閑話2 わたしは湯神
※湯神視点のお話です
わたしは湯神である、名前はまだ無い――
――っていうか、付けない決まりなのだそうで。
ですので”湯神”はこの世界に私しかいないんです。
むしろ”湯神”という役割を与えられたというね。
うん。
名前のことを考えると、この世界に呼ばれたあの時のことを思い出しますね……。
◇
「ここは?」
わたしが気がついた時、真っ白な空間(?)に居ました。
何も無いけど、何かが有る。
そんな場所。
「神の間にようこそ。外からの魂よ」
「えっ、誰?」
背後からの声がして、驚いて振り向いたわたしの前には、スーツ姿の老紳士が穏やかな笑みを湛えていました。
「この世界の神じゃよ。この世界では技能神と呼ばれておる」
「スキル……しん?」
この人は何を言っているんだろうって思いました。
「そうじゃ。因みに星神代理もやっておるぞよ」
「ほしがみ?」
「一番上の神の事じゃな」
「あ、はぁ……」
わたしはあまりの出来事に頭がついて行きませんでした。
神って……。
「まあそんな事より」
「ええぇ……」
そんな事の一言で片付けてもいいんでしょうか?
「お主をここへ呼んだ理由について話さねばならん」
「あー……はい」
そ……そうですね、確かにそれのほうが大事です。
「いいかの? 説明するとじゃな――」
老紳士の説明を纏めると、
”現地出身の担当神が数名居て、世界の管理をさせている”
”人口の増加に伴い新たに神を育てたいと思っている”
”この世界は復興段階で、外の知識を取り込み適度に発展させたい”
”加護を与えた存在が成長していく姿を見て楽しみたい”
”加護を与えた存在と共に世界を巡り、気づいたことを報告して欲しい”
”ぶっちゃけ娯楽に飢えている”
って感じでした。
娯楽要員ですかわたし。
「はぁ……なんとなく解りました。だけど何故わたしなのでしょう?」
「それはじゃな、神様にも交流があっての? 面白そうな魂が居ったら一つ適当に寄越してくれんか、って頼んでおいたんじゃ。そしたらお主が来た、というわけじゃな。ちなみに、返品は不可だそうじゃ」
「つまり、こちら側で選んだわけではないと?」
「うむ。完全にお任せ、出たとこ勝負じゃ――」
お任せかーい!
出たとこ勝負の返品不可って、まるでガチャみたいですね。
わたしのレア度はどのくらいでしょうか。
「――なのでお主がどういう存在なのか全く知らぬ」
なんてことをしてくれたんですか前の世界の神様は!
前の世界の神様を見た記憶がないから怒るに怒れないですけども。
「ということで、いろいろお主のことを聞かせて貰おうかの?」
「ええ、わかりました。わたしは――」
それから、わたしについて語っていきました。
時間の経過はわかりませんでしたが、丸一日以上話した気がします。
「――ふむ、つまり温泉巡りの最中に滑落して死んだと?」
「ええ、その月は仕事が忙しすぎて疲労が蓄積されていたんでしょう。久々の休みに浮かれてて道を間違えるなんて……」
ほんと、注意力散漫ってやつです。
「お主は本当にその温泉とやらが好きだったんじゃのう」
「ええ、それはもう」
休日の殆どを温泉巡りに費やしていましたし、ジャンル別で争うテレビ番組”TV覇者”で温泉回の覇者にも輝きましたし。
「ふむ……。よし、お主は今日から湯神と名乗るが良い」
「ゆしん……湯の神で湯神?」
「そうじゃ。お主には相応しかろうよ」
「はい」
その名は、すんなりと受け入れることが出来ました。
◇
それからは”従神”としての修行が始まりました。
わたし達のような立場の神をそう呼ぶそうです。
星神が”主神”でわたし達が”従神”という感じで。
今は星神代理の技能神様も、もとは”従神”なんだって。
修行は世界の歴史を学んだり、生物の情報を覚えたり。
勿論、各種の言語なんかもマスターせねばなりませんでした。
それから”天使”の扱い方に、魔法名簿についてのお勉強。
”天使”は生物の個体全てに埋め込まれた監視員のようなものらしいです。
便利な世界ですね。
◇
そんなある日、技能神様に呼ばれました。
「そろそろ地上に降りてもらおうと思うんじゃが」
「いよいよですか」
準備は万端ですよ、たぶん。
「うむ。加護を与えるに適した子が生まれそうなんじゃ」
「それで?」
「それで、加護の内容についてなんじゃが」
そういえば聞いてませんでしたね。
「一つ目は、お主の前の世界での知識をイメージとして焼き付けておく事。特に温泉については詳しく」
「はい」
お任せあれ!
「それからその子の使う属性魔法を、すべて湯属性魔法に再構築するというものじゃな」
「……完全に趣味ですね?」
「半分は、じゃがな。というのも、その子の魔力が属性魔法に向いてないんじゃよ」
「向いていない?」
「おそらくそのままでは生活魔法しか使えぬであろうなぁ」
「なるほど」
「魔力の質に関しては心配はなさそうなんじゃ、勿体無いじゃろ」
「そういう事なら」
なんとかしましょう。
「それから、湯属性魔法の魔法名に関しては、魔法名簿を見て独自に考えるように」
「えっマジで」
「マジじゃ」
わたしは、魔法名簿の中身を思い返しつつ頭を抱えちゃいました。
「まあ、三年ほど時間が有る。ゆっくりやればよかろう」
「……はい」
ちょっと不安ですけど、なんとかしましょう。
「では対象のもとに送ろうかの、頼んだぞ」
「はい、では行ってまいります」
そうして、赤子のもとに送られたわたしは【湯神の加護】を授けたのでした。
◇
そして現在、シルバの小屋にいるわけで。
……キーナちゃんたちは今頃報告会の最中ですかね?
――ワッフ
ん? 大丈夫だと思いますよ?
――ワフン
うんうん、シルバもお手柄でしたね。
――ワフ
ふふ。
それにしても、後始末が大変そうな事件でしたね。
まあ、そっちは管轄外だし何も出来ませんから放っときますけど。
それにしても、地上に降りて六年ですか。
加護も使いこなせて来たみたいだし、キーナちゃんの成長が楽しみねー。
よっし、これからもどんどこサポートしちゃいますね!
――ワフン……
え、ほどほどにしてって?
――バフッ!
ふふ、わかったわよ。
考えておくわ♪
※次回は一気に時が進みます、ご注意下さい。
※※活動報告を更新しました。




