第三十一話 貢物とゴブリンの家
「骨……皮……錆びた武器……腐った肉」
「石……黒い石……白い石……硬い石」
食料を求めやってくる山ゴブリンらが、壊れた木箱に詰め込んで持ってきた貢物。
ライラとヴィクトルが一つ一つ放り投げながら確認していた。
「遥々持ってきてくれた所悪いが、ほとんどゴミだな」
「そうですねぇ……石は綺麗なのもありますけど」
「ただの綺麗な石か宝石かもわからんし、石灰岩や鉄鉱石なら使えるんだがな」
「ランディさんにも見てもらいます?」
「うーん……それより、山ゴブリンに欲しい物を伝えた方がいいかもな。金属の採掘ができるわけでもなし。今のままでは粘土か石を運ぶのがせいぜいだ」
「あれ、これ魔石じゃないですか?」
石の奥から、青く淡い光を持つ宝石をつまみ上げる。
「ほんとだ……そうか、廃ダンジョンに暮らしてるから、ちょっと魔石が残ってるのか」
魔石は魔力を内包する希少品とは言え、消耗品のため大きくないと価値は低い。
それでも魔法使いにとってはいざというときの切り札だった。
「これぐらい小さいと一銀貨程度だが、無いよりはマシだな」
「そうですねぇ……お仕事覚えさせるのも大変ですしとりあえずこれで」
「一応、バロンが持ってた装飾品とかも売れるからな。山ゴブリンが食えない戦利品がこっちに流れてくるかもだ」
「それ……悪いお金では……」
「なぁに、洗えばきれいになるさ」
――
ベイリーに宿と穀物庫が完成した。
宿は六人部屋が四つ。基本は大部屋で雑魚寝。個室が必要な客は砦の個室を貸す。
運用はメイドが一番向いているが、いまはライラの側仕え。メスから掃除や料理が得意なメイドを探し、ヴィクトルがオカミと名付けた。
「一人で火を使わせたくないし、そもそも算術ができないから……宿と言ってもシンプルにしないとね」
調理は外のかまどで行い、宿に運ぶ。支払いは一泊食事付き一銀でアルゴ砦に支払う。オカミの仕事は運ぶと掃除、そして温泉の案内。
――チャポン
オカミを指導するついでに、アイナと温泉へ。
「これからは、温泉をゴブリンと人間にわけないとね」
「そもそも男湯と女湯も分けてくださいよ……こないだランディさんにみられたんですよう」
アイナの指摘はもっともだが、ライラはもう混浴が当たり前になってしまっていた。
「そうね、アイナは他に必要なものはある?」
「えー……ありすぎて困ります。ジュナイブに引っ越したいぐらいです」
「それはまぁ……」
「逆にライラ様はなんで平気なんです? 結構いい家柄なんでしょう?」
「アイナさんは奴隷堕ちして無一文で放浪するのと、囮としてゴブリンの巣穴に放り込まれるのどっちがいい?」
「どっちもイヤですぅ……ギリ放浪の方がマシ」
「私は囮になったんだけど、たいていのことはその時よりマシだなって思っちゃうのよね」
「それ囮にしたの若様ですよね? 出会い方ヤバすぎません?」
「出会った日は、助けるかわりに寝床はオレの隣だって言われたし」
「わっ、若様やらしい! 混浴なのも若様がいやらしいからだったんですね!」
「ふふ、最近はアイナさんと一緒に入ってるけど、最初の頃はずっとヴィクトル様と入ってたのよ」
「わっわっ、大胆ですね!」
「だって……ゴブリンも入ってくるから……」
「切実ぅ……」
後日、建築員さんに頼んでみた所、材料があるなら脱衣場ぐらい組み立ててくれるとのことで、あっさり増設してもらえた。
温泉の仕切りは無いが、着替えを見られないのは助かる。温泉のゴブリンエリアはゴブリンに作ってもらおう。
――
さぁ寝る前にちゃんと帳簿をつけよう。
「ライラ、ちょっといいか?」
「どうしました?」
「ゴブリンがクルを気に入っていて、凄くせがんでくる。メスゴブリンも欲しいそうだ」
「あぁ……そうですね、メスの大部屋も限界だと思います。子どもが増えていて、走り回るので」
「大きいクルは一部隊入るからオスの共同スペースにしたい」
「今後はメスのクルを、家族の小さいクルにしてあげたいです」
「一家族ずつは無理があるが……」
「ゴブリンは共同生活が基本ですから、完全に分けると寂しがると思います」
「家族三人から四人を三組ってところか。小さいクルにギリギリ入るな」
「はい、少しずつ増やしていきましょう。ユールさんは材料さえあれば、ヤクーの皮でなくても作ってくれると言ってました」
「ちなみに試算するといくらになる?」
「ええと……」
まず大きいクルが10ダリヴル。小さいクルが5ダリヴル。小さいクルに12匹入るとして、ざっと10軒。50ダリヴル。
「全部で60ダリヴルです」
「まぁ……必要経費か」
「そろそろ100ダリヴル切りますよ……」
「なんかドカンと稼げる手段はないものか……やろうと思えば山ゴブリン合わせて200名は出せるんだが」
「そんなのもう戦争規模ですよ。やっぱり、商売しないと」
「商売なぁ……そういえば傭兵で山の街まで行くんだが、オレ達も交易できないかな?」
「交易ですか? でも、ヴィクトル様は算術が……」
「なに、もうすっかり安全なんだ。ライラも行こう!」
「私も、ですか?」
今度は交易まで……帳簿が大変だよぁ。
――ライラの帳簿
収入
山ゴブリンからの貢物。
魔石少量、備蓄財産。
装飾品……交易品?
支出
大きいクル(4軒目)10ダリヴル
小さいクル(10軒)50ダリヴル
161-60=101ダリヴル




