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追放騎士と銃装ゴブリン傭兵団  〜聖女とはじめる辺境の永世中立国〜  作者: ふろんちあ
旗揚げの章

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第二十八話 王と領主

「ガァァァ!!」


獣のような叫声をあげる狂戦士ランディル。


周囲に群がる山ゴブリンを斧で蹴散らし、投石を力強い投擲で返す。斧、石、あるいはゴブリンを投げて混乱する場をかきまわす。


やがてランディルをフォローするように、三番隊と予備隊のオスゴブリンが集結した。


「へっ、俺様が指揮しろってことか」


切れた口から血を吐き捨てて、ランディルは考えた。数は揃ったが武器が足りない。ほとんどが素手で、銃も弾も砦の武器庫。


対して敵は錆びたナイフや農具と犬が、約五十。大した武器ではないが、不浄な武器はそれはそれで厄介だ。


「てめぇら! 建築現場から角材持ってこい! 石や鉄でもいい!」


「ギィ!」


その場しのぎの武器だが、あると無いでは大違いだ。重い角材を持って振り回す者、煉瓦や石を投げる者、ハンマーで打ち据える者。


こちらが集まると敵もぞろぞろと集まりはじめ、周囲を取り囲んでいく。そして、一際大きな山ゴブリンがぬぅっと姿を現した。


大鉈を持ち、ランディルを上回る巨体。敵のボスかと思えば、似たようなサイズがもう一体。ボス級のホブが二体。


「隊長格か……まだ控えてやがんな」


アレがボスなら突撃しても良かった。だがそうでないならまだいけない。狂戦士は自分の命の捨てどころを考えていた。


――


ランディルが巨体のホブ二体に押し込まれ、巴組らもジリジリと距離を詰められていく。


――カァン、カァン!


火花を散らす斧と大鉈、とびかう投石、群がる犬。何匹かのゴブリンが倒れ、巴組にも被害がではじめる。


「キィー!」


「チッ!」


巴組のフォローにランディルが斧を投げる。山ゴブリンの後頭部を叩き割り、すかさず拾いあげようとした所に、おいすがる大鉈が振り下ろされた。


――カァン


大鉈を弾き、軌道を流す大薙刀。トモエがズザリと前に出た。振り返ると同時に振るランディルの斧がホブの剛腕を断ち切った。


「やるじゃねぇかトモエ……よし、これで二体二だ」


「キィッ!」


流血する腕を抑え怯むホブ、迫る狂戦士の斧。横を狙うもう一体を、薙刀が抑えた。


「グォー!」


深々と肩に斧が突き刺さり、血が噴き出す。全身にその血を浴びながら、狂戦士が歓喜の笑みを浮かべた。


――ガコン


砦の扉が開き、ブランドルが姿を現す。


「銃の用意が出来ましたぞ!」


砦の中から建築員が続き、銃と弾薬を運び出した。


「よし、てめぇら砦に退くぞ!」


ランディルが道を切り開き、一斉に坂道をかけ上がる。三番隊が銃を受け取り、弾を込める。


追いすがり、坂道を駆け上がる山ゴブリンに向け、薙刀の刃先が光る。


「慌てるな……いつも通りに構え、真っすぐ狙うんじゃ」


精鋭ほど銃に慣れていない三番隊にブランドルが慎重に指示を出す。


やがて準備ができた一匹の構えに、ブランドルが火花を飛ばす。鳴り響く火砲、一撃で倒れ伏すホブゴブリン。逃げ始める犬達。


高所を抑えた薙刀と銃装のゴブリンは、数の劣勢と混乱の戦局を圧倒的に支配した。


――ダァン! ダァン!


「こうなったら俺様たちはただ守ってればいい。もう前に出るなよ、トモエ」


「キィ!」


互いに背後を預け、最前線を守る戦士二人。近づく山ゴブリンを一閃のもとに切り伏せた。


――ギーハー!


奥から山ゴブリンの声が響き、ぞろぞろと敵が退いて行く。やがてそれらは一匹のゴブリンのもとへ集結した。


「あいつがボスか……じゃらじゃら飾り立てやがって」


憎々しげにランディルを睨みつけるゴブリンロード。バサリと毛皮を翻し、悠然とその場を去ろうとした。その時――


「狙え」


――パチン


火花を散らして火砲が鳴り、ぐらつくロードの巨大な躯。肩口にあいた穴から血が噴き出す。


「よくもオレの砦に手を出してくれたな。その報い、一発で済むと思うなよ」


「ギィ!」


小さな小鬼を背に乗せて、草原を駆け抜けた炎の騎士。ヴィクトル・アムズフェルトの帰還であった。


――


犬をけしかけ逃げようとするロード。草原を駆ける騎士は難なく剣で犬をさばき、小鬼が銃を構える。


――タァン!


まるで優雅な狩りのように、馬を駆けて獲物を狙う。山ならともかく草原では、山ゴブリンに逃げ場など何処にも無かった。


――タァン! タァン!


ヴィクトルの二丁の小銃も借り、ご機嫌にロードを狙い撃つスカウト。


やがて全身から血を流し倒れ伏すゴブリンロード。遠目からやって来る銃装のゴブリン兵団を見て、山ゴブリンらは方々に逃げはじめた。


「……見捨てられたか。哀れだな」


「グゥゥゥ……」


苦しむロードを、ヴィクトルが見下ろす。


「正直、やられたよ。あれだけの被害の後にこっちの巣穴を攻めてくるとは思わなかった」


「グゥ……」


震える指で、銃を指さすゴブリンロード。


「そうか……確かに銃が奪えなければ、勝てないだろうな」


「グォー!」


「止めておけ。お前がどんなに優れた戦士でも、草原の馬には勝てない」


アロが嘶き、蹄が土をかく。


「グゥ……」


「降伏しろ、ゴブリンロード。我が庇護下に入れば、その命を助けよう」


「グ……グォ?」


「そして約定を結べ。我ら赤鷲の旗に従い、ヤクール族を襲わないと。さすればお前たちに役割と冬の食料を与えよう」


「グ……グォ」


「全ての人、全てのゴブリンを襲うなとは言わん。約定を結んだものだけだ。むしろ……赤鷲の旗がなければ率先して襲うがいい」


「グ、グァ?」


「選べ、ゴブリンよ。我が赤鷲の旗に従い男爵(バロン)となるか。領主(ロード)として死ぬか」


……一拍の間。


ゴブリンロードは飾り付けた装飾を掌に差し出し、降伏の意を示した。

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