↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/41

  13  味市場(フードコート)へ

「シルバー! たっだいまー! ぎゅ~もふ~」

「ワッフ! ワフワフ」


 寮に帰るなり、シルバへと駆けつけ抱きしめる。

 シルバの尻尾は全開で揺れてる。


「……シルバさんただいまなの」

「おっす! 帰ってきたぜー!」

「ワッフワッフ!」


 シルバは、すっかり家族の一員となっていた。

 本来なら初日のようにお出迎えしたいところだったが、やはり単独で駆け回ってはいけないと釘を刺され、大人しく待っていたのである。


「シルバ、今日はね魔法のお勉強したんだよ! みてて……ほい!」

「バフォ!」


 キーナが指先から出した、リンゴ大の水の塊に目を奪われるシルバ。


「えへへー。どう? どう?」

「ワフッ」


 シルバは、すごいすごい、と言わんばかりにキーナの足に頭を擦り付ける。


「ありがとシルバ~。はい、あーん」

「ワフ」


 水の塊はシルバの大きなお口に入れられ、ごくりと飲み干されていった。



「よっし、お散歩いこっか!」

「ワフー」


「わたしもいくのよ」

「ぼくもいくー!」


「いってらー!」


 いつものように背に乗ると、犬系獣人二人をお供に連れ、お散歩という名の冒険に出発するのであった。




◇




「紅羽鶏の唐揚げ出来たてだよー!」


「新鮮な帝国滑り魚の蒲焼き弁当いかがっすかー?」

「――あら美味しそうね、いただこうかしら」

「まいどー!」


「らっしゃいー! 牛串焼きたてだよー!」

「――オヤジ、五本包んでくれ」

「はい、お買い上げー!」


「甘煮豆パン残り十六個でーす! いかがですかー?」


「連邦特産~焼き棒練り~♪ 十本買ったら一本勉強しますえー」


「そこ行くお嬢さん方! おまけするからお茶しに寄っていきな」

「――えー? どうしようかな~」「いいんじゃない?」


「魔王領名物風船烏賊(ウキイカ)の姿焼き食ってかねぇかい」



――わいわいがやがや


 キーナ達は、客引きや買い物客の声で溢れる大通りへと差し掛かっていた。


 この先は様々な飲食店や屋台が立ち並ぶ通りが扇状に連なっており、持ち帰り惣菜やお弁当、歩きながら食べられる軽食などの香り溢れている。


 王立学園都市内許認可制飲食店及び食品取引業特区、通称”味市場(フードコート)”である。

 世界各地から食材が集まり、腕に自信のある料理人が腕試しにやっては鎬を削る”食の激戦区”で、学園都市に住む者達は勿論のこと、世界各地から押し寄せる観光客の胃袋を掴んで離さないのだ。

 なお、その売上の一部は学園に寄付され、学生の食材費に充てられている。



◇



 ”味市場(フードコート)”、その学園寮区側の出入口。

 大通りの両側には小さな詰所があり、王国の紋章を着けた軽鎧姿の警備隊員が常駐している。


「そこのキミ、この先へ進むのであればその従魔から降りるように」


 キーナがシルバに乗ったまま通過しようとして注意された。


「うゆ? なんで?」

「不意のトラブルを防ぐためだよ。つまらない事で文句をいう人もいるからね」


 貴様はそんなところから見下ろして何様のつもりだ? 等である。

 長い歴史の中で色々あって以来のマナーとなったのだ。


「はーい! シルバ降りるよー」

「ワフ」


「よろしい。それから、従魔は手元からあまり離れないように」

「わかったー!」


 シルバから降りると、警備隊員に笑顔で見送られた。





「いい匂いでいっぱいだよ!」

「わたしも同じ意見なのよ」

「ねーすごいねー! あ、あれ何だろー?」


 キーナが指差したのは、外売りカウンターで客に手渡された、”円錐形の食べ物”だ。

 シルバも鼻を動かしながら注目している。



「おじちゃんこんにちは!」

「おーういらっしゃいお嬢ちゃん達。んー、服の色からすると新入生で間違いないよな?」


 キーナ達はそのカウンターに歩み寄ると元気よく挨拶をした。

 蜥蜴人族男性の店員は、少女たちの学年色を確認すると、強面でありながら優しい笑顔で頷いて確認する。


「そのとおりなのよ」

「うむうむ、よく来たね。我はザルザ、”味市場(フードコート)”で長いこと仕事をしているおじさんだよ。これから宜しくな!」


 右手をぐっと出し親指を立てると、ザルザは歓迎の言葉を送った。


「わらちはキーナ! で、この子がシルバ」

「ワフ!」

「エミリオだよ」

「メルティなの」

「そうかそうか。で、何か買っていくかい?」


 ザルザは一通りの挨拶を終えると、商売人の顔に戻る。


「えっと、さっき渡してた奴はなあに?」

「さっきの……、ああ、巻きガレットだな」

「まきガレット……?」

「こりゃぁ作ってみせたほうが早そうだな。ちょいと待ってろ」


 ザルザはそう言うと、蕎麦粉の生地をお玉で掬い、熱した鉄板に渦を巻く様に平らに垂らして行く。


「おー、まんまるなのよ」


 その一部に、生卵、塩漬け肉のスライス、チーズを乗せ暫く待つ。


「いい匂いがしてきたんだよ!」


 最後に千切った葉野菜を乗せ、二つ折りにした後、円錐形に巻き込んで完成である。


「お待ちどうさま! これがガレットだ、食べてみな」


 手持ち用の包み紙に入れてキーナに手渡された。


「いいの? いただきまーす!」


 キーナは慎重に口に入れて咀嚼する。


「あっふ! んぐ……。 おいしー!」

「だろう?」


「ぼくにもひとくちちょうだい」

「わたしもなのよ」

「ワフ!」


「いいよー、はい」


 エミリオ、メルティ、シルバの順で試食する。


「はふ、とろとろですごくおいしいよ」

「んぐ……これはすごいのよ」

「ワッフ」


 ガレットはあっという間に姿を消した。


「おう、そんなに喜んでくれると、おじさんも嬉しくなるぜ」

「ごちそうさまでした! えっと、おかね払わないと……」

「今回は試食だからお金は結構だぜ」


 キーナは学生証から支払おうとしたが止められた。


「そのかわり、新入生のみんなに宣伝しといてくれよな」

「おー…… わかったー! ありがとーザルザおじちゃん!」

「うむ。じゃあ、気をつけてな!」

「はーい!」


 キーナ達は、少し食べたことでますます食欲を刺激され、”味市場(フードコート)”の奥へと歩いて行った。

 


商店街で食べ歩きは楽しいですよね。

お財布は気にしちゃ駄目です(>ω<)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。