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追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
宿場町の章

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第四十六話 モンフェラン高原

山ゴブリンと若手ヤクール族の滞在するモンフェラン高原へと向かうヴィクトルと愛馬のアロ。


繁茂していた草は短くなり、道中はよく均されていた。


「意外ときちんと道になってるな。ゴブリンが根切りした土をヤクーが踏み固めたか」


機嫌よく闊歩するアロの後ろではスカウトが赤鷲の旗を掲げ、一番隊が二列縦隊で並んでいた。


高原にはヤクール族のテント式住居のクルがポツポツと並び、ヤクーが草を喰んでいた。そのうち一頭が、ユールと共にやって来る。


「こんにちは、赤鷲の主」


「久しいなユール。狼の討伐の調子はどうだ?」


「たくさん狩りました。でも、ヤクーも二頭やられました」


「そうか……ヤクー二頭の労いはこちらでまかなおう」


「肉も毛皮も取れていますから大丈夫。自然の理です」


「そう遠慮するな。山ゴブリンはどうだ?」


「もう川まで向かってます。彼ら、狼の肉とミルク欲しがりますので、赤い石と交換しています」


「赤い石?」


ユールが懐から柘榴石(ガーネット)を取り出した。


「これは、宝石の原石か」


「はい、アルゴスで売れますか?」


「オレも詳しくはないが、フーガの両替所なら買い取ってくれるだろう」


「はい、良かったです」


山ゴブリンはヤクール族と暮らすうちに物々交換を覚えたか。良い兆候だ。宝石は貢がせるより、今後も彼らの財産としよう。


「狼、最近やって来ません。どうしますか?」


「冬が本番だからな。まだ安心はできん。いつまで滞在できそうだ?」


「雪が積もるまで」


「わかった、それまでに小屋を用意しておこう。バロンの様子を見てくる」


ユールは小さく頷き、両腕を上げるヤクール族の礼で見送った。


――


谷が見える頃、川に向かう斜面に山ゴブリンが群がり、土を掘っては石を投げていた。


「バロン、労いの食料を持ってきたぞ」


「グァ!」


狼の毛皮を両肩に乗せた大きな山ゴブリンが旗を掲げ挨拶した。


ゴブリン兵らが背負った荷を降ろす。中には雑穀や根菜、小さな豚も二頭いた。


「お前たちのおかげで良い道になった。豚は番だ。生かして育ててみろ。まぁ……ダメだったら食え」


「グァグァー!」


動物を扱うのは上手いゴブリンだ。飢えてさえなければ育てられるだろうが……ヨダレ垂らしてるし、食うだろうな。


「それじゃ、丸太橋を渡すから手伝ってくれ」


「グ」


ガードやバロンに斧を貸し、5本ばかり木を切る。綱で固く結び、飛び石に引っ掛けるように丸太を渡す。


増水すればあっという間に流されるだろうが、今はこれでいい。最低限の巡礼路は完成だ。


「そういえば、赤い石はこの川で拾ったのか?」


「グ」


「あの石は価値がある。今後も見かけたら集めておくといい。色鮮やかなものを探せ」


「グァグァ!」


帰りに鹿を見かけ、スナイプがそれを仕留めた。ヤクール族が捌き、大きな鍋を皆で囲んで共に食した。


――


「ゴブリンにも、買い物をさせてみようと思う」


帰宅後、ライラと温泉に入りながらヴィクトルが提案した。


「算術ができないのに、お買い物できますか?」


「宝物庫に使い切れない銅貨が溜まっていたろ? 銅貨一枚ずつ使うならできそうだ。ただ――」


上を見上げ、思案する。


「どうしたってゴブリンは女に向かう本能がある。そこが問題だな」


「……ちっちゃい子は特に、飛びついてきますからね」


ライラもよく子どもや小さなゴブリンに引っ付かれる。もう慣れたものだが、普通の人は反射的に手が出るだろう。


「それは仕方ない。二年で巣立ちのサイクルとは言え、未熟期のゴブリンは人間で言えばせいぜい5歳から10歳だ。母が恋しいんだよ」


野生ゴブリンで一番多いのが二年〜五年の未熟期。弱く、農家の女性にすら追い払われる。


「5、6歳頃から繁殖のため女を所有したがり、ボスと戦うか巣の外で女を探し始める。ここが普通、討伐対象となるゴブリンだ」


「ちょうどスカウト君がそのぐらいですね。最近エッチで困ります」


「なに!?」


慌ててライラに向かうヴィクトル。


「前まで胸が好きだったんですけど……最近はスカートに入り込んできたりするんです」


そっと大きな胸を押さえながらライラが湯船に身を沈める。


「すまん、ちょっと厳しく躾けておく……」


「私はイタズラとわかってますから良いですけど……」


「一般人はそうはいかんな。市場を歩かせるのは女ゴブリンだけにしよう」


――


メイド、オカミ、トモエが小袋を持って市場を歩く。後ろにぞろぞろと続く巴組。


メスゴブリンらが屋台を見て、キィキィと鳴き、小袋から一枚の銅貨をメイドから受け取る。


小さなメスゴブリンがそっと屋台に銅貨を差し出し、店主は困惑しながらも、その銅貨に見合う串焼きを差し出した。


「キィー!」


ぞくぞくと銅貨を手に屋台に並ぶメスゴブリン。屋台の店主はその光景に吹き出しながら、串を盛大に焼き始めた。


――ライラの帳簿 十の月


定期収支


収入

ジュナイブ商隊

通行料10ソル

2往復(4隊✕4輌)

 =320ソル

傭兵料 1ダラス18ソル

8日=144ソル

小計464ソル


フーガ商隊

通行料10ソル

2往復(2隊✕4輌)

 =160ソル

傭兵料 半ダラス12ソル

4日=48ソル 

小計208ソル


乗合馬車 2ソル

全7往復(12席✕2回)=168席

砦―カルデロ往復

乗車率6割=100席

 =200ソル

砦―ジュナイブ往復

乗車率4割=67 席

 =134ソル

小計334ソル


宿1ソル

200人=200ソル


家賃10戸

100ソル


計464+208+334+200+100

 =1306ソル

合計約131ダリヴル


――


出費

食費370人 一日16ソル(185ドニ(370ゼニ))※市場価格

16ソル✕30日

 =480ソル

 ※卸値5割240ソル

 ※備蓄15日240ソル

 ※累積備蓄食料45日分


その他3ソル×30日

 =90ソル

人件費3ソル×30日

 =90ソル

弾薬費3ソル✕12日

 =36ソル

小計216ソル


計480+216ソル

 =696ソル

約70ダリヴル


山ゴブリン貯金

魔石と貴重品少々


収支

先月残金94

131-70=61ダリヴルの黒字

94+61

 =155ダリヴル


――


資材費(石材加工費)

 集合住宅二軒 10金貨✕2(毎月継続)

  =24ダリヴル

 高原の見張り小屋5金貨

  =6ダリヴル 


残金155-30=125ダリヴル

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