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  24  学園祭 一日目

 学園祭初日がやって来た。

 教室では、開幕を告げる、朝の三回目の音が鳴るのを心待ちにしていた。


「まだかなー?」

「もうそろそろじゃない……?」



――♪ポンポロピンポン~ポンポロパンポン~


『只今より、第百九五回、王立学園、学園祭を、開始します』


 音が鳴り終わり、デビアスの声が響き渡ると、生徒達が一斉に動き始めた。


「始まった~~~~~!」

「じゃあ一班のみんなよろしくね~!」

「はい、行ってらっしゃい~」

「アーちゃん! レンちゃん! 急ぐよー!」

「あいさー」

「まってー!」


 生徒達は時間ごとに行動班を決め、担当班以外の生徒は他の出し物を見に行くことになっているのだ。


「さーて、どうなりますか~」


 キーナは一班の担当で、最初のお客様を迎える係であった。







『お帰りなさいませご主人様~』


 数名の生徒が教室に訪れると、お揃いの衣装に包まれた女子たちの声が響き渡る。


「うぉっ!? 可愛い!」

「ご主人様だってよ」

「なんか背中がむず痒いな」


 男子たちは視線を彷徨わせ、その雰囲気に圧倒されていた。


「この衣装可愛い~♪」

「わたしも着てみたい!」

「とにかく中には入ろうよ~」


 女子達の受けも上々の様子だ。




「本日のご用意は、こちらからお選びいただけます」


 キーナは予め用意しておいた”お品書き”を提示する。

 お品書きには、コーヒー、紅茶、栗のケーキ、チーズのケーキ、シフォンケーキの絵が描かれ、組み合わせができることが判るようになっている。


「僕はコーヒーに栗のケーキで」

「俺は紅茶にシフォンケーキ? ってやつにしようかな」

「んじゃコーヒーとチーズのケーキで。折角だし、一口ずつ味見しようぜ?」

「おう、いいぞ」

「わかったぜ」


「畏まりました、暫くお待ち下さい」


 キーナは綺麗にお辞儀をして、調理場へと向かう。



「ご注文頂きました! コーヒーが二、紅茶が一、ケーキ三種類が一です」

「承りー♪」

「わかったんだなー」


 調理担当から気持ち良い返事が帰り、トレイの上に注文の品が手際よく並べられた。


「提供よろしく~」

「はーい!」







「ご主人様方お待たせいたしました。ご注文の品でございます」


 キーナはトレイを置くと、丁寧に給仕する。


「おぉ? 美味そう!」

「すごい綺麗だねこれ」

「早く食べようぜ」


 視線はケーキに釘付けである。


「では、ごゆっくりお召し上がり下さい」


 キーナは再びお辞儀をして席を離れていった。







――♪ポンポロポンポロパーン


 昼の一回目の音が鳴った。


「ケーキが半分出たよー! 特にシフォン早めでよろしくー!」


 一班の一人が、四班のいる調理室へ報告にやって来た。


「もう!?」

「いい感じだね!」


 予想より速い減り具合に驚く四班の生徒達。


「今日のケーキ、好評みたいだよ~」

「やった!」

「腕の見せどころだぜ!」

「頑張って、どんどん追加しないとだね」

「がんばろー!」

「おー!」


 良い評判を聞いた調理班の生徒達は、さらに気合を入れて追加のケーキを焼くのであった。







「よっし、じゃあ二班の人たちよろしくね?」

「任せてちょーよ!」

「……お淑やかにしないとダメなの」

「おおっと! こほん。お任せ下さいまし」

「……背中が痒いの」

「この娘はっ」

「クスクス……」


 キーナ達一班は、今日の役割を終え、自由時間となった。


「適当に回って見ますかね? なにか美味しそうなものがあったらお昼にしましょう」

「わたしもご一緒したいのよ」

「うん、行きましょうか」


 メルティと二人、本校舎内を歩き始めた。




 廊下には様々な看板や飾り付けが目立つ。

 ほぼ例年通りの品揃えのようだ。


「出し物はあまり代わり映えしてないみたいね?

「きっと、考えるのも面倒くさいのよ」

「まあうちのクラスも喫茶店だしねぇ」

「衣装が可愛いから大丈夫なの」

「あはは、ありがと」

「どういたしましてなのよ」



「あ、やきそばがある!」

「やきそば……? 何かおいしそうなのよ!」


 六年生の教室の一つから、強烈な香りが漂っていた。


「よし、お昼は此処にしましょう!」

「賛成なのよ!」


「いらっしゃいませー!」

「やきそば二つ下さい!

「あいよー!」


 キーナ達は、久しぶりにやきそばを堪能するのであった。







 やきそばを堪能し、順に歩いて二年の区域に来た時だった。


「あ! キーナおネぇちゃん! メルティおネぇちゃん! こんにチは、でス!」

「あ、マオちゃん。はいこんにちは」

「こんにちはなのよ」


 声をかけてきたのは、”味市場(フードコート)”の喫茶店で仲良くなっていた、魔人族のマオであった。



「マオちゃんはこれからどうするの?」

「おかしのアるところを探しに行くでス」

「ふむふむ……」


 キーナがメルティの表情を伺うと、メルティはコクリと頷く。


「私達のクラスでケーキを出してるんだけど、よかった――」

「行くでス!」

「――ら……うん、行きましょうか」

「凄い食いつきなのよ」


「はヤく、いコ!」


 マオはキーナの手を掴むと急かした。


「ケーキ! ケーキ!」

 

 マオは掴んだ腕をブンブンと振る。


「ケーキは逃げないから落ち着くのよ」

「ケーキ! ケーキ!」


 しかし、マオの耳には聞こえていないようだ。







「お帰りなさいませ嬢さま方」

「可愛いお客様をお連れしたわよ~」

「おネぇさん達、とっテも可愛いでス!」


 マオは目を輝かせる。


「あらありがと。良かったら後で着てみる?」

「着テみたい、でス!」

「じゃあ、ケーキを頂いた後にね」

「はーイ!」


「かわいいお嬢様、ご注文はお決まりすか?」

「セレスティアおねぇさんもかわいい、でス!」

「えっへん」


 セレスティアは胸を張る。


「こらこら、お淑やかお淑やか」

「そだった。で、どうする?」

「ケーキを三種類とコーヒー。メルティは?」

「コーヒーでいいの」

「マオちゃんはどうする?」

「マオも、コーヒーがいいのでス!」


「承りました~。暫くお待ち下さい♪」


「わくわく、でス!」


 マオが両手を胸の前でにぎにぎしていると、すぐにケーキが運ばれ、マオの前に並べられる。



「わあぁ!」

「さ、召し上がれ♪」


「たべる、でス!」


 マオは左から順番に、栗のケーキ、チーズのケーキ、シフォンケーキと口に運んだ。


「どレも、美味シいのでス!」

「どういたしまして」

「ドれも、じぃじのお店には無い味なのでス」


 マオは次々に口へ運び、もきゅもきゅと味わっている。


「そうなんだ」

「はいでス」

「じゃあ、学園祭が終わったら、作り方を教えにいこうかしら?」

「ぜひおねがいするでス! じぃじもよろこぶでス!」

「そうだよね~、ちょくちょく食べたいもんね~」

「おー、それなら私達も気軽に食べられるようになるね!」

「それはいい考えなのよ」

「ふぅ、ごちそうさまなのでス!」


 マオはぺろりと平らげると、満足気な笑顔を振りまいた。


「どういたしまして。あ、じゃあ衣装着てみる?」

「はいでス!」







「着れたでス!」


 バンザイの格好でくるりと一回転するマオ。


「キャー可愛いー!」

「こんなお店があったら通っちゃうかも」

「わかる~」


 愛くるしいフリルエプロンドレス姿になったマオに対し、生徒達が歓喜の声を上げた。


「ここまで似合うとは思わなかったわ」

「学園祭終わったらお店で使ってもらいたいぐらいだね」

「あ、それいいかも。マオちゃん、この服、お店で使ってみない?」

「マスターも喜ぶかもよ?」

「じぃじが喜ぶでス?」

「間違いなく、ね」

「そうでスか! じゃあ、この服もらえるでス?」

「あとで、みんなが許可してくれたらだけどね?」

「はう。わかったでス! よろしくお願いするでス」


 マオは自分をぎゅっと抱く仕草をすると、手を広げて丁寧なお辞儀をした。


「ああもう、許可でも何でも出しちゃう」

「可愛いって正義よね~」


 女子達はメロメロのようだ。


「ああいう妹が欲しかったなぁ」

「妹じゃなくてもいいけどな」

「警備隊員さんこの人です!」

「ちょ、なんでだよ~!」

「くっ、ははは!」


 男子は違う意味でメロメロのようである。



 その後、マオを探しに来たマスターもめろめろになったのは言うまでも無く、ケーキの作り方に関して話も纏まったのだった。




 学園祭初日は、そんな和やかな雰囲気のまま過ぎて行った。


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