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ep:11 呼び出したのは

少し暴力的表現ありますのでご注意下さい

「公爵様!ご報告申し上げます!」


アヴァにつけているはずの護衛二人が走って戻ってきた

同時に、影としてつけているアイツが戻ってこない


嫌な予感がした



“やられた!”



起こったことを聞き座面から慌てて立ち上がる

傍で聞いていた執事は真っ青になっている


「すぐに捜す。」


そう言いながら影の気配を探し出し、慌てて馬に乗り走り出した


無事でいてくれと願いながら











「痛っ‥どこよ、ここ・・・」



いつものポータルよりもやや粗い転移方法だな~なんて思えるのはネイサンのポータルを

使い慣れてきたからだろうか



ひんやりした薄暗い部屋にいた

外に出られないかと唯一の扉に向かって歩き出したが、扉が動くことはなかった



「出られない・・・」


ここは何処?

リリーの所へ配達の途中だと思ったけれど・・・。




考えているとカツンカツンと足音がした


そのままガチャとドアノブが回る音がしてギィっと鈍い扉が動く音がした



目の前には、栗色の髪色にエメラルドグリーンの娘


「こんにちは。」


容姿に似ずニヤリと嫌な笑いを浮かべる


“この人は・・・”



彼女を見てすぐにわかった

ヒロインの“フローラ”だ

こんなシーンあっただろうか


「親友、置いてくなんてひどいよねぇ。」



「親・・・友・・・?」



彼女とは初対面のはずだったけれど・・



「・・・貴女に依頼したのは私よ?」



「・・・私は“リリー”からと聞きましたが?」


嫌味ったらしい言い方があたしの中で嫌悪する



「リリーは“アヴァ”の親友よね?」




「本当に貴女の事嫌いよ。昔っから。」


そういって、“フローラ”がパチンと指を鳴らすと容姿がみるみる変化する

赤茶色の髪色に瞳、少しばかり頬のそばかす



「・・・リリー・・・?」



目の前に幼い頃から一緒に過ごしていた親友が現れた



「久しぶりね。アヴァ。」



「え?」



見知った容姿、態度の親友が目の前で何かを話している



「昔っからほんと、嫌い。あんたの方が早く孤児院に来たからって偉そうに。私はあんな所にいる様な人間じゃないのに私のことを憐れんで!!」


段々と口調が強くなる


「偉そうにって・・そんなつもりではなかったけれど・・・あんな所って、私たちの家じゃない。」


私自身、親を亡くし孤児院へ入った

世話係たちは親の様に優しく愛情をもって育ててくれた

あそこで育った人たちは私の中では皆、家族、兄弟だと思っていたのに。



「私はねぇ・・元々貴族なのよ!あんたみたいな平民と違うの!なのに、お父様がやらかしてくれたせいで母国は追放になるわ。孤児院に入れられるわでたまらないわよ。」


そのまま目の前に来たリリーはパチンっとあたしの頬を打った


「あんたなんかと違うの!なのに偉そうに。お母様まで私を捨てるし。気付けばあんたはお貴族様の嫁になってるしで気に入らないったら!!」



唖然としているあたしを尻目にフンッと鼻を鳴らす


「だからあんたの旦那、とってあげたの。“叶汰”も目の前で取ろうと思ったのに、あんた死ぬんだもん。ほんっとにつまんない。」




“叶汰・・・?”



どこかで聞いたことのある名前だ




「ねぇ?茉優。」



ドクンっと心臓が鳴る

胸が苦しくなる


そうだった

目の前が明るくなったと思ったら車が突っ込んできたんだ

強い衝撃と全身の痛み、息苦しさ

ゴホッとせき込むと口元が生暖かくなった気がした

血を吐いたのかもしれない・・

周囲のざわめきが聞こえた

意識の最期で見たのは“亜弥”の不気味な笑み


“ばいばい。”


そういった気がした

そのまま気が遠くなる、耳鳴りがする





「茉・・・優・・」



私の名前だ

前世の私の名前


息苦しさが強くなる

足腰の力が抜け立ち上がれない


何とかあげられる顔を上げると“フローラ”が不気味な笑みを浮かべて立っている

彼女は座り込んでいる私に合わせ、腰を落とし声を発する


「久しぶり。茉優。私よ、“亜弥”。あんたの親友」



いいざまね。そう言って彼女は目の前で笑っている


「私たち、()()()だものね?」



眩暈がする

息が苦しい



「亜・・弥・・」


前世の私が嫌っていた“自称:親友”のあの女だ

同棲していた彼を“品定め”としてひたすら会いたいと言っていたあの子

私が苦手だからと、学生時代あえて離れ、それでも社会人になって不幸にも同じ会社となったあの子



「・・・三度目・・・?あんた・・・」



息を何とか整え震える声を絞り出す



その言葉で“亜弥”は笑う


「・ふふ・・あんなラノベがヒットして私吃驚してんだから。私たちの前世と同じ内容なんてありえないじゃない?あんたが書いたのかと思うほどよ。」


「はっ?」




彼女が指先でふわりと何かを描くとあたしの体は宙に浮く

そのままどこから現れたか首の周りにロープが巻き付いた



「!?」



「どうぞ、このまま死んで・・・ね?あんた昔っから邪魔なのよ」


首に巻き付いたロープがどんどん絞まっていくのがわかる

抵抗しようとロープに手をやるが全く外れてくれない


“苦しいっ・・”


呼吸をすることができず全身で抵抗してみるがびくともしない


「あんたは“親友のリリー”の元に行く途中に輩に襲われてね、このままじゃ公爵様に嫁げないって事で人生を悲観して、此処で“自ら”この行動を起こすの」



あんたが来ない“リリー”が心配して道中、見つけたのよ。そう言いながら高笑いするフローラ



「今度こそ本当にばいばい。」


そういわれた直後、彼女の悲鳴が聞こえた

新鮮な酸素が来ない頭では意識朦朧として把握ができない









“あんたから彼をとってあげるわ。”


“どうして?”


そう言いかけたと同時に目の前の“フローラ”は落ちていく

慌てて手を伸ばす


転がり落ちたフローラは階段の下で足をさすっている

上手に受け身をとれたのかとホッとしたと同時に“ネイサン”が目の前にいた


フローラが彼の名を呼んだと同時に彼の手が腰に伸びる


「!?」


逃げようと体をひねる暇もなく目の前で剣が振られた

ドクンっと心臓が脈を乱すのがわかる

息が詰まる

呼吸の仕方がわからない

痛みが強くなる

体に力が入らず崩れ落ちたのがわかる


「・・・」


残された僅かな意識で彼の名を呼んだ気がした



“これは…ラノベの…”


違う

あたしはここまでラノベを読んでいない

読んでいないあたしが知るはずのない事

じゃあこれは…


「あ…あ"ぁ"っ……」


“私の記憶”だ。 


その瞬間、頭の中で何かが弾けるようにぷつんと切れた気がした

目の前が段々と暗くなる

息を吸っているのか吐いているのか…止まっているのかわからない

自分が座っているのか、倒れているのかわからない

今、目を開けているのだろうか?



“何もわからな…い…”


一度に溢れ出た三回もの人生の記憶が全て流れてきた


ラノベなんかじゃない。

アヴァを2回生きている事実に頭のなかの情報が溢れ処理できずにいる。




影を見つけ出し、そのままアヴァの胸元についているはずの魔石の気配を辿る

魔石だと気付いたとして、あの女より自分のほうが魔力は多い。

あの女には外すことは難しいだろう。


早く


早く


必死に辿り、古びた屋敷に辿り着く

かつては豪華絢爛だった屋敷も今は荒廃し、無残な姿となっている

色とりどり咲いていたであろう花もみる影はなく、ただ朽ちた雑草になったそれを掻き分け入る


「!?」


僅かに魔力の感覚がした


“地下か?”


入り口であろう扉も今は役目を果たしていない

窓だったと思われるそこから自らの体を押し入れ、気配を辿る


意識を集中させると彼女の姿が見えた


「あんたも転生?」


意識の中の彼女は確かにそういった

アヴァなのか、茉優なのかどちらの記憶があるのだろうか。


“記憶を…心を壊してくれるなっ!”



頼むと願いながら地下へ続く階段をひたすら駆け降りる


人が来るなど思ってもいなかったのだろう

開けっ放しになった扉の奥には女の背中が見えた

フローラとは違う髪色だ

その奥に宙に浮いた状態で苦しんでいるアヴァがいた


カッと全身の血の気が逆流する

手を伸ばしたと同時にフローラの体を炎が包み込む



「ぎゃぁぁぁっ…!?」


容姿からは想像できないような声を張り上げる女

その女の声に続いて、小さく声が聞こえたと思ったら瞳に涙を溜めたアヴァが崩れ落ちていく



「アヴァ!?」


危うく顔面を打ち付ける寸前の彼女の傍に移動し抱きとめた

何やらぶつぶつ呟いているその瞳には何も映すことはなく涙が流れ続けている


「ア…」


「ネイサン!なんてことするのよ!」


ネイサンの炎に包まれた顔面は焼け爛れた女が叫ぶ

鋭い眼光で此方を睨見つける


「…殺さなかっただけ有難く思え。お前には聞くことが山程ある。」


フンッと鼻を鳴らす


「ひっでぇ臭い。皮膚が焼ける臭いだ。」


後から入ってきた影が鼻を摘まみながら言う


「貴方の愛したフローラよ!その女が私を殺そうとしたのよ!ねぇ、ネイサン…」


醜い姿のフローラは残された力を使おうと「ネイサン」の名前を呼び録に動かぬ体を何とか動かし手を伸ばす


「1度目の様にはいかん。」


影に視線を送る

影は頷き、フローラの体に魔力抑制の手枷をつける


「何すんのよ!」


全身火傷状態で痛みを感じないレベルなのか

女は語気を強めた

ネイサンには及ばないが、魔力量はそれなりにあるのだろう

体内の傷ついた臓器を己の魔力で回復させていたのだろう

表面の肌は焼け焦げた為か白く光沢かかっているようにさえ見えた


「ルー、連れて行け。」


そう言ってまだ何か叫んでいる女を影に預けた


気になるのは表情一つ変えず呟く腕の中にいるアヴァだ



“記憶を一気に吹き込まれたか…”


手遅れだったのだろうか。

その体を抱きしめた


「ごめんね。アヴァ。守ると言ったのに…」



彼女の心は壊れてしまったのだろうか

もうその瞳に自分を映してもらうことは出来ないのだろうか


「帰ろうね。屋敷に。」


意識があるのかないのかわからないその体をそっと抱き上げ廃墟から出た







茉優が見ていたラノベと同じ事を1度目のアヴァは経験した

愛していた夫に急に嫌われ殺された


二度目の茉優として生きていたあたしは偶然にも前世と同じ内容のラノベを見つけた

でも気付かなかった

最後まで読んでいなかったし、記憶もなかったから。

愛した彼に“大事な話”を聞く約束をしてた

大して愛情表現のなかった彼だから、別れ話だと思っていた


三度目の私の人生

ラノベの内容だと信じ込んで、殺されないように動こうと頑張ってきた


全部“私”だ。

結局、捨てられるか死ぬかどちらかしかなかった私の三回もの人生


最期に願ったことは何だったのだろう


確実に…2回も死んだのか…


その瞬間“もっといきていたかった”


アヴァなのか茉優なのかわからない願いが溢れてくる

涙が零れた気がした








屋敷に戻り侍女に湯浴みと着替えを任せ自身も着替えた


あの女の始末と彼女の処置と

どちらを優先させようかと一瞬だけ頭の中で考えたが答えはすぐに出た


侍女が意識を失ったままの彼女の支度をしている間に当主専用の書庫へ入り文献を手当たり次第探すがやはり見当たらない。


はぁと深い溜息をつくと同時に


「ルー」


何処かで居るはずの影に声を掛ける

音もなくスッと現れた


「…俺、処分ちゃんと受けるよ。」



“何したりゃいい?”


「お前の処分は後だ。あの女は?」



思い出すと腸が煮えくり返る。

元の面影などまるでない“人間だったもの”を思い出す


「魔力抑制つけてるからかな。自分で回復できないから、ほぼ虫の息」


どうやらこちらが先のようだ

深い溜息をつき立ち上がる


「地下へ行く」


執事にアヴァに何か変わったことがあれば直ぐに伝えに来るよう命令し、影と共に地下牢へと向かった








読んでいただいてありがとうございます。

誤字脱字あれば優しくお声掛け下さると喜びます。

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