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行方をくらませていた勇者の真実  作者: 安藤昌益


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闇落勇者達

「魔王と勇者が?それは、こっちの奴らじゃないの?」

 セマーナが、何が何だか分からないという顔をして、周りを助けを求めるように、彼女にしては珍しい、後で、彼女が絶対認めようとしないだろう態度をとったにもかかわらず、誰もが彼女に助け船を出すどころか、何が何だか分からないという顔をしていた。

 魔界の一公国が、壊滅寸前だった。そこが、少人数だったが、勇者と魔王を有するチームの来援でもって、何とか撃退に成功した。相手側の捕虜から、彼らの軍のトップは、勇者と魔王だと言うのである。どちらも男であり、魔族が主体だが、勇者のもとにはエルフ、オーガ、オーク、ドワーフその他の部族がいたという。

 さらに、他の方向から魔族達を蹂躙して進んでいる存在が分かった。


「どっちを優先すべきかだな。」

 彼は迷った。

 人間達の同盟軍の来援、勇者達も加わっていることから、勇者と魔王の軍はそちらにまかせることにした。得たいのしれない存在に彼は元魔王と仲間達と共に当たることにした。

 人間の町が全滅していた。人間の町と言っても、魔界にある人間の町である。元々、連行された人間達が集められていたもので、当然魔族もかなりいたし、同様な境遇のエルフやドワーフ、オーガなども少なからずいた。彼らを利用しようとした魔王の政策もあり、それなりに上手くやっていた。上手くやっていたところの代表格だった。そこが見る影もない状態だった。建物は、半ば溶けたような常態で、僅かに強い魔力を持って幸運だった少数だけが脱出出来ただけということだった。前魔王の政策を守り、ここを統治していた魔公爵は、皆を護ろうとして死んだ。彼の半魔の妻、親友の人間の賢者達も彼に殉じた。生き延びた者は、涙して彼らに感謝していた。生き延びた者達は、その元凶を見てはいなかった。だからこそ生き延びたのである。

「当たって砕けるしかないか。」

 ただし、全く情報なしというわけでもなかった。戦いの前線にいた魔法騎士がいた。

「恐ろしさで腰が抜け、皆様方があっという間に消え去り、必死で逃げたわけですが。」

 不名誉この上ないという顔で語った。

 相手は一人のようだった。あくまでも、ようだったのだ。彼がいち早く逃げたからではない。

「光を纏ったようで、その光ではっきりしなくて…。ただ、長い髪で、小柄な人間の形だったような…。その光は聖なるものを感じさせるものでしたが、強い…そう恨みのような波動を感じました。そして、とてつもない魔力も感じました。皆、勝てるとは思っていませんでした。でも、領民を逃がすため…。私は…。」

 それを聞いて、誰もが考え込んだ。

「一人で、小柄で、長い髪で聖なる光を纏った、強い恨み…か。」

「ふん。まるで聖女か、聖女の勇者のようじゃの。」

「聖女が、強い恨みなんか…。僕たちハイエルフは…。」

「ハイエルフなんか、私達以上にドロドロしてるじゃないか。聖女様だって、結構ドロドロした中にいるんじゃないか?」

「まあ、そんな話しも…。」

「振らないでよ。確かにそうよ。」

「でもさ、人間に裏切られて、恨みを持った聖女様か女勇者が、魔族を襲うわけ?確かに、人間が多いところだけどさ。」

「それについてではあるがな。」

 元魔王のシンカが、ため息をつきながら割って入った。彼女が言うには、魔族も同じだという。魔王として祭り上げられ、使い捨てされた者がいたという。

「そやつらの怨念も入っていたとしてもおかしくないだろうな。」

 “そうされないようにあがいていた、今思えばな。このクソ勇者には分かっていたのかもな。”

「どちらにせよ、私が正面から挑むのが礼儀というわけだな。」

 その言葉に、皆が青ざめた。

「さすがに、お主と我とでも、かなり危ういぞ。」

 さすがに心配そうな顔だった。

「ああ、分かっているさ。お前を死なせやしない。」

「いや、そういうことではないぞ。」

「そうだよ。分からないのかい?」

「策を考えているかもしれないが、さすがに…。」

「まあ、策と言うほどではないが、ちゃんとお迎えする準備はしておくさ。手伝ってもらうがね。」

 彼は、笑顔を見せたが、皆には空元気のようにしか見えなかった。

 しかし、全力でそちらに挑むという彼の計画は、変更を余儀なくされた。魔族も含む連合軍が、もろくも大敗したからである。救援に向かうことになったからである。

「まさか、このことも予想して準備をしていたとは言わないであろうな?」

「シ…元魔王、甘いよ。こいつはそんなかわいい奴じゃないよ。わかっていないなあ。」

「まあ、一応想定して準備はしておいたが…。」

「へ?まさか。」

「本当?」

 これは、全員からの声だった。

「何か変なことを言ったか?」

 キョトンとする彼に、頭が痛そうな風を装った元女魔王は、

「まあ、そんなお前がかわいいのだが。」

と言って、痛い視線をものともせず、タイスイに体をぴったりとつけた。

「旦那は、本当に恐ろしい人だよ。あいつらより怖いよ。まあ、だから、そのだ、とにかく凄いっすよ。」

 これは、彼によって更生させられた元屑勇者だった。


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