させて「犠牲者」のふりをして待ち構えます。
「……助けて……ください……」
ミアの喉から絞り出されたか細い声に、護送の騎士たちが馬を止めました。中でも、ひときわ警戒心の強い女護衛が一人、馬から降りてあなたへ近づいてきます。
「おい、こんなところで何を……? ……くっ、この霧、甘い……ッ!?」
あなたが袖口から散布した麻痺毒が、彼女の顔面を包み込みました。
彼女の眼光が揺らぎ、剣を持つ手に力が入りません。彼女は倒れ込む寸前、何が起きたのかを理解しようと必死にあなたを睨みつけました。
「……悪いですね。あなたのその頑健な肉体、少しばかり私に貸してください。……これも、慈悲だと思って」
あなたは意識の薄れゆく彼女の懐へ飛び込み、その首筋に手を当てます。
【禁忌:意識転移(女護衛への乗っ取り)】判定(成功率:75)
ダイスロール: (51)
判定: 成功
女護衛の身体が、一度激しく痙攣した後に静まりました。
霧の中から立ち上がったのは、先ほどまで倒れていた女護衛その人。しかし、その瞳には冷酷なまでの復讐の炎が宿っています。
「……ふむ。ミアの身体よりも、随分と体幹がしっかりしていますね。これなら、あの忌々しい結界の奥底まで、多少の無茶をしても壊れはしません」
あなたは倒れたミアの亡骸を道の脇の茂みに隠すと、女護衛の鎧を正し、馬車の方へと歩み寄りました。
「……おい、どうした? 報告は」
馬車を御していた騎士がこちらを見て声をかけます。あなたは女護衛の冷徹な仮面を被り、低い声で応じました。
「……ただの迷い人でした。すでに事切れています。……さあ、行程を急ぎましょう。アルベール卿がお待ちです」
馬車は再び走り始めました。
あなたは今、生贄を運ぶ護送騎士として、アルベールの牙城へと乗り込みます。




