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追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
宿場町の章

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第三十三話 帝国の影

「若……事業はうまくいっておるようですが、主が二日に一回も不在ではアルゴ砦の治安に支障をきたします」


乗合馬車が一月経過した頃、ブランドルから苦言が呈された。


「確かに……若様がいないと、ゴブリンも好き勝手遊んで悪さするし、ちょっと……」


困った様子のアクアライナが続く。


「むぅ……かと言って、ドル爺に任せるわけにもいかんだろう」


「ジュナイブ側はほとんど客がおらんのですからそちらは中止しては?」


「いや、少ないがカルデロ―ジュナイブ間の利用者はいる。少ないからと減らしたらカルデロの利用者も減るだろう。それに……」


「ふむ?」


「ジュナイブでは必需品の購入ができるし、なにより情報が手に入る。最近なんか知らんがやたら女性に話しかけられるしな」


「……ヴィクトル様?」


得意げなヴィクトルにライラが冷たい視線を向ける。


「いや、たまにサインとかポーズをねだられるくらいだぞ」


「まぁ嫌われ者より良いでしょうけど……私もヴィクトル様がいないと、少し不安です」


「ゴブリンが北に土嚢と堀を完成させたとは言え、城壁に比べると頼りないですからな」


「わかったわかった。オレが出向くから問題なんだろう? 前々から言っていた騎士を増やそう」


「連絡がとれるものは皆、帝国兵となっているようです。引き抜きをかけてよろしいか?」


「そうだな……いくらぐらいかかる?」


「日当4銀だせばよろしいかと」


「えー! お師匠さまそれ私の倍あるんですけど!?」


「お主は仕事探してふらふらしとったんじゃろ? 帝国兵を引き抜くならこれぐらい必要じゃわい」


「まぁ魔導蒸気炉の補給はぶっちゃけ楽だからいいですけど」


「暇しとるならワシの錬金術を手伝わんか」


「はぁい……」


「そういえばブランドルさんの錬金術って何を作ってるんですか?」


「ほっほっ、アルゴ砦に欠かせぬ薬じゃよ」


「あぁ、お薬作ってたんですね」


「……薬は薬でも、ドル爺のは火の薬だがな」


ヴィクトルとブランドルは視線を合わせ、ニヤリと笑みを浮かべた。


――


「ヴォルフ、手紙だ」


「はっ……え?」


「どうした?」


「いや……封蝋が空いてまして。検閲を?」


「そうだ。その赤鷲の刻印の持ち主は要注意人物として改めさせてもらった」


「……では内容に問題はなかったんですね」


「あぁ、ただの勧誘だ。そしてその件で話がある」


「はっ」


「誘いを承諾し、内部の情報を報告せよ」


「私に……諜報せよということですか……?」


「そうだ。帝国在籍のまま、別途報酬もだそう。もちろんあちらの金も受け取るがいい。いい仕事だろう?」


「閣下、お言葉ですが、私は先代の主を裏切るほど腐ってはおりません」


「裏切れとは言っていない。ただ帝国に害なす存在か否か報告するだけだ。害がなければ問題はない。ただ――」


「……?」


「人類に仇なす存在では、あるやもしれん」


――


『アルゴ砦―カルデロ行き乗合馬車』


ジュナイブの門近くで看板だけ出し、腕組み座るヴィクトル。


「もし、こちらアルゴ砦行きの馬車で間違いありませんか?」


つばの広い帽子を被った、黄色いふわふわのワンピースの女性が声をかけた。


「えぇ、二銀で乗れます」


「アルゴ砦には何があるのかしら?」


「温泉と宿、正統教会……ヤクール族の市場、あとは友好的なゴブリンですね」


「ゴブリンってなんですか?」 


黄色い令嬢はキョトンと首をかしげて尋ねた。


「え、知りませんか? 小鬼みたいな――」


魔物ですよと口に出そうとして、ヴィクトルは口をつぐんだ。


「人みたいな、小鬼です。見たければ馬車に乗ってますよ。躾けてるので安全です」


「へぇ、面白そう。じゃあ一金貨で貸切にしてもらえますか?」


「え?」


「足りない? 二枚いる?」


「いえ、いつも六人も乗らないので、一枚で十分です」


「じゃあ乗せてもらうわ! ねぇ、貴方も一緒に乗るのよね?」


「いえ、オレは御者を」


「良いじゃない、貸切りなんだから。お話を聞かせてほしいの」


「なんのお話ですか?」


「強盗騎士と聖女の逃避行よ、私大ファンなんだから」


「そ、それが目的で?」


予想外の答えに困惑するヴィクトル。


「そうよ、さぁ連れて行ってちょうだい。強盗騎士のお城へ!」


令嬢には当たり前のように男女二人の付き人が付き、男が金貨を渡し、御者席に座る。


ヴィクトルはこの令嬢が何者か、一体どのように扱うべきか、判断がつかないでいた。


「……まぁいいか。豪商の娘か何かだろう」


スカウトに御者を任せ、ゴブリンの護衛を先行させると、ヴィクトルは後ろの荷馬車に飛び乗った。


「それじゃあお嬢さん、オレは演劇の話は知らないんだが、どこからお話しましょうか?」


「もちろん、二人の出会いの章からよ」


「……なら第一章は……追放騎士と奴隷の娘ってとこかな」


「わぁ……音楽! 音楽かけて!」


後ろの女がリュートを取り出す。参ったな、なんか本格的になってきたぞ。


「あれはオレが冒険者ギルドの依頼を受けて、ゴブリンの巣穴に向かっている時だった……」 


話に合わせるように、ポロンポロンとなるリュートの音色。黄色い令嬢は心底楽しそうに、ヴィクトルの語りに耳を傾けていた。


――ライラの帳簿 四の月


出費

食費360ゼニ(15ソル)×30日 45ダリヴル

その他(主にランディさん)2ソル×30日 6ダリヴル

計 約51ダリヴル


収入

ジュナイブ商隊

通行料 往復馬車16台 32ダリヴル

傭兵料(1ダラス) 18ソル×8日 144ソル 

乗合馬車 20ダリヴル

計 約66ダリヴル


山ゴブリン貯金

魔石と貴重品少々


残金104+15=119ダリヴル!



お読みいただきありがとうございます。

次回は明日の夜、投稿予定です。


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