表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
宿場町の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/60

第五十五話 この橋、架けるべからず

「完成した吊り橋が、壊されただと?」


春になり、石橋建設に先駆けて建設業者が吊り橋を渡した。その吊り橋が完成した翌日、何者かによって破壊されたと言う報告がヴォルフから上がった。


「現地には、このようなメッセージが残されていました」


『この橋、架けるべからず』


アルゴス・シュタット側に残された木片に刻まれたフランツ王国語の文字。


「……縄はフランツ側から切られておりました。犯人はグランベリーかクレール・モンフェランの住人かと思われます」


「グランベリーは違う。この事業はそもそも正統教会からの依頼だ。このような工作をするなら、最初から断るはずだ」


「では、クレール・モンフェランしか考えられませんな」


「組織的な行いとは考えにくい。一部の人間の犯行だろう」


「如何されますか?」


「……対処が難しい、ライラとブランドルを交えて協議しよう」


――


「まず、犯人をクレール・モンフェランだとして、何故橋を壊すと思う?」


「……巡礼者に来てほしくないのでしょうか?」


首を傾げるライラ。


「以前訪れた時は歓迎されていた。巡礼者に忌避感があるわけではないだろう」


「帝国とアムズフェルト家に対する警戒かと」


少し離れところで立つヴォルフ。


「それは十分考えられる。だが吊り橋など軍が通るには弱すぎるし、吊り橋が無くとも別ルートがある。犯人がそこまで考えてるかは知らんがな」


「……ゴブリンでしょうな」


静かに呟く老魔導師ブランドル。


「……一応、グランベリーにはゴブリンを渡らせないとは伝えたよな?」


「はい、教会を通じてやりとりしてますので、すべて正式な約束事として記録されてます」


「若、ゴブリンとはなにも此処にしかいないわけではありませんぞ」


「……そうか、モンフェランにもゴブリンはいるだろうな」


「元々ゴブリンと言う名はフランツ語由来で小さき鬼の意。昔から国内に多く、心底嫌っておるのでしょう」


地下の小人(コボルト)醜い鬼(オルク)、緑小人……ゴブリンを表す表現は各地にあるが、本拠地はあっちだったのか。


「まぁ……別に好きになれとは言わんが、だとしたら難しい問題だな。吊り橋が無いと石橋など架けられんし、断行すれば建設業者が襲われる可能性もある」


「ランディルに見張りをさせては?」


「あんな奴に見張らせたらゴブリンバーサーカーとか呼ばれて、もっと酷いことになるぞ」


「まぁ……ありえますな」


「酷い……」


「かと言って他に人員もいないし、ゴブリンは論外……冒険者ギルドも作っとくんだったな」


「ジュナイブで依頼を出しますか?」


「いや、この問題はそもそもクレール・モンフェラン――フランツ側で解決しないと意味はないだろう。こちらからは手が出せん」


「時間はかかっても、グランベリーに任せるのが賢明でしょうな」


「じゃあライラ、教会を通じて――」


「クレール・モンフェランの人達は……巡礼者が来るのはいいけど、ゴブリンはダメってことですよね?」


「うん? まぁそうだろうな」


「じゃあ、ゴブリンに巡礼させて、害が無いと分かってもらいましょう!」


「……マジ?」


ふんすとやる気を見せるライラに、三者揃って異論を挟めなかった。


――


「聖グランベリー修道院からお返事が来ました。メスゴブリンだけなら、巡礼を受け入れるそうです」


「うそ……意外だな」


「グランベリーは革新派の治癒院もありますが、修道院自体は古式派ですから。ちゃんと原典の記述に則って伝えれば分かってくれましたよ」


えっへんと大きな胸を張るライラ。


「そうか……すごいな。じゃあ本当に行くんだな?」


「はい。メスゴブリンは皆やる気満々です!」


「わかった、どうなるかは分からんが……行ってみよう」


早速メンバーを策定する。前回も行ったオレとライラ、水筒のアイナ、メイド、トモエ、オカミ、巴組から教会にもよく通うメスゴブリン十名。


建設業者には到着時にもう一度吊り橋を架けてもらい、戻るまでは石の見張り小屋と羊小屋を作ってもらう事にした。


――


「……汝らに巡礼の導きを与えます。モンフェランを越え、聖グランベリー修道院に赴き、洗礼を受けなさい。さすれば……」


教会で巡礼の導きを受ける時、グノシス神父が口をつぐんだ。


「……さすれば、汝らに新たな道が開けるでしょう。道中、多くの試練が待ち受けるやも知れません。どんなに辛くとも強く耐えるのですよ」


巡礼服を着たメスゴブリン達が祈りの手を組み、一人一人巡礼札と干し果実を受け取っていく。


アロに跨り、赤鷲の旗を掲げ先導する。


他の巡礼者も幾人かが随行し、アルゴス・シュタットから巡礼者団が出立した。


――


モンフェラン高原から建設業者が吊り橋を架ける。以前はクレール・モンフェランの協力者が向かいから渡したが、今回はいない。


建設を終え、橋を越えたところで野営する。夜半何者かの気配を感じたが、姿は見えなかった。


翌朝、建設業者と別れてモンフェランを下る。道は以前より均されていたが、妙に穴が多かった。


やがて太陽の光を浴びて輝く、レマナ湖の湖畔が見えた。


輝く山麓の宿場町(クレールモンフェラン)


アルゴス・シュタットからやってきた巡礼団を出迎えたのは、窓から振り注ぐ大量の石と罵りの声だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ