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追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
宿場町の章

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第六十六話 新設火魔導部隊

「こんな辺境までよく来てくれた。汝らを歓迎しよう」


ブランドルの招集した火使いの魔導師。ファルス・ルキウス・レイモンド・ガディの4名がヴィクトルの前に並ぶ。


「ありがとうございます。我々も、魔導師として招集されることに喜びを感じております」


今やどこに行っても灼熱のボイラー室に送り込まれる火の魔導師。彼らもまた、魔導師の矜持を持ってヴィクトルのもとに参じた。


「汝らの師、ブランド・ファイエルは現在病床に付している……師に代わり、その力をアムズフェルト家の為に尽くして欲しい」


「はいッ!」


「主な仕事は御者とゴブリンの指揮、あと火の薬の製造だ」


「ゴ、ゴブリンですか?」


「私……外仕事はちょっと……」


「まぁ交代制で働け。契約金は日当2銀の3食住まい付き、週一休暇で年俸50金。労いは好きに受け取れ。但し賄賂と軍事機密の漏洩を禁ずる」


若い魔導師達の目の前に、じゃらりと広げられる金貨の山。


「……不服か?」


片眉をつり上げたヴィクトルを前に、火魔導師部隊は勢いよく返事を重ねた。


「「御身に忠誠を誓います!」」


「それでは今より汝らを火魔導部隊(ファイエルン)と命名する。表向きは乗合馬車の御者とは言え、実質は傭兵団だ。気を抜かず取り組むように」


「承知致しました」


その後、ヴィクトルは家臣らにファイエルンを紹介し、二人一組の部屋を割り当てた。


彼らはドル爺の弟子とは言え、アムズフェルト家の忠臣ではない。今後も契約金で縛り続ける必要があるだろう。


まとまった金があれば、新しい土地での暮らしも豊かになる。今は家臣と言うよりも傭兵団と傭兵の関係として接するとしよう。


――


「ヴォルフ、アイナ。新入りが入ったから配置換えだ」


「はっ!」


「はーい」


「ヴォルフは引き継ぎが終わり次第、乗合馬車から練兵へ。最近ゴブリンが緩んでるからしっかり引き締めてくれ」


「承知致しました」


「アイナも引き継ぎが終わったら、治癒院と果樹園メインだ」


「ふぁい」


気の抜けたような返事をするアイナ。


「不満そうだな……」


「だって〜先輩なのに後輩と同じ額ですし〜」


「あからさまに値上げを要求しおって……わかったわかった。冬の労働を見越して日当3銀にしてやる。アイナほどの水の使い手がいなければ、スキー場など成り立たんからな」


「そうですか? そうですよねー! いやーそれなら頑張っちゃおうかなー!」


本当は人数がいればアイナでなくてもいいんだが、こいつの性格的に多少持ち上げてやらねばならん。


「時に閣下、フランツとの国境を定めるとのことですが」


「うむ。国境とは言っても、我々は国ではない。管理区域の明確化を行わねばならん」


「……つまり、軍の配備ですね」


「そうだ。今後ヴォルフには石橋の警備を頼むことになるだろう」


「しかし、私は帝国籍でもあります。問題が生じるのでは?」


「なに、ちょうど良い高所にイセリア様の別荘を用意する。そこを拠点とするがいい」


「……イセリア・アンティローネ様を折衝役に据えると?」


ヴォルフの目が狼のように引き締まる。


「安心しろ、イセリア様のバカンスは冬限定。冬にモンフェランを進軍する阿呆もおるまい」


「……なるほど」


「元大公女殿下の別荘に危険が迫れば、帝国騎士たるお前はなんとする?」


「もちろん、迅速に帝国への報告を行い、死力を尽くしてその地を守ります」


当然のように答える帝国騎士ヴォルフ。


「おい、お前が正面突破するのは勝手だが、オレの兵まで巻き込むなよ?」


「承知致しました」


「なんか、そこの関係ややこしいですね……」


「まぁアイナにはあまり関係ない。気にするな」


「ふぁーい」


「全く、ドル爺がいないと気を抜くのはアイナも一緒だな……」


「……私が引き締めましょうか?」


ギラリとヴォルフの目が光る。


「ひぇ!?」


「やめてやれ……アイナもちょっとは真面目になれ。ドル爺が引退したら、お前が当家の重鎮なんだからな」


「重鎮!?」


その言葉に気を良くしたアイナはルンルンしながら部屋を出て、後輩相手にやたらと尊大に振る舞うようになった。


……めんどくさい奴。


――


ホッホラントの開拓は順調に進み、第一ゲレンデの小山はだいぶ形になって来た。


「ギュルルルル!」


「ギーハー!」


野生児のギュスタと山ゴブリンが小山を滑ったり転がったりして遊んでいる。わりとこのままでも楽しそうだ。


「冬は道に雪が積もるのが問題だよな。ホッホラントまで来るのが一苦労だ」


「そうですねぇ……乗合馬車も中々ここまでは……」


道は広げられても、坂路はどうしょうもない。とは言え徒歩でここまで来るのも大変だ。


「雪を溶かす手段か……そもそもここにロープウェイを渡すべきか」


「そんなのいくらかかるんですか……」


「まぁ今は無理だな。雪はゴブリンに除雪させて、乗合馬車は二頭立てとしよう。滑り止めの工夫もいるな」


「蒸気機関車ならガンガン進めるんでしょうね」


「あぁ……なるほど。そう言う手もあるか」


魔導蒸気機関とは一線を画す、炭を使った蒸気機関。燃料が必要な分、パワーは魔導蒸気機関とは比べ物にならない。


「ただまぁ、余計に金がかかるな。レールも車体も鉄の塊だし」


「ですねぇ……」


「……魔導馬車とか作れないかな?」


「馬車ですか?」


「うむ。カルデロに行くときも坂路が苦でな。補助的な動力があればずっと楽になる。鉄の猪が動くなら馬車ぐらい軽いもんだろ」


「じゃあランディさんの所に相談しに行きましょうか!」


「うむ。久しぶりに天才鍛冶師の腕を借りるとしよう」


――


その後、ランディルと相談した結果、馬車の後輪に小さな魔導蒸気機関を接続する案が提供された。


必要に応じて後輪を駆動させ、坂路や悪路を登る。速くしすぎると馬がケガをする恐れがあるので、馬力は強いが非常にゆっくりな回転を加えるものとした。


実際の開発と製造は鍛冶師ギルドが担い、カルデロ便の馬車二台の増設が始まった。


その結果――


火魔導師年間契約金200金。

魔導馬車(馬付き)50金✕2。

孤児院建設20金。

計320金が消えた。


「若! この出費は!? 貯金のお約束は!?」


「なんか……無くなった」


「なんで、すぐ、使うんじゃい!」


――バシャン


ヴィクトルは久々に老執事からの水を頭から被り、快活な笑い声を上げた。


旧乗合馬車二台→ジュナイブ専属便へ

新魔導馬車二台→カルデロ専属便へ

孤児院担当のフェブリン→マザーと命名


――ライラの帳簿(現金) 十の月


【現金収入】


乗合馬車(25往復×12席)

カルデロ便 乗車率5割 =600ソル

ジュナイブ便 乗車率3割 =360ソル


◆小計 960ソル


宿 約400人 =400ソル

入湯料 約300人 =300ソル

人頭税 250人 =250ソル

柘榴石 20個×5銀貨 =100ソル


◆小計 1050ソル


◆計 2010ソル ≒201ダリヴル


【現金出費】


ゴブリン小遣い(200匹)

 250ソル≒25ダリヴル


教会税(二割)≒40ダリヴル


臨時出費320金 ≒384ダリヴル


◆計 449ダリヴル


◆収支 201-449 =▲248ダリヴル


◆累積現金残高 339-248 =91ダリヴル


――フーガの帳簿(預金) 十の月


【収入】


ジュナイブ商隊


往復通行料(4隊×4輌) 320ソル

傭兵料(1ダラス×8日)  144ソル


◆小計 464ソル


フーガ商隊


往復通行料(2隊×4輌) 160ソル

傭兵料(半ダラス×4日)  48ソル


◆小計 208ソル


家賃


集合住宅 45戸 =450ソル

職人街   6戸 =180ソル

冒険者ギルド  =100ソル


◆小計 730ソル


◆合計 1402ソル ≒140ダリヴル


【出費】


食費

※卸値六割

日常食費(430人×0.75ソル) 323ソル

備蓄積み立て(15日分)   161ソル


◆食費合計 484ソル


人件費


アクアライナ 90ソル

ヴォルフ   60ソル

フェルディナ 60ソル

ゴッズ    30ソル

ブランドル  60ソル

鍛冶師ギルド 100ソル


◆人件費合計 400ソル


建築費


集合住宅 石材加工費 240ソル

     建築費 フーガ負担


◆建築費合計 240ソル


教会税(収入の二割) ≒280ソル


◆合計 1404ソル ≒140ダリヴル


◆収支 140-140=0ダリヴル


◆預金残高 87+0 =87ダリヴル


トータル収支

現金収支▲248

預金収支+0

合計収支▲248


残高

現金91ダリヴル

預金87ダリヴル

合計残高178ダリヴル


★集合住宅二軒 (3/3)完成!

★食料備蓄(105日)


すっごい! お金! 無くなった!

でも収入もすごく増えたよ!

フーガさんの預金もとうとう黒字化かも……!

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