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ep.12  真実

前半、暴力的表現があります。

ご注意ください。


後半、のんびりした母親ケイティ

寡黙だけれど妻を溺愛する父親


1週目の前世とは両親の性格も違うようです。

薄暗い地下牢は日も当たらないため肌寒い


目的の場所へ着くと、皮膚の焼けた後の独特の鼻につく臭いが強くなる

ヒューヒューと狭くなっている気道を僅かな空気が通るような呼吸音が聞こえた

真っ黒い焼け焦げた塊はほぼ動かない


「…。」


声をかけても反応があるかどうか


ピクリと僅かに指のようなものが動き出す

塊に向かって指を小さく動かすと、塊の動きがまた大きくなる 


「優しいねぇ。治癒なんて。」


ヒューっと口笛を鳴らし影は言う


「必要だからだ。最低限、話せるだけの回復をしただけだ。どちらにしろそう長くはない。」


冷たい視線をそれに向けた


「ネイ…サン…。」


「誰がその名を呼んで良いと許可した?」


抑制装置のお陰で

自身の魔力を回復にも充てることが出来なければ

もちろん、魅了の魔法さえ使うことは不可能だ


「何故、彼女を執拗に狙う?」




「あの女より私の方が…。アヴァも…茉優も…大っきらい…」


ピクリとネイサンの眉が動く


「茉優?」



「怪我させるだけのはずだったのに。…あの女の前で男取ってやろうと思ったのに…呆気なく死ぬからつまんない。」



直後に咳き込み鮮血を吐く



「私より幸せそうに笑う…あの子が大っ嫌い…幸せになるのが許せない。死んでも…来世まで追いかけてあの子の不幸を…」



「…まるで呪いだなぁ…」


静かに聞いていた影が言う


「お前の名前は?」




「色んな名前があるわ。フローラに、リリー…亜弥。すべて私。ねぇ、お願い…私のことを愛して。」


かろうじて動く腕を伸ばす

女の元にゆっくり歩み寄る


触るのも嫌な女の手をそっと取る


「あぁ…ネイサン…」



火傷のせいで溶け落ちた皮膚のまま恍惚とした表情でネイサンを見つめる


「……無様だな…」 


ハッと吐き捨てるネイサン


「お前を愛することはネイサンでも、叶汰でも、あり得ないことだ。私はアヴァであり茉優の魂だけを愛している」


「あんた…」



ピタリと動きが止まり信じられないといった表情で



「茉優を轢いた奴が()()()依頼されたと迄は供述したと聞いた。マッチングアプリで出会った女に騙されたと。その()()さんを見つけた頃には、そいつはすでに死んでいた。警察も捕まえる事が叶わなかった」



「・・・」、




そのままネイサンはフローラの右手の指を優しくなぞった



()()()が、茉優を傷つけろと依頼したんだろう?」


優しく微笑んだ直後、ネイサンは思いきり指を反対の方へと曲げた


「ぎゃぁぁぁ!」


ボキッと鈍い音と鋭い痛みと共に悲鳴が上がる



「・・・怖いねぇ・・・俺、今回やることないや」


背後でそう呟く



()はお前の存在、茉優から聞いてたよ。葬式にまで来てわざとらしく俺を口説いてくれてありがとう。」



痛みでのたうち回るフローラの傍から立ち上がり傍を離れた



「・・・後は片付けて置け。」



そういい捨てその場を後にした

地下室から戻る途中、断末魔の叫び声が聞こえた

カツンカツンと自分の足音を聞きながら茉優の葬式の時を思い出していた


参列した中にあの女はいた

“茉優の親友です。こんなことになるなんて・・・お辛いでしょう?”

そういいながらわざとらしく涙を流し、しな垂れかかってくる女

茉優の家族は警察の捜査に進展がある度に連絡をくれた

“捕まった犯人が、依頼されたと供述した”

そう聞いた時には驚いた。偶然の交通事故ではなく狙われたものだったことに腸が煮えくり返った

直接、留置所に出向き女の特徴を聞いた

あの女だと確信した


警察が捕まえる前にと女を呼び出した

真実を聞きたくて呼び出したのにあの女は来なかった

女が既に絶命していたと知ったのは後日だった

同じように騙された男からの復讐に遭い殺された


これからどうやって生きていけば良いのか途方に暮れ、絶望に打ちひしがれていた時の事

祖母の蔵にあった形見の存在をふと思い出した

彼女の遺体に小さく傷をつけた事を思い出した

叶うかはわからない

彼女の血をどこまで剣が吸っているのかもわからない

これが本当ならここで終わらせる事で生きた彼女にまた会えるかもしれない


“叶うならまた一緒にいたい。”


そう願って自らの胸に剣を突き立てた








「アヴァの状態は?」


待機していた執事に声を掛ける



「良くも悪くもなにもお変わりありません。」


安堵なのか、気落ちなのかどちらかわからないため息をつく

そのままアヴァの部屋へと向かう


着替えを終えたアヴァがベッドに横たわっている

かろうじてその体に温かさはあるものの動きは一切ない

当主の書物を調べても何も手がかりがなかった


「・・・父上の所へ行く。」



「今からですか?」



しばし沈黙していた主が唐突に言い出したことに常に冷静な執事も驚いたようだ



「何かご存知かもしれない」


その言葉を聞き“すぐに支度を致します。”そう答え執事は姿を消した


「ルー、最期のチャンスだ。私はこれより父上の元へ行く。根源は消えたが何が起こるかわからない。必ず彼女を守り抜け。」


さもなければ、お前の血を剣に吸わせる


そう付け加えた


「もちろん。必ず守ります」


珍しく丁寧に答えた影に小さく“頼んだ”と付け加えた


執事の用意したポータルを利用し、父母のいる地へと移動した










執務室に唐突に表れたポータルの気配に何かあったかと悟った

少し待つと久しぶりに見知った息子の姿があった


「息災か」


やや疲れた様な表情を見せた息子は私に礼を取る


「突然ですみません。父上。」


挨拶もそこそこに息子は全ての経過を話す







眉間に皺を寄せ応接室のソファに腰かけた父は腕を組みながら沈黙を貫いている



「・・・・」



父の表情から、()()が過去の当主でも経験がないのだろうと悟った



「お前だけでなく、その‥アヴァと言ったか?その娘も・・・」



「アヴァの記憶が曖昧な理由もわかりません。それに彼女を死に追いやったあの女が転生している事も不可解です。」



父はとうとう眉間を摘み大きなため息を着いた


「で、お前はその女を始末したと。アヴァという娘の意識を取り戻す方法が知りたい・・という事だな」



その言葉に頷くと、コンコンと重厚な扉を叩く音がした

父が入れと声を掛ける



「あら、お客様かと思ったら・・・。ネイサン、母には挨拶もなしですか?」



1度目の頃の母よりも優しい表情をしたネイサンの母が現れた



「母上、急ぎの用でしたのでご挨拶が遅れ申しわけありません。」


そう言いながら母の手の甲にそっと口づける


にこりと微笑んだ母は“お前も元気そうね”とのんびりと答えた


「それで?急ぎの用件は終わったの?この母と少しばかりお茶をする時間はないのかしら?」


そう言いながらすでに父の横に腰かけてにこやかな母


「・・・」


にこやかな表情は変えず、返事をせずにいる


母には弱い父は何言うことができずただ静かにそこにいる


和やかな雰囲気の中、久しぶりの家族の団欒

にこやかな表情を作りながらも頭の中はアヴァの事でいっぱいだった



「お前ももう良い歳だし、そろそろ婚約者でも作るべきではなくて?」


唐突な母の言葉に父共々、姿勢を正した


「母上・・・」



「母の知り合いのお嬢さんなのだけれど、見た目も可愛らしくて・・」


このままでは強制的に見合いでもさせられてしまうのではと焦ったところで父親が止めに入る


「やめないか。ネイサンには、心に決めた女性がいるんだよ。君も知っている通り、ベッドフォード家は・・・」


「まぁ!そうだったのね!どちらのお嬢さんなの?ぜひともお会いしたいわ!」


父の言葉を最後まで聞くことなく興奮した母が言葉を紡ぐ



「母上、落ち着いてください。彼女は今その・・すぐに連れてはこれなくて。」


転生などの言葉を伏せ、彼女との出会いなどを伝えていく


「まぁまぁ・・・ネイサンから・・・愛せる人がいるなんて幸せなことよ。手放してはダメよ」


“素敵ねぇ”うっとりしながら、思いを馳せている母

そんな母を尻目に父はこっそりと息子に耳寄せする


「悪いな。今、ケイティは町で流行っている恋愛物語に夢中でな。」


「身分なんて関係ないのよ。大切なのは真実の愛だと思うわ。これからはそれが流行ると思うわ」



相変わらず自分の世界に夢中になってる母にため息を着く父

王都での生活では父も母もこのような大らかな様子は殆どなかったように思う


「あー…ケイティ。仕事の話をネイサンとしたい。ネイサンが想う子はアヴァと言うらしいんだが、私たちから何か気にきいた贈り物でもどうだろう?」


“良かったら、君が用意してくれないか?”

暗にそう含めて伝えると“まぁ!良いアイデアだわ。”

そういいながら立ち上がり、ケイティは颯爽とその場を去っていく



「母上もお元気そうで安心いたしました。」



元々、こんなにのびのびした人だったのかと自分の母親に若干驚いた


「可愛らしいだろう。王都に行く前もあんな風にのんびりした女性だったんだ」


去っていったケイティの背中を見ながら過去の記憶に想いを馳せる父

そのまま父は急に真顔になる


「残念だが、お前の今起こっている事象を解決する術は私にはわからん。」


その言葉にやはりかと大きくため息が出た


「その‥女が何故転生したのかはわからん。アヴァ自身は突き付けられた現実に記憶の混乱が起きたのだろう。」


そのまま父はソファから立ち上がり執務室の窓の外を見た


「記憶は曖昧だが。記憶が混乱しているのであれば、修正する事で記憶の整理ができる可能性があると何かで読んだ気がするが・・確証はない。」


「記憶のやり直し・・・ですか?」


父は頷き、執務室の机から小さな箱を取り出す

その箱を開けると、古い子供用の髪飾りが入っていた


「・・・これは?」


明らかに女児につけるそれは父が持つと違和感がすごい


「・・ケイティには言っていない。否、言えていない。彼女が婚約者候補に挙がった頃、こっそりと彼女を見に行ったことがあったんだ」


子爵家の娘が婚約者候補に挙がった際、別の女性も候補に挙がっていた

祖父は、ケイティではない女性に決めるつもりだったと言う

父はこっそりと子爵家に居た母を覗きに行った

そこで見初めたのだ

祖父にケイティとの婚約を希望している旨を伝え説得した

何とか祖父を説得した後、



「婚約内定の挨拶の時に、彼女に渡そうと思ったのに。情けないことに渡せなかったんだよ。」


この年になっても恥ずかしく未だ渡せていない贈り物は父の執務デスクの中に入っている


「私が死ぬまでここに入っているだろうね。」


私も過去をやり直せるならあの時に渡していたよ。

そう言いながら笑う


「ま、ケイティに何か起こらない限り、私はあれを使わずにいるよ。」


折角、彼女と人生を共に生きることができているからね。


そう言いながらやさしい眼差しの父は過去の思い出を振り返っている様だった

父の話を聞いた私は屋敷にある物を思い出した


「父上、ありがとうございます。」


どのように解決すべきかはわからないが、少しヒントが見えた気がする

そう思うと、不思議とアヴァが自分のもとに戻ってきてくれる気がした


礼を取り“戻ります”と伝えポータルを使い屋敷へと戻った




読んでいただいてありがとうございます。

誤字脱字あれば教えて頂けたら嬉しいです。

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