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  32  従魔と……

「すー、はー。よし、じゃあ今から見てみるね?」

「ワフッ!」


 粘体の森から帰った翌日、ぐっすりと眠り、心と体の準備を終えたキーナは、シルバの小屋の中に居た。


(ステータス)

――――――――――――――――

名 前 キーナ

誕生年 E334/2/6

種 族 人間(ヒューマン) ♀

登 録 グラストル(エテラスル王国)

所 属 エテラスル王立総合学園

クラス なし

賞 罰 なし


状 態 好調


スキル

・【ステータス閲覧】

・【上級魔力操作】

・【中級身体操作】

・【中級計算能力】

・【上級騎乗】

・【中級温熱耐性】

・【中級寒冷耐性】

・【初級暗闇耐性】

・【魔力回復率上昇(大)】

・【疲労度軽減(中)】

・【平衡感覚上昇(中)】

・【水中姿勢制御】


・【初級棍術】


・【湯属性魔法】

 [+]


称 号

・【湯神の加護】

・【魔獣の主】

 [+]

・【大粘体討伐者】

――――――――――――――――


 まずは自らのステータスを閲覧する。


「では【魔獣の主】の項目を閲覧しますよ!」

「ワフ」




・【魔獣の主】

 [-]

  ――――――――――――――

  名 前 シルバ

  種 族 山脈狼(マウンテンズウルフ) ♂

  階 位 二

  状 態 好調


  スキル

  ・【疾駆】

  ・【壁面走行】

  ・【上級魔力操作】

  ・【上級身体操作】

  ・【上級温熱耐性】

  ・【上級寒冷耐性】

  ・【中級暗闇耐性】

  ・【気配察知】

  ・【魔力回復率上昇(大)】

  ・【疲労度軽減(大)】

  ・【平衡感覚上昇(大)】

  ・【初級言語理解】



  称 号

  ・【湯神の寵愛】

  ・【賢従魔】

  ――――――――――――――



「わー、シルバ凄いねぇ」

「ワフ?」


「そっか、【ステータス閲覧】がないから、自分では見れないんだ?

「ワフ……」


 どうやらその通りらしい。


「よし、じゃあ教えてあげるね?」

「ワフッ!」


「まずは――」


 キーナは、シルバのステータスを読み、解説をつけていく。


「種族が山脈狼(マウンテンズウルフ)になってるね。階位が二だから進化したってことでいいのかな? こんど先生にでも訊いてみるね」

「ワフ」


「それで技能(スキル)は――」


 次に、技能(スキル)についてもゆっくりと伝えていく。


「――。で、【初級言語理解】だけど、私達が話していることがだいたい判っているって事で良いのかな?」

「ワフン!」


 シルバは、そうだよ! といわんばかりに短く吠える。


「すごいねー、もふもふ~」

「ワッフワッフ」


 シルバを撫でまくるキーナ。


「ふぅ。さて、最後は称号だね」


 キーナは【湯神の寵愛】の詳細を読む。


【湯神の寵愛】:湯神によく接し、その教えや愛情を受けたものに送られる。


「これは……。もしかして、今までに湯神のお姉さんと会ってたってことかな?」

「ワフッ!」

「そっかー。そういう事だったんだねぇ」


 キーナは、シルバが時々何もない所を見て吠えたり伏せたりする場面を見かけて、不思議に思っていたのだった。


「ねえ、湯神のお姉さんは今見えてるのかな?」

「……クゥン」

「見えてない、か~。久しぶりにお話したいところなんだけどねぇ」

「ワフン」


 ここ一年弱、湯神の声を聞いていないのである。

 シルバも少し寂しそうに顔を伏せた。


「じゃあ次、【賢従魔】だね」


【賢従魔】:叡智を授かりし従魔に送られる。主人との間で、思念による簡素な意思疎通が可能。


「思念による意思疎通? ……あー、なるほど」


 思念とは? と考えたところでそのイメージが浮かんだ。


「よし、シルバ。私がいまから、喋らないで言葉を届けてみるから、届いたら反応してみてね?」

「ワフ」

「いくよー?」


 キーナは、思念を飛ばすことに挑戦する。


(シルバー、その場でクルッと回ってー)


「……?」

「あれ?」


 失敗。

 そして試行錯誤すること数回。


《シルバー、その場でクルッと回ってー》

「ワフ!? ……ワフ!」


 シルバは、その場で回転した。



「あ、出来た!」

「バフォッ!」


「じゃあシルバもやってみようか、私が伝えた感じに、そのまま返す感じにすればいいかな?」

「ワフ!」


「じゃあいくよ」

《シルバー、がんばってー》


 数秒待つが反応なし。


「………………クゥン」

「大丈夫、シルバならできるよ」


「どんどんいくよ!」

《がんばれシルバ、まけるなシルバ》


 そして、それから五十回ほど繰り返した頃だった。


《ごしゅじん、さま》

《聞こえた!》

《ごしゅじんさま! ごしゅじんさま、だいすき》


「シルバっ! 私も大好きだよっ!」


 キーナはシルバに抱きつく。


《できたよ ほめて》

「うんうん、えらいえらい」


 その後、それはそれは褒め倒したのであった。







「ふぅ、それにしてもこれ、凄い疲れるわね」

「ワフゥ《ほえる いっしょ はなす かんたん》」

「なるほどね」


 あれから何度か思念通話したのだが、その度に脳の疲労が蓄積する感じがしていたのだ。

 


「ワフ?《ときどき おはなし する いい?》」

「ええ、もちろん。わたしは普通に話せば大丈夫だからね」

「ワフ!《やった》」

「……あ、でもお話するのはみんなが居ない時にしようね? ふつうのひとは従魔とお話出来ないみたいだし」

「ワフン《わかった》」


 キーナは、見え無い存在と話しながら歩く主人公をみて、訝しげな表情で通過する人達のイメージが浮かんでいたのだ。


「よし、シルバのステータスはこんなところね」

「ワフ《はーい》」





「あ、【大粘体討伐者】も見ておこうかな」


【大粘体討伐者】:粘体に対する攻撃力に補正。粘体生物を一体生み出すことが可能。魔力属性や生成時のイメージにより変化する。


「……えっ? スライムが作れるってこと?」

「ワフン?《すらいむ つくる すごい?》」

「スライム作っても、何に使っていいのかわからないけどね?」

「ワフ《そっか》」


「でもまあ、試してみましょう」


「手の幅ぐらいのスライム生成!」


 球体のスライムを想像し、魔力を注ぐ。


《――ポーン。特殊条件により<粘体生成(スライムクリエイト)>が開放されました

《【湯神の加護】により<粘体生成(スライムクリエイト)>が<丁稚生成(でっちせいせい)>に改変されました》


(でっち?)


――プルプル……にょき。


「……なにこれ?」

「ワフン?《なんだろ》」


 目の前に生み出されたのは、スライムではなく、卵型の身体に細い手と細い足が生え、鶏冠のような突起を持ち、絵に描いたような眼と口を持つ謎の物体であった。


――ふるふる、ふるふる


 謎の生物は、なにやら伝えようと手を動かしている。


「えっと? 口を……開けたり閉めたり……しろ? あ、もしかして喋れるように作れって事?」


――ふるふるふるふる!


「ふむふむ。で、え? このくらい……のばす? ああ、もっと大きめにってことかしら?」


――ふるふるふるふる!


 シルバは、その物体をジーっと見ている。


「ワフン《すらいむ ちがう おもちゃ あそぶ いい?》」

「あ、駄目だよシルバ。これはおもちゃじゃない……よね?」


 違うよね? と首を傾げてしまうキーナ。


――ふる……ふるふる。


「だいたい判ったわ。じゃあ作り直すからね?」


――ふる。


 キーナは謎の物体に触れると、イメージし直して魔力を注ぐ。


「大きさは私の膝の高さぐらいで、口は話せるように」


 謎の物体が一旦液状になり、再び膨らんでいく。

 数秒後、三歳児ぐらいに大きくなった謎の物体が、キーナ達を見てお辞儀した。


「ア、あーあー。お、ええな」


「あ、喋った!」

「ワフッ!《しゃべったー》


「やあやあ、御主人はん。わいは丁稚スライムいいますよって。以後よろしゅう頼んますぅ。いうても雑用するぐらいしか能力ないねんけどな! わっはっは!」


「よ、よろしく?」


 キーナは状況を理解するのにまごまごしている。


「あ、名前を付けてほしいねんけども」

「はぁ、名前ねえ……」


「わくわく、わくわく」


 丁稚スライムはわくわくしている。


「んー、じゃあ…………バント……さん? で」

「ふむ、丁稚なのに番頭さん。あいわかりやした、では今からわいはバントと名乗らせて貰いますわ」

「う、うん?」


 名前が決まったようだ。


「ところで、バントはずっと出たままなのかな」


 生成したみたものの、消し方は解らなかったのだ。


「ふむ、わかりますわかります。スライムと一緒にいたら驚かれると考えてまっしゃろ? 用事がないときは小さくするか、魔石化して持ち運べる様になってんで」

「魔石化?」

「せやで、わいに”魔石化”するように命令したらええで。戻すときは”粘体化”で元通りや」

「なるほど? じゃあそろそろお出かけしないとだから、魔石化で」

「はいなー」


 丁稚スライムはするすると縮むと、卵型の魔石に変化した。


「わ、可愛い」

「ワフ《おいしそう?》」

「あ、食べたら駄目だよ?」

「ワフン《はーい》」




 丁稚スライムのバントがお供に加わった!


思念通話は片言で話すレベルだと思ってください。

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