第七十話 中央ストリートの完成
「おお……とうとう城門から商館まで、ストリートが完成したか」
中央の商館から南門までズラッと並ぶ石造り三階建て複合住宅。その壮観な光景にヴィクトルは感嘆の声をあげた。
「ええ、職人街に合わせた壺屋、寝具家具……そして門前には旅のお供と言える乾物屋、特産とも言える柘榴石の宝飾屋……これで街に必要な商店は全て揃ったと言えるでしょう」
「この後は、建築から手を引くと言うことだったな?」
「はい。以後は裏通りの小さな店や飲食店がメインとなります。表に面しない店は商人ギルドに任せ、一階は店舗兼大家を住人とするのがよろしいでしょう」
「ここからは家賃も増えるが建築費もかかるというわけか……まぁここまでよく投資してくれた。おかげで収益も安定している」
「あとは春に石橋が完成すれば、交易路も完成しましょう。それと、採掘権のことですが……」
「うむ」
「ロープウェイの利用権、夏と冬で折半と言うのは如何ですか?」
「250金貨の負担ということか。柘榴石はそれでもいいが、水晶はなんとする?」
「それは物が確認できてからということで……」
「まぁそれもそうか。抜け目ないことだな。イゼル公国の返答は?」
「フーガ家への庇護の条件として、その年、最も大きな柘榴石と水晶を献上することを条件にせよと」
「ふむ……大物にしか興味はないと。では小物は我々で分け合うとしよう」
「それでは利権の分配は……6対4で如何でしょうか?」
フーガの目端がキラリと光る。
「……物を分けても商売敵となるだけだ。採掘物は採掘ギルドからフーガ家が適正に買取り、アルゴス・シュタットで加工し、外に流すが良い。採掘は3割、加工と交易は従来通りに1割、計5割の税を収益とする」
「は……え? アムズフェルト家が採掘物を得なくてよろしいので?」
採掘権を6対4から始め、7対3を落としどころとして考えていたフーガは混乱した。主導権を持つ相手から逆に、その半分とも言える条件を提示されたのだ。
「ゴブリンが宝石など得ても仕方あるまい? オレは商売人ではないし宝石の良し悪しも分からん。貴殿らが安全に商売を続け、それで街が潤えばそれで良い」
「は……はぁ……ですが、採掘ギルドにまで成果報酬を与えると言うのは……?」
「関わる者全員が努力の成果を真っ当に得る。そうでなければ内部に敵を作ることになる。外圧に耐えるには、我々は結束せねばならん。もっと強く、もっと堅くだ」
この若者が見ているものは、宝石でも水晶でもない。カルデロも含めたこの地に住む人なのだと、ジェイコプ・フーガは初めてその視線の先にあるものを理解した。
「……閣下のご意向、真に理解いたしました。石橋完成の暁には、貧民の為の住居を寄贈させていただきます」
「む? 一応クルはあるが……」
「ハルプや難民が長年暮らすには、定住の住まいも必要でしょう。区画をご用意いただければ、全てフーガ家が担いましょう」
「……ふ、ならば未整備の北城壁の辺りにするか……頑丈な石造りとすれば城壁代わりにもなろう」
「貧民に暖かい家を与えつつ盾とするとは……閣下も悪ですな……」
「クックック……」
「ホッホッホ……」
「ファーハッハッハ!!」
「……あの二人、なんで慈善事業の計画しながら悪い笑い方してるのかしら?」
「さぁ……?」
二人を眺めるイセリアとライラは、自分の夫が善人なのか悪人なのか……少し判断に迷ったと言う。
――
「来年度の資金繰りだが……春にロープウェイで250金必要になった。それと街の建設費が毎月継続で30金追加。あと武器開発がそろそろ終わるから開発費に100金貨を……」
「そんなお金ありませんよう!」
「一旦冬の食料を備蓄からきり崩せばどうだ? 今季は周囲に動きもないし、一月分あれば十分だろう」
「預金はなんとかなりますけど……現金がギリギリですよ……?」
「春になれば1年かけた石橋も完成して新たな交易も走る。赤字事業もないしギリギリでも大丈夫だ。多分」
「うう……ブランドルさん助けて……」
「さぁ、忙しい1年になるぞ! しっかり稼ぐとしよう」
「「ギィー!」」
ゴブリン傭兵団を率いて、今日もヴィクトルがアルゴス山脈を行く。
その遠く向こう……イゼル帝国では緩やかにその権威が崩壊し始め、フランツでは飢饉が起き、ロマリアでは古式派と革新派の対立が深まっていた。
時代の変遷……近代化の波は少しずつ大きなうねりを作り始めていた。
――ライラの帳簿(現金) 一の月(三年目)
【現金収入】
乗合馬車(25往復×12席)
カルデロ便 乗車率5割 =600ソル
ジュナイブ便 乗車率3割 =360ソル
ホッホラント便 乗車率3割 =360ソル
◆小計 1320ソル
宿 約300人 =300ソル
入湯料 約200人 =200ソル
人頭税 280人 =280ソル
◆計 2100ソル ≒210ダリヴル
【現金出費】
ゴブリン小遣い(200匹)
250ソル≒25ダリヴル
教会税(二割)≒42ダリヴル
臨時出費
武器開発費 100金=120ダリヴル
◆計 187ダリヴル
◆収支 210-187 =23ダリヴル黒字
◆累積現金残高 169+23 =192ダリヴル
――フーガの帳簿(預金) 一の月(三年目)
【収入】
ジュナイブ商隊
往復通行料(4隊×4輌) 320ソル
傭兵料(1ダラス18銀×8日) 144ソル
◆小計 464ソル
フーガ商隊
往復通行料(2隊×4輌) 160ソル
傭兵料(半ダラス12銀×4日) 48ソル
◆小計 208ソル
家賃
複合住宅 55戸 =550ソル
職人街 6戸 =180ソル
冒険者ギルド =100ソル
◆小計 830ソル
◆合計 1502ソル ≒150ダリヴル
【出費】
食費(ゴブリン400、難民50)
※備蓄より充当 0ソル
※備蓄120日→90日分に減少
人件費
アクアライナ 90ソル
ヴォルフ 60ソル
フェルディナ 60ソル
ゴッズ 30ソル
ブランドル 60ソル
鍛冶師ギルド 100ソル
◆人件費合計 400ソル
建築費
複合住宅 石材加工費 240ソル
建築費 360ソル
◆建築費 600ソル
教会税(収入の二割) ≒300ソル
◆合計 1300ソル ≒130ダリヴル
◆収支 150-130 =20ダリヴル黒字
◆預金残高 81+20 =101ダリヴル
トータル収支
23+20=+43ダリヴル黒字
残高
現金192ダリヴル
預金101ダリヴル
合計残高293ダリヴル
★備蓄(120日→90日)
★ホッホラント便開始!
★ロマリア熱が終息し、ジュナイブ便復活
★建築費に30金追加
★複合住宅Ⅱ 1/3
★住民増加30人




