聖都の晒し者
「……さあ、宴の時間です。泥に塗れた悪徳商人に、最期の慈悲を授けましょう」
あなたはエレーナの鎧を脱ぎ捨て、その身に纏っていた騎士の外套も引き裂きました。混乱する屋敷の中、バルドが逃げ込もうとしていた書斎の扉を、あなたは蹴り破ります。
「……バルド様。お探しでしょうか? あなたの忠実な腹心、その正体はこの私、セレスティア・ヴァルカスです!」
あなたの言葉に、バルドは顔面を蒼白にして後ずさりしました。彼は剣を抜こうとしますが、あなたは瞬時に彼の間合いへ踏み込みます。
【剣技:復讐の舞踏(成功率80)】
ダイスロール: (18)
判定: 成功
あなたの剣は、彼を殺すことなく、肉の断片だけを丁寧に削ぎ落としていきます。
肩、胸、腕――そして最後に、辺境伯と同じように、バルドの両足を根元から切断しました。彼は激痛に悶絶し、床を血に染めて転がります。
「ああぁぁっ!! な、何を……貴様、狂っているのか……ッ!」
あなたは彼の耳元に顔を寄せ、凍りつくような囁きを落としました。
「狂っている? いいえ、これはただの清算です。あなたが一族から奪い、聖女の皮を被って膨れ上がらせたその富と命……今、ここで使い切るのです。……私が誰か、思い出せましたか? あなたがかつて、泥の中で踏み潰したはずの『ゴミ』の娘ですよ」
バルドの目が恐怖に大きく見開かれます。
「その先は、神殿の慈悲に期待なさい。ただし、今のあなたに与えられるのは神の祝福ではなく、民衆と……マリア様が抱く狂おしいまでの憎悪だけですが」
あなたはバルドの悲鳴を背に、書斎の隅で怯えていたセシリアの方を振り返りました。彼女はあなたの残忍な姿を見て震えていますが、あなたの魂はすでに、彼女という純白の器へ跳躍する準備を整えています。
「さて……エレーナ、お疲れ様でした。」
エレーナの肉体が、あなたの魂が抜けたことで崩れ落ちます。バルドの護衛たちが書斎になだれ込んできたその瞬間、あなたはセシリアの清らかな肉体へと、霧のように滑り込みました。
【禁忌:意識転移(見習い聖女セシリアへの憑依)】判定(成功率:80)
ダイスロール: (29)
判定: 成功
第三章・終幕
セシリアの細い指が、初めて自分の意志で動きました。
神聖な魔力が全身を駆け巡ります。あなたは聖女の清らかな衣を纏い、倒れ伏して泣き叫ぶバルド、そして狂乱する騎士たちを、慈悲深き聖女の瞳で見下ろしました。
エレーナの死体は騎士たちに囲まれ、反逆の罪人として扱われています。
あなたはセシリアの声で、静かに呟きました。
「……殺すのは簡単すぎますね。マリア様、貴女の心にあるその漆黒の炎……どうか、この男の魂を焼き尽くすまで消さないでください」
あなたはセシリアの清らかな声で、戦慄するマリアに囁きかけました。その言葉は、まるで神の啓示のようにマリアの理性を塗り替え、彼女の中に眠っていたバルドへの復讐心を爆発させます。
結末:聖都の晒し者
マリアは怒りに震えながら、血だらけのバルドを縛り上げました。彼女は神殿の権威という盾を使い、バルドを聖都の広場へと引きずり出します。
バルドの喉は、あなたが以前の暗殺劇で示したように、喋れるが叫ぶ力は削がれた状態。彼は広場の真ん中に置かれた木製の架台に、四肢を広げて吊るされました。
「聞け! この男こそ、我々の神聖を金で汚し、人々の命を贄として差し出した希代の悪党、バルドだ!」
マリアの怒声が広場に響き渡ります。集まった民衆は、かつて彼に慈悲を乞うていた者たちです。裏切られた怒りは何倍もの憎悪となって返ってきました。
ゴッ、と鈍い音がして、バルドの頬に石が当たりました。それが合図でした。
子供、老人、かつて屋敷で虐げられていた使用人たち――次々と石が投げつけられ、バルドの身体は泥と石と血で覆われていきます。彼は死ぬこともできず、ただ自分がしてきたことの報いとして、民衆の罵倒を浴び続けなければなりません。
あなたはセシリアの衣を纏い、高台からその光景を眺めていました。その瞳には、一筋の慈愛の涙さえ浮かべて。
「……ああ、なんと美しい光景でしょう。彼が富を積み上げるために踏みつけた数だけ、今は石を受け取っているのですね。……神様も、今日は随分と公平なジャッジをされているようですわ」
あなたの魂は、セシリアの清らかな器の中で、安らぎと高揚を感じていました。復讐が進むたび、あなたの内なる憎悪は研ぎ澄まされ、もはやエリンであった頃の悲しみは完全に消え去っています。
スキル成長:
禁忌(意識転移): 90 → 95
聖なる魔力(聖女への適応): 60 → 85
「……さて。最後の名前。――かつて私の一族を弾劾し、私のすべてを奪った元凶。今は王家の側近として君臨する宰相です」
宰相は今、厳重な警備と最高位の魔導障壁に守られた王宮にいます。神殿の聖女であるセシリアという立場は、彼に近づくための最高の鍵となるでしょう。




