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閑話2  わたしは湯神

※湯神視点のお話です

 わたしは湯神である、名前はまだ無い――


 ――っていうか、付けない決まりなのだそうで。


 ですので”湯神”はこの世界に私しかいないんです。

 むしろ”湯神”という役割を与えられたというね。


 うん。

 名前のことを考えると、この世界に呼ばれたあの時のことを思い出しますね……。





「ここは?」


 わたしが気がついた時、真っ白な空間(?)に居ました。

 何も無いけど、何かが有る。

 そんな場所。


「神の間にようこそ。外からの魂よ」

「えっ、誰?」


 背後からの声がして、驚いて振り向いたわたしの前には、スーツ姿の老紳士が穏やかな笑みを湛えていました。


「この世界の神じゃよ。この世界では技能(スキル)神と呼ばれておる」

「スキル……しん?」


 この人は何を言っているんだろうって思いました。


「そうじゃ。因みに星神代理もやっておるぞよ」

「ほしがみ?」

「一番上の神の事じゃな」

「あ、はぁ……」


 わたしはあまりの出来事に頭がついて行きませんでした。

 神って……。



「まあそんな事より」

「ええぇ……」


 そんな事の一言で片付けてもいいんでしょうか?


「お主をここへ呼んだ理由について話さねばならん」

「あー……はい」


 そ……そうですね、確かにそれのほうが大事です。


「いいかの? 説明するとじゃな――」


 老紳士の説明を纏めると、


”現地出身の担当(しん)が数名居て、世界の管理をさせている”

”人口の増加に伴い新たに神を育てたいと思っている”

”この世界は復興段階で、外の知識を取り込み適度に発展させたい”

”加護を与えた存在が成長していく姿を見て楽しみたい”

”加護を与えた存在と共に世界を巡り、気づいたことを報告して欲しい”

”ぶっちゃけ娯楽に飢えている”


 って感じでした。

 娯楽要員ですかわたし。


「はぁ……なんとなく解りました。だけど何故わたしなのでしょう?」

「それはじゃな、神様にも交流があっての? 面白そうな魂が居ったら一つ適当に寄越してくれんか、って頼んでおいたんじゃ。そしたらお主が来た、というわけじゃな。ちなみに、返品は不可だそうじゃ」

「つまり、こちら側で選んだわけではないと?」

「うむ。完全にお任せ、出たとこ勝負じゃ――」


 お任せかーい!

 出たとこ勝負の返品不可って、まるでガチャみたいですね。

 わたしのレア度はどのくらいでしょうか。


「――なのでお主がどういう存在なのか全く知らぬ」


 なんてことをしてくれたんですか前の世界の神様は!

 前の世界の神様を見た記憶がないから怒るに怒れないですけども。


「ということで、いろいろお主のことを聞かせて貰おうかの?」

「ええ、わかりました。わたしは――」


 それから、わたしについて語っていきました。

 時間の経過はわかりませんでしたが、丸一日以上話した気がします。


「――ふむ、つまり温泉巡りの最中に滑落して死んだと?」

「ええ、その月は仕事が忙しすぎて疲労が蓄積されていたんでしょう。久々の休みに浮かれてて道を間違えるなんて……」


 ほんと、注意力散漫ってやつです。


「お主は本当にその温泉とやらが好きだったんじゃのう」

「ええ、それはもう」


 休日の殆どを温泉巡りに費やしていましたし、ジャンル別で争うテレビ番組”TV覇者”で温泉回の覇者にも輝きましたし。





「ふむ……。よし、お主は今日から湯神(ゆしん)と名乗るが良い」

「ゆしん……湯の神で湯神?」

「そうじゃ。お主には相応しかろうよ」

「はい」


 その名は、すんなりと受け入れることが出来ました。






 それからは”従神”としての修行が始まりました。

 わたし達のような立場の神をそう呼ぶそうです。

 星神が”主神”でわたし達が”従神”という感じで。

 今は星神代理の技能(スキル)神様も、もとは”従神”なんだって。


 修行は世界の歴史を学んだり、生物の情報を覚えたり。

 勿論、各種の言語なんかもマスターせねばなりませんでした。

 それから”天使”の扱い方に、魔法名簿についてのお勉強。

 ”天使”は生物の個体全てに埋め込まれた監視員のようなものらしいです。

 便利な世界ですね。





 そんなある日、技能(スキル)神様に呼ばれました。


「そろそろ地上に降りてもらおうと思うんじゃが」

「いよいよですか」


 準備は万端ですよ、たぶん。


「うむ。加護を与えるに適した子が生まれそうなんじゃ」

「それで?」


「それで、加護の内容についてなんじゃが」


 そういえば聞いてませんでしたね。


「一つ目は、お主の前の世界での知識をイメージとして焼き付けておく事。特に温泉については詳しく」

「はい」


 お任せあれ!


「それからその子の使う属性魔法を、すべて湯属性魔法に再構築するというものじゃな」

「……完全に趣味ですね?」

「半分は、じゃがな。というのも、その子の魔力が属性魔法に向いてないんじゃよ」

「向いていない?」

「おそらくそのままでは生活魔法しか使えぬであろうなぁ」

「なるほど」

「魔力の質に関しては心配はなさそうなんじゃ、勿体無いじゃろ」

「そういう事なら」


 なんとかしましょう。


「それから、湯属性魔法の魔法名に関しては、魔法名簿を見て独自に考えるように」

「えっマジで」

「マジじゃ」


 わたしは、魔法名簿の中身を思い返しつつ頭を抱えちゃいました。


「まあ、三年ほど時間が有る。ゆっくりやればよかろう」

「……はい」


 ちょっと不安ですけど、なんとかしましょう。


「では対象のもとに送ろうかの、頼んだぞ」

「はい、では行ってまいります」


 そうして、赤子のもとに送られたわたしは【湯神の加護】を授けたのでした。







 そして現在、シルバの小屋にいるわけで。


 ……キーナちゃんたちは今頃報告会の最中ですかね?



――ワッフ


 ん? 大丈夫だと思いますよ?


――ワフン


 うんうん、シルバもお手柄でしたね。


――ワフ


 ふふ。


 それにしても、後始末が大変そうな事件でしたね。

 まあ、そっちは管轄外だし何も出来ませんから放っときますけど。


 それにしても、地上に降りて六年ですか。

 加護も使いこなせて来たみたいだし、キーナちゃんの成長が楽しみねー。


 よっし、これからもどんどこサポートしちゃいますね!


――ワフン……


 え、ほどほどにしてって?


――バフッ!


 ふふ、わかったわよ。

 考えておくわ♪


※次回は一気に時が進みます、ご注意下さい。

※※活動報告を更新しました。

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