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追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
宿場町の章

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第四十二話 初めての同盟事業

「山ゴブリンと、モンフェラン行くですか?」


モンフェラン計画に先駆け、ヴィクトルはユールとバロンを赤鷲の旗を掲げた部屋に集めた。


「そうだ。手つかずの広い高原があり、その道を整備したいのだが、伸び切った草と狼が邪魔でな。協力できないか?」


「狼、私たち弓で倒すできますが、子ども、子ヤクー狙われます。それに、普段と行き先違います」


「うむ。リスクは承知している。怪我には治癒と薬草の手配、狼討伐には報酬を出そう。どうだ?」


「報酬あるなら、部族から志願者だします。いくらもらえますか?」


「何匹いるか分からんが……一匹一銀でどうだ? 冒険者ギルドよりはいい値段だと思うが」


「とてもいい仕事。若い男、たくさん来ます。私も行きます」


ユールはニッコリと微笑んだ。


「バロン、草と狼はヤクール族に任せるから、山ゴブリンには土を掘って平らにしてもらいたい」


「ググ?」


「まず道の予定路をヤクーが歩く。ヤクーが通った道の草の根を抜いたり、石を取り出したりして欲しいんだ」


「グー」


「細かい命令はしなくていい。一度掘って、土だけ戻す。できそうか?」


「グ」


「よし、くれぐれもヤクーを襲うなよ? 良く働いていれば、彼らからミルクも貰えるから」


「グ!」


大きな山ゴブリンのバロンは赤鷲の旗を高らかに掲げた。


――


夜、ライラと食事をしながらの相談。


「ライラはグランベリーとロマーナに巡礼路の整備事業の打診をしておいてくれ。アルゴ砦のアムズフェルトがモンフェランの安全を確保し、直通ルートを通すための協力を仰ぎたいとな」


「はい!」


「段階は三つ。最初は巡礼路として最低限の安全確保。高原の道と丸太橋を用意する」


「うんうん」


「次に東屋とつり橋。これで巡礼路としては十分だろう」


「ですね!」


「しかし危険は残るし、どちらもやがて朽ちる。継続的に使うため、最終的には石橋と石小屋を用意したい」


「素晴らしいです……」


ライラはうっとりしながらお土産の干し果実を頬張った。


「もちろん目的は交易路だが……まぁみなまで言わずとも意図は伝わるだろう」


「わかりました。実家にも手紙を出しておきます」


「うん、よろしく頼む。残るはジュナイブとカルデロだが……」


「ジュナイブはいいとしても、カルデロはお知り合いとかいませんもんね」


「閉鎖的な都市だし、交易ギルドをみる限りぽっと出の話には食いつかんだろう。それより、いい加減やり手の商人とか雇いたいな」 


「確かに……帳簿も大変です」


「マクスウェルは商人とは言え市議だし別に仲良くもない……ライラの伝手にいい人いないか?」


「私も借金取りとかロンドミルとか……商人にいい知り合いなんていないです」


「……お二人とも、商人をお探しですか?」


同じく食事をしていた守衛のフェルディナが声をかけた。


「おぉ、フェルディナか。誰か良い知り合いいるのか?」


「知り合いと言うか、ジュナイブ大富豪の若奥様になら、心当たりがあります」


一拍の間。


「「……イセリア様!」」


ヴィクトルとライラは同じ名前をあげ、フェルディナは嬉しそうに微笑んだ。


――


「フェルディナ! 久しぶり、元気そうでよかったわ!」


「リア様こそ、ご健勝でなによりです」


元臣下とは思えぬ親しさで手を叩き合う二人。


「これこれ我が姫。主人を差し置いて配下と親しくするものではありませんよ」


すっと恰幅のよい中年の商人がイセリアを諌めた。


「……ごめんなさい、ヴィクトル様、旦那様」


「イセリア様を呼んだのはフェルディナですから構いませんよ。はじめまして、この砦の主、ヴィクトル・アムズフェルトです」


「お初にお目にかかります。アムズフェルト辺境伯閣下。私、しがない金貸のジェイコプ・フーガと申します」


軽く握手を交わし合う二人の主人。ヴィクトルはその世辞に口端を歪めた。


「おいおい、辺境伯であったのは父までだ。私こそしがないバニシュに過ぎない」


「なにを仰る。例え帝国が認めずとも、この地の誰もが閣下こそ南アルガスを治めるべき辺境伯と認めておりますとも」


なんともおべっかの上手いことだ。ヴィクトルは商人の口振りに苦笑いを浮かべた。


「それで……此度はどのようなご用件でございましょう?」


「うむ、イセリア様に貴殿は素晴らしい先見の明と人脈をお持ちだと聞いてな。是非意見を聞かせてほしい」


「ホッホッホッ。お若いのに実にお上手なことで。直情的なリオネル様とは一味違いますな」


「ではアムズフェルトらしく、端的に話すとしよう」


ヴィクトルが口元で両手を組み、続ける。


「貴殿、グランベリーとカルデロの交易に興味は無いか?」


「ほう……?」


「我らはいま正統教会と懇意にしており、モンフェランを越える巡礼路の安全確保を行っている。そこに交易路と橋が欲しい」


「しかし、あちらは関税かかるフランツ圏。ジュナイブはグランベリーと船と西ルートで交易を行っている。ジュナイブ側のうまみはありますかな?」


「橋の利用料、グランベリーカルデロ間の交易。そして中継地たるアルゴ砦での商売権」


「悪くはありませんが……投資に見合うかは判断が難しいですな。必要なら資金をお貸ししてもよろしいですよ」


フーガが豊かな腹をさすりながら笑う。


「いや、我らは商売がしたい訳では無い。本業は傭兵だからな」


「ふむ……取り仕切りをこちらに委ねると?」


「そうだ。カルデロ交易ギルドや石工ギルドとの交渉もそちらに委ねたい」


「……逆に、そちらの利益は?」


フーガの目が細くなる。


「言っただろう? 我らは傭兵だ。安全な交易路の保証と、関所の対価があれば良い」


「……条件がございます」


「聞こう」


「アルゴ砦に、フーガ家の商館を置かせていただきたい」


その条件に、ヴィクトルは眉を寄せた。


「……無知ですまない。商館とはどう言う施設だ?」


「知った振りよりは誠に聡明かと。商館の役割は多技に渡りますが、ここでは両替と交易の取り仕切りが目的にございます」


「ふむ」


「多少の売買には帝国通貨で問題ありませんが、国家を渡る交易に両替は必須。さらにジュナイブを介さずフーガが利を得るにはこの地に商館があることが肝要。そして――」


ジェイコフ・フーガは若い妻に柔和な視線を向けた。


「我が姫からアルゴ砦に別荘が欲しいとねだられておりましてな。商館に姫の住まいを用意しようかと」


「うれしい! 旦那様大好き!」


ぽよんと音が聞こえてきそうなイセリアのハグをフーガは嬉しそうに受け止めた。


「なるほどな……どうせやるなら、商人ギルドを作って市場の仕切りまでやってくれ。細かいゼニ勘定は好かんのでな」


「ホッホッ、ゼニ一枚逃さず数えるのが、商人の楽しみでございますよ」


「では……まずは商館の建設とカルデロの交渉を任せる」


「フーガ家の傭兵、よろしくお頼み申します」


その日、アルゴ砦のベイリーにフーガの商館と市場の区画が割り当てられた。また、交易商隊にフーガの商隊が加わった。


――ライラの帳簿 六の月


収入

ジュナイブ商隊

通行料 往復馬車16台 32ダリヴル

傭兵料(1ダラス) 18ソル×8日 144ソル 


フーガ商隊

通行料 往復馬車8台 16ダリヴル

傭兵料(半ダラス) 12ソル×4日 48ソル 


乗合馬車 20ダリヴル

ヤクール市場 2ダリヴル

計 約89ダリヴル


出費

食費360ゼニ(15ソル)×30日 45ダリヴル

その他2ソル×30日 6ダリヴル

人件費3ソル×30日 9ダリヴル

弾薬費3ソル✕12日 3.6ダリヴル

計 約64ダリヴル


臨時出費

ドクダミ2金貨

聖グランベリーへの寄進2金貨

旅行費1金貨

祝宴5金貨

10金貨→12ダリヴル


山ゴブリン貯金

魔石と貴重品少々


収支

89-64-12=13ダリヴルの黒字

残金139+13=152ダリヴル


ヤクール市場は来月から無し。

狼討伐にも報酬予定。

弾薬費は材料の仕入が必要に。

傭兵6人に付き、平均1日約1銀。

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