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行方をくらませていた勇者の真実  作者: 安藤昌益


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まず一つは解決

「これだけしか作れなかったからな。」 

 至る所で、砲弾というものが炸裂した。ダイ・タイスイの世界の産物だという。筒状の大砲というものが、奇妙な形の、砲弾というものを打ち出した。その大砲というものは、鉄の動く台車、戦車から突き出していた。自動装填だ、と意味の分からないことを彼は言ったが、とにかくひとりでに砲弾が、狙いをつけて轟音とともに打ち出されるのである。その戦車の上部から半身を出して、タイスイは長い奇妙な、やはり筒状のものを、対戦車自動ライフルを狙撃銃に使っていると言って、肩に当てながら次々に銃弾なるものを放った。魔道士の防御結界も、魔獣の硬い皮膚も、分厚い大盾を持つ兵士も貫き、指揮官、精鋭の戦士達の胸を貫いた。

 敗走した将兵や残余の軍、到着したばかりの諸隊をまとめた、寄せ集めの軍で会ったが、何とか数的優勢は確保していた。後がない状況で、タイスイに全てを託すことに皆が合意していたし、タイスイ以外に認定、自称も含め数人の勇者達がいたが、彼らは皆、タイスイの下で連携していた。タイスイの元チームを中心に、少数とはいえ核となる精鋭もいた。それだけでも、大敗した、バラバラの勇者達、指揮の大軍の連合軍より有利だった。

 大砲と対戦車ライフルで、先鋒が壊滅しただけでなく、全体の陣形が崩された中に元魔王シンカと元勇者タイスイを先頭に突入した。

「あなた様の頼みとはいえ、聞き入れることは出来ません。そのような余裕はありません。私は、仲間たちを、妻を死なせたくないのです。」

 タイスイは、突入する少し前、側近の若者二人の肩を借り、ようやく立っている、一人の若き王にすまなさそうに、後ろを振り返って告げた。若き王は、頷き、涙を流していた。側近の少年が主の、その姿を見て、敢えてもう一度試みようとしかけたが、若き王はそれを止めた。

「しかし…。」

 側近の少年達は、なおも言おうとしたが、若き王は、小さく首を振った。戦いは、ダイ・タイスイの側に有利に展開はしていた。しかし、あくまでも有利であるに過ぎない。タイスイにとっては、全てが不十分な状態で戦わざるを得なかった。各国、各部族、さらには各勇者間の対立、不統一、足の引っ張り合い、そして、その結果の無謀な出陣の結果である。数的優勢が、大幅に目減りしたのだ。手を抜けば、逆転されかねない状態なのだ。この重傷の若き王の行動も、無謀な戦いに影響していたのだ。それが、彼にはよく分かっていた。だから、もはや頼みは出来ないと思ったのである。

 とはいえ、敗残の軍を重傷の身でまとめ、ダイ・タイスイの下にまとめるにあたっては、この若き王のおかげでもある。そのことも、彼の気持ちも、タイスイは分かっていた。

「何とか、説得は試みます。しかし、お約束は出来ません。まして、命を助けるなどとは。やるか、やられるかですから。可能なら、とどめを刺すことはしないでおきます。」

 そう言って、深々と頭を下げた。

「ご配慮感謝します。勇者ダイ・タイスイ殿。勝利の報告をお待ちしております。」

 彼は、頭を下げた。

「そろいも揃って、甘ちゃんだな。」

 シンカが呆れたように、耳元で囁いた。 「申し訳ありません。」

「無理はしないで。でも、十分な働き、戦いぶりでしたよ。」

 女勇者を助けお越したタイスイは、彼女のチームの動ける者達に、彼女を後ろに下がらせるように命じた。女勇者の未練がましい視線に、シンカだけでなく、セマーナ達もにらみつけていたが、敢えて何も言わなかった。タイスイの側が圧倒的に押し気味に進んでいたが、相手側の勇者、魔王とタイスイ達の直接対決で決せざるを得ない状況だった。

「勇者殿。」

 タイスイは、皆のあきれたという視線を背中に感じながらも、最後の呼びかけを行った。

「あの時のあなたが受けた仕打ちには、同情いたします。しかし、あれを主導した、国を牛耳って、私腹を肥やしていた連中は、あの後粛正されたのです。国王陛下は、あの時は王太子殿下でしたが、敵を欺くためとはいえ、あなたへの仕打ちを許したことを後悔され、粛清が終わると直ぐに、あなたの名誉を回復し、あなたの活躍に報いたいと思い、あなたの行方を捜したのです。あなたへの領地も用意しているのです。今でも、あなたを助けることを私に懇願したのです。」

 タイスイの言葉は、彼には届かなかったようである。

「うるさい!俺には、本当の仲間が出来たんだ。彼女達と進む!」

「そいつらは。」

 反論しようとするタイスイに、

「やはり勇者相手は、嫌だろう。ここは、我に任せろ。お前様は、魔王擬きを倒してくれ。大丈夫だ。我も、強くなっておる。」

 シンカが割って入ってきた。

「この元魔王は、僕達にまかせてよ。」

 セマーナが胸を張った。が、直ぐに小声で、

「も強くなったった、どういうことだよ?」

「分からんか?やつのことじゃ。何故かは分からんが、交わる度に強くなっておる、我らは。」

「僕も強くなれるかな?」

「愛が足りないと無理ではないか?」

 誇らしげに微笑むシンカに、セマーナはにらみつけたが、そうもしている余裕はなかった。

「お前様の策も分かっておる。我らに任せろ。」

 シンカの言葉に、セマーナ達が頷いた。

「あっちは、彼女らに任せようぜ。」

 メスが、躊躇するタイスイの肩を叩いた。

「そうそう。女達に任せましょう、あっちは。」

はアーニャ。

「何で、お前がこっちに?」

 これは全員。

 


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