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追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
宿場町の章

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第五十二話 壁内の賑わい、壁外の難民

「アルゴ砦が、こんなに賑わうようになるとはな」


アルゴス・シュタットにはカルデロから職人が移住しはじめ、石工ギルドもいつのまにか石材所の近くに自前で拠点を構えていた。


乗合馬車は日夜人が増え、仕事を求めてきた人や巡礼者、観光や旅人が雑多に行き交っている。


「最初に商隊と乗合馬車があったのが良かったのでしょうね。人と物、金と仕事が集まり、安全も証明された」


ヴォルフが冷静に発展の理由を分析している。


「発展の条件が一気に整った結果、バブルが起きてるわけか」


「泡……?」


「膨らむのは早いが、やがて一瞬で消えるってことだ。それより、何の用件だ?」


ヴォルフと言う男が、わざわざ雑談するためにオレの所に来るわけが無い。


「ハッ、通行料を払えず壁外に留まる難民が増えております」


「……難民か、カルデロ側は勝手に入ってくるが、南に集まるということは」


「多くは略奪被害にあった、農村民かと」


周囲の農村は旧アムズフェルト領。できる限り、保護してやりたい。だが――


「彼らは、帝国領の農奴だろう? 帝国での扱いはどうなってる?」


「逃げた農奴が他領で発見されれば、通常送り返されます」


「……だろうな。アムズフェルト領では開拓民だったろうに、不憫なことだ」


辺境伯だった頃のアムズフェルト家は開拓民を優遇し、開拓した土地の権利を与えた。それだけ辛く、危険だったからだ。


だが、せっかく開拓した土地は帝国に吸収され、農民は農奴となった。暮らしは変わらなくても、彼らはそこに縛られた。


「……難民の保護自体は問題ないな?」


「返還要求が出るまでは。ヴィクトル・アムズフェルト閣下には報告義務もありません」


あえてオレの名を強調する帝国騎士ヴォルフ。


「……農奴の開放条件は?」


「一年見つからねば、戻らないものとして処理されるのが普通かと」


「わかった。農村からの難民は全て通せ」


「……名前と、身元の確認は?」


「フェルディナがしっかりやるだろう。オレは守衛を信用しているし、難民の顔や名前など覚える気もない」


ヴィクトルは南の窓を見ながら続ける。


「……記帳などハンスやハンナで十分だ。ジュナイブ側から来た難民が、カルデロに行こうが、モンフェランを越えようが……ゴブリンに混じって芋を掘ろうが、オレの知ったことではない」


「……畏まりました」


「ヴォルフ、お前も難民になど関わるな。数少ない騎士が、病でも移されたら困るからな」


「ハッ、では閣下のご命令を一言一句違えず、フェルディナに伝えて参ります」


黒鉄の騎士ヴォルフは踵を返し、いつも通り真っ直ぐに歩いていった。


「春も近くなり巡礼者が増えた……安宿代わりのクルを、もう少し増設しないとな」


ヴィクトルは風車が回る北の草原に出向き、ヤクール族へのクルの依頼と、草原の開墾地を定める交渉を行った。


――


「帝国領の代官より、逃げた農奴の捜索に参った。開門されよ」


ある日、イゼル帝国の旗を携えた数名の帝国兵がアルゴ砦へとやって来た。


「は〜い、どうぞお通りくださ〜い」


守衛のフェルディナは旗を確認し、眠そうな声で招き入れた。


「この台帳に記載された名前に見覚えは?」


「いえ〜、ほとんど見覚えないですね~。ハンスとかハンナなら何人も通りますけどぉ」


「……何人も?」


「はい〜、この辺りではよくある名前ですので〜」


「この一ヶ月の台帳を確認させよ」


「えぇ、どうぞ〜」


フェルディナがスッと三の月の台帳を差し出す。


「なんだ……ハンスとハンナが……五十は並んでいる」


「そうなんですよ〜。困ったものですね〜」


「名前だけか? 身元は?」


「皆ジュナイブの方からやって来てます」


「なぜ、出身を記録していない……」


「巡礼者の方が多くてぇ……一人でそこまで手がまわらないんですよぉ」


「チッ……これだから辺境は。もういい、中を捜索させてもらうぞ」


「はい、どうぞ〜。あ、武器は置いてってくださいね〜」


帝国兵が宿に向かい台帳を改めるも、巡礼者とハンスだらけ。屋台通りはゴブリンと巡礼服、そして雑多な日雇い労働者が行き交っている。


「おい、貴様ら顔を見せろ」


巡礼服を剥ぎ取り顔を確認していると、信心深い石工ギルドの連中から『不信心者め』と石を投げられた。


やっと見つけたと思った人相書きの男も、身元を改めるとカルデロのギルドに登録された別人だった。


帝国兵らは日が暮れるまで農奴を探し続けたが、当てにならない人相書きだけでは、逃げた農奴は一人も見つからなかった。


一方、北の草原では、巡礼服のようなぼろ切れを纏った農民達が、汗を流して畑を耕していた。日暮れになるとメスゴブリンらが労いの食料や日用品を運ぶ。


彼らはそれを受け取ると、主砦にはためく赤鷲の旗にそっと頭を下げ、小さなクルへと帰って行った。


――ライラの帳簿(現金)


【現金収入】

乗合馬車(7往復×24席)

カルデロ便 乗車率7割 =236ソル

ジュナイブ便 乗車率6割 =202ソル

◆小計 438ソル


宿 約250人 =250ソル

入湯料 約200人 =200ソル


◆計 888ソル ≒89ダリヴル


【現金出費】

お小遣い 10ダリヴル

雑費    9ダリヴル

クル10件 50ダリヴル

◆計 69ダリヴル


◆収支 89-69 =20ダリヴル黒字


◆累積現金残高 137+20 =157ダリヴル


――フーガの帳簿(預金)


【収入】

ジュナイブ商隊

通行料(4隊×4輌×2往復) 320ソル

傭兵料(1ダラス×8日)   144ソル

◆小計 464ソル


フーガ商隊

通行料(2隊×4輌×2往復) 160ソル

傭兵料(半ダラス×4日)   48ソル

◆小計 208ソル


家賃 20戸 =200ソル


◆合計 872ソル ≒87ダリヴル


【出費】

【食費】

※農村買い付け不可・卸値六割

一人一月あたり

 1ゼニ×30日=15ドニ=1.25ソル

 卸値六割=0.75ソル


日常食費(ゴブリン380人、難民50人)

 430人×0.75ソル

 =322.5ソル≒323ソル


備蓄積み立て(15日分・保存食)

 ≒162ソル


◆食費合計 485ソル


人件費(3ソル×30日) 90ソル

弾薬費(3ソル×12日) 36ソル

◆小計 126ソル


建築費

集合住宅 石材加工費 240ソル

     建築費 フーガ負担

職人街  建材費   240ソル

     建築費   120ソル

◆小計 600ソル


◆合計 1211ソル ≒121ダリヴル

◆収支 87-121 =▲34ダリヴル

◆預金残高 203-34 =169ダリヴル


トータル収支

20-34=▲14ダリヴル


お金は減ってるけど、元農民が50人ぐらい増えた! 畑や牧畜もできるようになるかなぁ。

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