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  17  きょういの成長

 あの亜竜(ワイバーン)事件が解決してからは、平穏無事に時が流れて行った。

 キーナ達は学園のカリキュラムを熟し、知識を蓄え、体力を増強し、技能(スキル)を磨いていった。


 その間、様々な行事を経験した。

 夏の臨海学習、秋の学園祭、冬の雪山合宿、春の競技大会等々。


 歳を重ねるごとに、その意味合いは移り変わり、キーナの心へ大切に刻まれていった。





「あー……、やっぱり厳しいや」


 キーナ達が五年生になり、夏の訪れを感じ始めたとある休日の午後。

 女子部屋には、残念そうな声が響いた。


「にゃにゃ。また成長してしまったのかにゃ?」


 キーナは自室のカーテンの中で、昨年の水着が着られるかどうか試していたのだが、色々と収まらなくなって居るのを確認していた。


「残念ながら、サイズが合わなくなってるみたい」


 ミーシャが尋ねると、部屋着に戻ったキーナがカーテンを開けて苦笑いを浮かべた。


「贅沢な悩みなのよ」

「……うらやましいの」

「よねー?」「……なの」


 メルティとロッピィは肩を触れ合って同調する。


「いろいろ大きくなってるからにゃ、はいらなくなるのはしかたないのにゃ」


 ミーシャは、ジト目をその山脈(ふくらみ)に向ける。


「……もっと小さいままでも良かったのに」


 キーナの身長は、すでに”小柄な大人”ある母、ベアータと遜色ない程に伸びており、女性的特徴についてもそれなりのサイズまで成長していた。


「温浴効果……恐ろしい子」


 キーナはカーテンの影に隠れ、変なポーズを付けながら呟く。

  

 この数年、女子組はキーナの<美人湯(びじんのゆ)>――※<泥溜(マッドプール)>の改変――で溜めた、ミネラル豊富な湯、通称”オンセン”に浸かっていた。

 その効果なのか、食事や運動がそうさせたのか、彼女たちの成長は随分と加速されていた。


「ニャーもオンセンに入ってるのにずるいのにゃ……」


 しかし、種族特性のせいなのか、ミーシャのそれは慎ましやかなままであった。


「てへっ?」

「ぐぬぬ……」


 ミーシャは血の涙を流しそうな表情を浮かべた。


「はいはいー! 水着新調するなら、あたしと一緒に支給所にいこーよ!」

「あ、いいですね」

「ボクもついてくよん♪」


 彼女らの様子を見ながらゴロゴロしていた、ディアドラとセレスティアが起き上がり、水着の新調に行くように誘った。

 この二人も成長が著しく、新調する必要があるのだった。




「……いってらっしゃいなの」


 兎人族のロッピィは三年生の頃から外見が変わっておらず、いかにも子供らしい印象のままだ。


「わたしはお昼寝してるのよ」


 犬系獣人族のメルティは細マッチョな体をしていた。

 紐で調整できる水着を愛用しており、新調する必要は無いのだ。



「ニャーはやけ食いしてくるにゃよ……」


 ミーシャはふらふらと部屋を出て行った。







 本校舎の南西部、中央公園に面した建物に支給所が設けられている。

 制服類のサイズ更新、学習用具の補給、その他学園に関わる物が所狭しと並べられている。


 キーナ達は、季節用品のある区画へと向かうと、あれやこれやと水着を選び始めた。

 学園には、いわゆる指定水着というものはなく、自由に選択出来る。

 それもそのはず、様々な種族が通っており、形での統一は厳しいのだ。


「キーナっち~、コレなんかどうかね~?」

「どれどれ……?」


 セレスティアが手にとって見せたのは、胸元がセクシーに大きくVの字にカットされた、ライムグリーン色のワンピースタイプの水着であった。


「……コレを着てわたしにどうしろと?」

「べっつにー? フツーににあうかなーっておもっただけデスヨー?」

「うわー、すんごい棒読み……」


 ディアドラは半目だ。


「……でもまあ、ちょっと気にはなる、ってちょっと?」

「しーちゃーく! あっそーれ、しーちゃーく!」


 セレスティアはキーナを試着室へと押し込んでいく。


「はいはい、わかったから押さないの!」







「じゃじゃーん! 着てみたよー」


 実際に着用すると、切れ込みの伸縮素材により印象も変わり、胸の露出はあまり無かった。

 全体的に健康な雰囲気を与えてくるデザインとなっていたようだ。


「んー? 着てみたら、それほどでも無かったね」

「……どれほどだと思ってたのか詳しく教えてもらおうじゃないの」


 試着姿を見ての第一声に呆れ返るキーナ。

 

「あたしは、すごくいいと思うよ♪」

「ディアドラ”は”いい子だねぇ……よしよしなでなで」

「いやあ~、それほどでもあるよ~」

「え、ボクは!?」

「……さて、演習用の水着を選ばないとっ」

「ちょっとー!? ボクはいい子じゃないとでもー!?」


 セレスティアは自分を指さしてアピールするが放置の子である。



「んんっ。さてさて、ディアドラにはこんなのが似合うんじゃない?」

「あ、それフリルが可愛い!」


 ディアドラはひと目で気に入った。


「着てみたら?」

「もちろん!」


 ディアドラは紺色のホルターネック水着を選ぶと、試着室へと入っていった。



「ねぇねぇ! ボクにも選んで欲しいなっ」

「んー? ……それじゃあ、これでいいんじゃないかな?」

「どれどれ……。ビキニかー、でもちょっと派手すぎじゃない?」

「そうかなー。色的にはあってると思うけど?」

「うーん、なんか違う感じ」


 セレスティアは難色を示す。


「……あ、うん。面倒だし、コレにしとこう」

「なになに……ってほとんど隠れないよねコレ! というか動いたら危ないよね!? なんでこんなの置いてあるの!?」


「……さすがにスリングショットはダメだと思うよ?」 


 試着を終えたディアドラは冷静につっこみを入れるのだった。


「あ、可愛い♪」

「えへへ、ありがと」


 ディアドラは満足気だ。


「あれー!?」


 トリオ漫才は暫く続いた。


 因みに支給所の水着は、業者から届くままに収められているので、誰かの趣味ということでは決して無い、無いったら無いのだ。


 なんやかんやと一通り騒ぎ、水着を選び終え支給所を出ると、夕方一回目の音が鳴り響いたのだった。


 なお、セレスティアはオレンジベースなモノキニの水着を選択した。


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