20 臨海学習 二
「にゃっふ~~~~~~~~~~!」
「いえええええ~~~~~~い!」
島まで残り五分の一の地点
ミーシャとダンテが先陣を切り、海上を疾走して行く。
「なかなか厳しいにゃ~~~! ――<氷結>」
「もうちょっと~~~!――<氷結>」
二人は交互に海面を凍らせ道を作り、それを砕きながら進んでいたのだ。
まずは足の速い二人が先行して、海棲魔獣の様子を確認するという作戦である。
この作戦は、
「……学年主任は、あの島まで”泳いで”行けとは言ってなかった気がするの」
というロッピィの発言が元となった。
それを見ていた他の生徒達も「あれだ」「その発想はなかった」などと叫び、似たような行動を始める。
「ついたにゃあああああああああ~~~~!」
「あー楽しかったー!」
上陸した二人は、一旦心を落ち着かせた後、周囲の様子を確認するために歩き始めた。
◇
「海棲魔獣も見当たらないのにゃ!」
「そうみたいだな。じゃあ皆を呼ぶよ?」
「まかせるにゃ」
確認が終わった二人は、海中で待機している仲間を呼ぶことにした。
「みんなーーー! 今なら大丈夫そうだよーーーーー!」
ダンテが浅瀬に立ち、大声でキーナ達を呼ぶ。
「わかったーーーーーーーー!」
「よっし、一気に進むわよ! アレお願い!」
セレスティアが返事を返し、キーナが合図を出す。
「任せて! ――<氷壁>っ!」
――ザッバーッ
ディアドラは、残りの九人が乗れるサイズの氷の壁を生み出し、氷壁は激しく水飛沫をあげて沈み、やがて海面に浮かび上がった。
「……よし、みんな急いで乗るんだな!」
「わかった……ってありゃ滑るぞ」
「これは厳しいんだな」
ガルザの合図で、一斉に氷に乗り込もうとするがうまく行かなかった。
「だいじょうぶ。こんな感じで……――<炎熱刻印>。……よし。これで登れるの」
ロッピィは、氷壁の縁を少しだけ残し、表面に靴の裏のような凸凹を付けるように溶かしていった。
これなら登り易くもなるし、足を踏ん張ることも出来という訳だ。
「やるじゃん!」
「これなら……よっと、乗れたんだな!」
「乗れ乗れー!」
「エミリオ、手を」
「助かるよメルティ」
他のメンバーも次々と乗り込んでいった。
「じゃあ行くよ! 落ちないように気をつけてね!」
「わかった!」
「いっけー!」
全員の準備が整うのを確認したキーナは、後方の縁に膝をあてて伏せ、両腕を海面に触れさせる。
「ひゃっ、冷たっ! っと、これでよし」
氷の冷たさに一瞬怯んだものの、体表にお湯を纏わせる事で対処した。
「衝撃に備えて! 発動まで三……二……一、――<噴流乃湯>!」
「うひょおおお!?」
「あははは! はやいはやい!」
「ちょ、ぶつかるって!」
「おまえらー! 避けろー!」
「うわぁぁぁ!?」
「こっちくんなぁぁ!」
キーナの手からは、泡を含んだ熱湯が高圧噴射され、その反動で氷壁が加速していった。
氷壁は後傾姿勢のまま海面を滑って行き、前を行く生徒達を混乱の渦に巻き込んでいた。
◇
「おー? なんか来るぞ!?」
氷壁が島の外輪に接近したその時、イオラが警告を放った。
氷壁が放つ音に惹かれたのか、海棲魔獣が群れをなして接近している様子を確認したためだ。
「あれは多分……突進海豚かな?」
「そいつらは、何であんなに群がってくるのよ!?」
デルトロが推測すると、メルティが首を傾げる。
「きっとこの氷壁の動きと、あの泡が出す音に誘われたんだと思うよ」
「ホントに~?」
「あー、それ魔獣辞典に書いてあった気がするんだな」
「よく覚えてられるね~、あたしは無理だわ」
「……これぐらいは覚えてないとだめなの」
「って、どんどん近づいてきてるよ!?」
「まずいんじゃないの!?
判断に迷う彼らを見たキーナは、その時浮かんだイメージをもとに行動に出る。
「よし、みんな島の方へ跳ばすわよ!」
「え、それはどういう――」
あと少しで浅瀬に入る地点まで来ていたキーナは、水流を出す向きを九〇度変えて氷壁を回転させ、最終的には突進海豚の来る方へと走らせた。
「――ことだって、んはー!?
「うわー!?」
「おおおおお!?」
「とんだー!」
慣性の法則に従って、キーナ以外は島の方へと放り出され、声を上げた。
「……飛びすぎたけどよし! じゃあね氷壁さん!」
キーナも遅れて氷壁を離れると、水流の勢いを使って浅瀬へと降り立った。
――キィキィ
――――キィィキィ
氷壁は突進海豚の下まで辿り着き、しばらくおもちゃにされる事となった。
――バッシャーン!
――――ドブンボシャン!
飛ばされた面々は、次々に盛大な音を立てて落水した。
「ごぼっ……けほっ……」
「寿命が縮んだんだな」
「こらー! なにすんだー!」
「あはははは! もう一回!」
「あーびっくりしたー!」
「……心臓に悪いの」
「これ面白いよ! またやってよ!」
「私は二度とごめんなのよ」
「なんか面白いことやってたのにゃ! ニャーにもやるのにゃ!」
「さっきのやつ、改良したら良い遊びになりそうだよね~」
放り出された面々は各々感想を言いつつ島に上がり、先行していた二人は面白そうだと述べた。
「ごめんごめん、あんなに飛ぶとは思わなくて」
イメージしたよりも十倍ほど放り出されたのであった。
「まぁ、海でよかったよ。傷が治るとは言っても痛いものは痛いからね」
「ごめんって。さぁ、職員さんの所に行きましょう?」
「行こう行こう~!」
その後も、やいのやいの言いつつ、記録をつけに向かう一同であった。




