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追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
宿場町の章

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第七十二話 教会のビジネス

「これが活版印刷か……読みやすいな」


「えぇ、もはやこれがイゼル帝国の最も偉大な発明と言っても良いでしょうな」


フーガが持ち込んだジュナイブの情報誌を読みながら、ヴィクトルは感嘆の声を上げていた。


癖がなく、統一化された美しい文字。揃った行間と文字数。それでいて従来の装飾を取り入れた洗練されたタイポグラフィー……それは正しくヴィクトルが望んでいた本の形だった。


「ジュナイブでも新しく活版印刷所を設けまして、今後は新約聖典と、この情報誌が売り出されます」


「新約の方なのか。ジュナイブは革新派だったのか?」


「えぇ。原典は既に活版印刷の開発者が印刷してますし、ジュナイブは革新派の司教がおりますからな」


そうだったのか。まぁ合理的なジュナイブらしいな。


「それで……なぜレイラが同席してるんだ?」


フーガの横でニコニコしながら鎮座するライラの妹に問いかける。


「はい、お兄さま。これはビジネスチャンスですわ!」


「ロマリア熱の時もそんなことを言ってたな……商魂逞しいのはいいが、また不謹慎なことを考えてるんじゃないだろうな?」


ギクリと視線を外すレイラとフーガ。


「えっとぉ……改革派(プロトテスト)では贖宥状を作ってないので、古式派(カトリスト)の贖宥状をジュナイブで印刷してうちで配るのはどうかなぁって、フーガさんが」


「いえ、レイラさんがメディスン家でも是非やるべきだとお話を持ち込んできましてな?」


「……どちらでもいいが、やるならオレではなくライラなりグノシス導師殿と相談すべきでは?」


「グノシス神父は司教ではないので贖宥状は出せないと……なのでロマリアの司教名義で印刷したものを取り寄せる必要がありまして」


「そこでメディスン家を通じて正統教会に交渉するために、姉さまを説得してもらえないかなぁって」


……要するに、ライラから拒否されてオレに話を持ちかけたわけか。


「ライラがダメならダメだ。それに贖宥状で金稼ぎなんて、それこそ古式派への非難の的だろう」


「ううん……いい考えだと思ったのに」


「活版印刷の開発者のところでも贖宥状は印刷してるらしいですからそんなに気にしなくても……」


「……いや、止めておいたほうがいい。オレの風読みでは宗教改革……古式派と改革派の争いの火種になると出た」


正確にはオレには風使いほどの風読みは無いが、こう言っておいた方が周囲の納得は得やすい。


「ふむ……閣下の風読みは信頼できますから、それなら致し方ありませんな」


「残念……」


「だが活版印刷は素晴らしい。これは確かにビジネスチャンスだろう。フーガ殿、ジュナイブは古式派が少ないんだったな?」


「えぇ。主流は改革派です」


「であれば古式派治癒師の名家、メディスン家の美人姉妹こそ、我らの売りではないかな?」


「えっ……!?」


「なるほど……つまりは、宣伝ですな?」


「うむ。古式派のポーションは輸送できない。ならばこそ現地でしか手に入らない強力なポーションを売りとすべきだ」


「しかし……ジュナイブにも古式派の治癒院はありますぞ?」


「そこだな……もう一捻り魅力が欲しい……レイラ、なにかないか?」


「うーん……そうは言っても、私たちには昔ながらの治癒の水(ポーション)活性の水(スタミナ・ポーション)しか……」


「治癒は用途が限定的すぎる。個人的には活性の水こそ売りにしたい所だ」


何と言うか、あれを飲むと翼でも生えたかのように活力が漲ってくる。


「ご存じでしょうけど、活性の水は結構反動ありますよ?」


「……もう少し薄めて、薬ではなく飲み物として売ってはどうだ?」


治癒院は普段、健康な人にポーションは与えない。だが活性の水はきつい仕事に赴く時にこそ役立つものだ。


「朝の教導と昼の祈りのあと、勤労に励む人向けに活性の水を配る。それぐらいならライラも協力してくれるだろう」


「ふむ……良さそうですが、私の出番はあまりなさそうですな」


「いや……商売にするには水では足りん。適正な対価を得られ、少しでも効果を維持する瓶詰めの飲み物……果実酒(シードル)が良いな」


「果実酒ですか?」


「活性の水にも酒のように中毒性がある……薄めたシードルでも一度飲めば力が漲り、その反動で疲れた体が再び活力を求めるだろう……」


クックッと笑い声を押し殺すヴィクトル。


「お兄さまの考えの方がよっぽど不謹慎だと思いますけど……」


「なら止めておくか?」


「いえっ! 素晴らしいアイディアですわ!」


「では瓶も回収して洗浄し、繰り返し使えるように致しましょう」


こうしてアルゴス・シュタットでは、活力の果実酒(エナジー・シードル)が教会を通じて販売されるようになった。


エナジー・シードルはすぐに評判となり、日夜労働に勤しむ男達がそれを求め、足繁く教会へと通いつめた。


「くぅ〜効くぅ!」


「へへ……やっぱりこれがねぇと1日が始まった気がしねぇな」


「ホントだよ、もう飲まないと逆に力がでねぇや」


「なんだか……神の奇跡を良くない使い方されてる気がします……」


中毒のようにエナジー・シードルを求める男達を見て、ライラは小さくため息をついた。


――


特産品:エナジー・シードルを開発

街のガラス需要、果実需要上昇。

売上は教会税に貢献。20%→15%へ。


――ライラの帳簿(現金) 三の月(四年目)


【現金収入】

乗合馬車(25往復×12席)

カルデロ便 乗車率5割 =600ソル

ジュナイブ便 乗車率3割 =360ソル

ホッホラント便 乗車率3割 =360ソル

◆小計 1320ソル


宿 約300人 =300ソル

入湯料 約200人 =200ソル

人頭税 280人 =280ソル


◆計 2100ソル ≒210ダリヴル


【現金出費】

ゴブリン小遣い(210匹)

 263ソル≒26ダリヴル

教会税(15%)≒32ダリヴル


◆計 58ダリヴル


◆収支 210-58 =152ダリヴル黒字

◆累積現金残高 334+152 =486ダリヴル


――フーガの帳簿(預金) 三の月(四年目)


【収入】

ジュナイブ商隊

往復通行料(4隊×4輌) 320ソル

傭兵料(1ダラス18銀×8日) 144ソル

◆小計 464ソル


フーガ商隊

往復通行料(2隊×4輌) 160ソル

傭兵料(半ダラス12銀×4日) 48ソル

◆小計 208ソル


家賃

複合住宅 55戸 =550ソル

職人街   6戸 =180ソル

冒険者ギルド  =100ソル

◆小計 830ソル


◆合計 1502ソル ≒150ダリヴル


【出費】

食費(ゴブリン410、難民50)

 ※備蓄より充当 0ソル

 ※備蓄60日→30日分に減少


人件費

アクアライナ 90ソル

ヴォルフ   60ソル

フェルディナ 60ソル

ゴッズ    30ソル

ブランドル  60ソル

鍛冶師ギルド 100ソル

警ら隊    60ソル

◆人件費合計 460ソル


建築費

複合住宅 石材加工費 240ソル

     建築費 360ソル

◆建築費 600ソル


教会税(収入の15%) ≒225ソル


◆合計 1285ソル ≒129ダリヴル


◆収支 150-129 =21ダリヴル黒字

◆預金残高 115+21 =136ダリヴル


トータル収支

152+21=+173ダリヴル黒字


残高

現金486ダリヴル

預金136ダリヴル

合計残高622ダリヴル


★備蓄(60日→30日)

★教会税15%に変更

★複合住宅Ⅱ 3/3完成!来月入居予定


春になって収支が一気に改善!

教会税も下がって黒字倍増だよ!

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