豪商バルドの懐へ
次なる標的は、かつてあなたの一族の家財を奪い、今は聖都で「慈悲深い慈善家」として名を馳せている「豪商:バルド」です。
彼は莫大な富を背景に、神殿に多額の寄付を行い、聖女たちに守られて暮らしています。暗殺や直接的な力行使は最も困難な相手です。
「死にゆく敗者の忠犬として、次の獲物に近づく。これほど皮肉で、そして効率的な駒の使い方はありません」
あなたはエレーナの身体のまま、ボロボロになった騎士の外套をあえて羽織り、聖都にあるバルドの広大な屋敷の門を叩きました。山岳都市の惨状はすでに聖都にも届いています。アルベールが民衆の手で引き摺り下ろされたという噂は、豪商であるバルドの耳にも届いているはずです。
潜入:豪商バルドの懐へ
門番に追い払われそうになった瞬間、あなたはアルベールが処刑される直前、彼が絶望の中で書き殴っていた「全財産の隠し場所」の偽情報を記した紙切れをちらつかせました。
「……アルベール卿の元護衛、エレーナです。あの方の最期……あの地獄を見届けてきました。卿の残した『資産』の一部が、あの方の気まぐれで私の手に渡っています。……バルド様、この取引、乗っていただけますか?」
門番は狼狽し、即座にバルドの執務室へと案内されました。
バルドは豪華な椅子に座り、金貨を弄びながら、冷めた目であなたを見下ろしました。
「あの哀れな男の末路は聞いた。喉を焼かれ、足も動かせず、民衆に引き摺り回されたそうだな。……で、お前はその男から何を奪ってきた?」
あなたはエレーナの冷徹な演技を貫き、淡々と、しかし凄惨にアルベールの最期を語り始めました。
「あの男は、死ぬ間際まで『バルド様にだけは、私の積み上げた富の隠し場所を伝えてくれ』と懇願しておりました。……喉を焼かれ、血の海の中で、まるで縋るような目で。……あの地獄を、もう二度と見たくはありません。私はこの情報を売り、身の安全を買いたいのです」
【演技・交渉:成功判定(成功率85)】
(元アルベール配下という共通の利害と、嘘の情報を餌にする)
ダイスロール: (61)
判定: 成功
バルドの瞳に、強欲な光が宿ります。彼は立ち上がり、あなたへ近づきました。
「ほう……。面白い。お前のような『飼い犬』を失うのは惜しい。私のところで働け。アルベールの護衛だったのなら、腕も立つはずだ。……その情報が確かであれば、お前を私の腹心にしてやろう」
「……光栄です。バルド様」
あなたは深く頭を下げました。その顔は忠実な騎士のそれでしたが、心の中では、第三章の幕開けに狂喜していました。
腹心として屋敷内に入り込んだあなたは、聖女との接触します。
「……慈善家、ですか。その甘ったるい肩書きの裏に、どれほどの腐敗が塗り重ねられていることか。……バルド様、あなたの守り神である聖女様たちを、まずは拝見させていただくとしましょう」
あなたはバルドの腹心として、屋敷内の警備や事務に顔を出す許可を得ました。しかし、あなたの真の目的は、彼の背後にいる「聖なる守護者」――神殿の聖女たちの掌握です。
聖なる防御の観察
神殿から派遣された聖女たちは、バルドの屋敷で定期的な「祈祷の儀」を行っています。彼女たちは結界の維持だけでなく、バルドにかけられた「加護」を管理し、彼が常に清廉潔白であるかのように見せる幻惑術を施していました。
バルドが寛いでいる間、あなたはエレーナの鋭い観察眼とミアから受け継いだ解析眼を併用し、聖女たちの立ち回りを観察します。
【解析眼:聖なる防御の構造・聖女の資質判定(成功率85)】
ダイスロール: (12)
判定: クリティカル(成功)
あなたは驚くべきものを見抜きました。
結界を張っているのは、神殿の高位聖女ではなく、彼女たちに付き添う二人の見習い聖女です。彼女たちはバルドの金で神殿から送り込まれましたが、その本心はバルドの強欲さに辟易しており、神殿という組織そのものにも疑念を抱いていました。
特に、その中の一人――「セシリア」という少女は、異常なほど純粋な魔力資質を持っています。彼女はバルドの悪行を知りながらも、逃げ出す術を持たずに怯えている。
「……見つけました。あの子こそ、次の器としてこれ以上ないほど美しい……」
セシリアの清廉な肉体は、あなたのドロドロに汚れた魂を中和し、神聖な魔力という「隠れ蓑」を得るための完璧な器です。彼女の純粋さは、復讐という業を背負うための最高の聖域となるでしょう。
「純白の花は、濁った泥の中でこそ美しく映える。……セシリア、あなたのその怯えた瞳、私が少しだけ『書き換えて』差し上げましょう」
あなたはバルドの腹心としての地位を使い、屋敷内で暗躍を始めます。
攪乱と分断の工作
まず、あなたはもう一人の見習い聖女である「マリア」に目を付けました。彼女は少しばかり世俗的な欲があり、バルドからの甘い蜜を多少なりとも享受している人物です。
あなたはバルドの帳簿の「ほんの一部分」を、マリアが毎日祈りを捧げる祭壇の裏に隠しました。それはバルドが神殿の有力者に多額の賄賂を渡している記録です。次に、バルドの耳に「マリアが彼の不正を神殿の上層部に密告しようとしている」という偽情報を流しました。
「バルド様、最近マリア様が神殿の使者と頻繁に接触しておられるようです。……あの方は、我々の利益を独占したいのかもしれません」
バルドは激昂しました。彼は聖女たちを呼びつけ、マリアを糾弾します。マリアは身に覚えのない罪をなすりつけられ、怒りと絶望で反発し、屋敷内は一触即発の事態に。
セシリアへの接近
混乱の最中、あなたは人目につかない場所に隠れて震えるセシリアの隣に座りました。エレーナの鋭い鎧の音を消し、ミアの優しげな声色を借りて、彼女の細い肩に手を置きます。
「……怖いでしょう、セシリア様。あの強欲なバルドと、それに屈する神殿……。貴女のような清らかな方が、なぜあんな豚の番犬をしなければならないのですか?」
彼女の瞳が、驚きと微かな希望に揺れます。
「……でも、私には……どうすることも……」
「マリア様がバルド様に反旗を翻されました。……あの方は強硬手段に出るはず。貴女さえよろしければ、この争いの隙に神殿から逃がして差し上げます。……私と共に、この汚濁から離れましょう?」
あなたは彼女の心にある「バルドへの嫌悪」と「支配からの解放」への渇望を、媚薬のように甘い言葉で丁寧に引き出していきました。
屋敷内ではマリアを中心とした「聖女の反乱」が勃発。バルドの防御体制が完全に瓦解しています。




