特大地雷物件
マリエステル王女に呼ばれて、ルルと王城を訪れる。
王城の人達は私をルルの弟子だと思っているみたい。
ルルは有名だから、わたし達が王城の中を歩いていても誰何される事はあまりない。
わざとそう見えるように同じ三角帽子をかぶったりもしている。
この王女はルルの扱い方を心得ていて、必ず面白い本を用意していたりする。
早速、本の虫さんは、本に一直線だ。
「ヘルドレス領の事だけれど、父に言って査察をいれたわ。」
いきがかり上、気になっていたので、あれから領主子息のバルハルト様の所業が収まっているのか調べてもらった。
「査察官も驚いていたわ。ありがとう教えてくれて。現場も押さえたそうよ」
どうやらまだ、なぞの儀式を続けていたらしい。
「あれは病気だそうよ。隔離して療養するようにしたらしいわ」
バルハルト様と直接会った事がないので、どういう方かは知らないけれど、それで死霊狼などが生まれる下地がなくなれば、領民の人達も安心だろう。それに何よりもあれは気味が悪い、不快だ。
「非合法奴隷を購入したり人を浚おうとしてたらしいの。恐ろしい事だわ。良くない勢力に取り込まれそうになっていたそうだし」
…進行してました。未遂でよかった!邪教化するところでした!
「親である伯爵は家庭に無関心で知らなかったらしいわ。査察官にたっぷり絞られたから心を入れ替えると誓ったらしいけど、心配ね」
今まで、わが子の所業に見て見ぬふりをしてきた親だ、どこまで反省したことやら。
「よくない勢力の方は?」
「寸でのところで逃げられたみたい。」
「買われた人達は…」
「多くは他国の人達なので、迷惑料を伯爵に請求して、そのお金で国に帰ってもらうつもりだけれど、問題は帰る宛てのない人達が多い事よね」
マリエステル王女はほぅとため息をついた。
「どうもしてやれないのが、心苦しいわ。物心ついてからずっと奴隷だった人とかいるのよ。ご両親の事とか生まれとかまるで覚えていないのですって。いきなりこの国に放り出されてもどうしていいのかわからないから、奴隷のままでいさせて欲しいとか、憐れだわ」
「…魔法の才がある者なら何人かは引き受ける」
ルルがいうので、私も遊園地で働く気のある人を何人かは引き受けようと思う。
「助かるわ、体力のある若者はすぐに引き取り手が見つかったのだけれど、そうでない人はね、なかなか」
保護したものの見放す訳にもいかず、マリエステル王女は困っていたようだ。
マリエステル王女の騎士に案内されて保護された人達に会う。
途中で神官とシスターと合流した。
あのそばかすのシスターだった。彼女は私に気が付いて小さく手をふってくれたので私も笑顔で軽く会釈をする。…何だか縁があるなぁ。
騎士が神官の耳元で耳打ちすると、彼は私達に笑顔をむけてくれた。
「あなたの善行に神の目があらん事を」
そう言って小さく胸元で祝福を与えるしぐさをしているところを見ると、わたし達の事を引き取り手だと告げられたのだろう。
ルルと私は軽く会釈をし、彼らの後ろを歩いてついていく。
いくつもいくつも、騎士達の護る門をすぎ、王城からかなり離れた建物まで移動する。
彼らは騎士塔の中に保護されていた。
元は牢なのかなと思う部屋に、それでも寝心地が良いようにクッションや厚手の布が敷かれ、彼らは清潔そうな衣服をまとい、おもいおもいに寛いでいた。
傍でとても体格のよい初老の人達と、違う制服の中年と青年、それに文官の制服を着たひょろりとした青年が佇み、何事か書類を見ながら元奴隷だった人達、ひとりひとりを確認しているようだ。
体格のよい初老の人達は、私を案内してきた騎士を見ると笑顔になって手をあげた。反対に私達を案内してきた騎士は緊張して背筋がのびたようだ。
「姫様付きになったか。出世したな」
「はっ!ご健勝なようで何よりであります」
「その話し方はよせやい。もう俺達は退役したんだ。単なる一介の世話焼きのじじぃだよ」
そのやりとりからいって、初老の男達は姫様のファンである退役騎士の中でも マリエステル様の私兵というべき立場の人達なのだろう。
違う制服の二人は、制服が見た事がある。ヘルドレス領の騎士だ。騎士といっても護民官のような治安担当の人達だと思う。
最後に文官の人だけど、あれ?この人記憶のどっかにひっかかる。何だろう。
「担当官のケインです。だいたい終わりましたよ。とはいえ、何かわかる事があった訳ではありませんが」
組織の人間は寸でのところで取り逃がしたと聞いた。本人が記憶していなければ、どこで浚われたのか、どこで買われたのか自分の出自についてわからないだろう。
「この人とこの子を引き取る。」
ルルはさっさと引き取る人を決めたようだった。
ルルが選んだのは痩せこけたおじさんと女の子で、二人はヘルドレス領の騎士から、袋に入った着替え一式を受け取るとルルの側に寄った。
魔法の才脳のある人を選ぶって言ってたわよね。
私は好奇心から鑑定をかけた。
名前:アトレー
年齢:35歳
性別:男
身体状況:不良
隷属化(主により放棄のため隷属先一時的に不明)
魔法適正:大
職業:奴隷▼
(ペレント村の樵グフタスとティランの娼婦マリア(両者とも死亡)の息子)
え????
名前:ロレーヌ
年齢:9
性別:女
身体状況:やや不良
隷属化(主により放棄のため隷属先一時的に不明)
魔法適正:特大
職業:奴隷▼
(元村娘、アンヌ村農民ダンデ(死亡)とミリアの娘)
見えちゃってますけど。どこ出身か。▼のところを意識したら見えちゃったんですけど。
「あの、リストください。それと行き先が決まった人も、一応見させてください」
私が引き取りたい人を選ぶために必要なのかとケインさんが私にリストを渡して見せてくれる。
そのリストに見えた情報を書きくわえていく。
そして見つけちゃいました、特大の地雷人物を…。
すでに引き取り先の見つかった人達の間に一人
名前:エディー・マグヌス・エンジェバーレン
年齢:12
性別:男
身体状況:やや不良
呪い(視力低下)(思考速度遅延)
隷属化(主不明)
魔法適正:中(劣化値)
職業:奴隷▼
(エンジェバーレン公爵(隣国の大物貴族)と愛妾メリンダ(死亡)との間の息子)
この子、城の下働きになるようになってたけど、だめだよ、そういう所で働かせるべき血統じゃないよ…。ジュニアに言って押し付けよう。そうしよう。貴族のことは貴族にまかせるべきだよね?年齢も近いし!!
もしややこしい事になるようだったら、うちの遊園地で切符のもぎりをしてもらえればいいし!
レオに言って、手に職つけるために魔道具づくりを教えて一般人として生活できるようにしてもいいし!
「この子の目は私が治せると思うので引き取らせてください!」
ルル様のために、独自ルートで調べましたと大嘘を言って追加情報を書きくわえたリストをケインさんに返す。
もちろんエディの欄には何も書き加えなかった。
他にも書くに書けない出自の人がいたし…。 目立たないと思う。




