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看板娘、頑張る  作者: 相川イナホ
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ちょっとだけ寂しい

 お店が広くなって、食事だけではなく、魔道具や薬も扱うようになったので、なかなか忙しい。

 父と私は相談して人を雇う事にした。


 するとマリエステル王女から、物言いが。


 どうやらフィリップ殿下と姉の事が耳に入ったらしい。

 ジュニアあたりがゲロったんだろうな。


 元騎士だったという、人達が派遣されてきた。

 いわゆる紐つき…ていう奴です。

 

 それにお姉さんも派遣されてきました。

 この人達がリナリーとフレッドと姉達を守る王家の護り手のようです。

 アリオスを見ても顔を赤くするなどの反応がないのはさすがです。

 そういう訓練を受けているのかな。

 

 ローテーションを組んでさりげなく姉一家とついでに私達を守ってくれるつもりのようです。

 でも、へらへら笑ってるただの飯屋の看板娘ですが、多分私の方がつおい。


 そしてフィリップ殿下からも遅まきながら養育費が入るようになって親子でほそぼそと営業していたはずの「カモメ亭」はなかなかと大きなお店にチェンジし、気がつけば私は使用人の皆さまから「お嬢様」とか呼ばれるように。

 いえ、柄じゃないですから。ほんとヤメテ。


 なんかフィリップ殿下、姉を第なんちゃら夫人にするために、実家である我々の家をそこそこ大きな「商家」にしたいみたい。

 ただの飯屋の娘じゃ、本来は近くにも寄れないだろうからね。

 今のままではお妾さんとして周囲に認知されるのも大変なんだろうなぁとは思えるけど。

 現状では子どもまで生ましてる訳だし。

 

 姉に貴族家の、この国最高峰の血筋の家の人と寄り添える覚悟はあるのかなぁ。

 いつもの語尾の伸びた何にも考えてなさそうな話し方を聞いてると、大丈夫かなぁ?と心配になる。

 出奔しちゃった私の実の母に頼んで貴族家に養子にしてもらう方が話が早そうな気もするけど。

 おそらく、貴族家の勢力図とか思惑とか関係しているのかな、それをしないのって。

 私としても、あの母に借りを作りたくはないからいいけど。

 

 父を勝手に見限って出ていった母に頼りたくはない。

 でも、リナリーやフレッドの為だったら、頭を下げれるかも?

 プライドと愛を天秤にかけると苦しいところだ。

 


 まぁでも姉達の事は姉達が考えればいいし、私としてはリナリーもフレッドも無理して貴族にならなくてもいいと思う。父も稼ぐし、私も稼ぐし、人外達も稼ぐし。生活なら何とかなるんじゃないかなぁ。


 贅沢三昧するわけでも放蕩する訳でもないし、これで家業がポシャったら、まぁその場合は冒険者家業をすればいい訳だし。

 食べていくには困らないだろう。

 と、すればそんなにガツガツ商売気ださなくてもいいのかなと思ったり。

 2年と半年後のゲーム開始の日を楽しみに爪を研ぎ、実力と余裕を蓄える、それが目標かな。

 魔王、魔物の方だけど、それが復活するというのはゲームの通りだろうし。

 それには油断しないで備えていくつもりだけど。

 


 店を大きくしたので人を雇ったら、私と父が暇になってしまった。

 これはいわゆる現場から押し出されたという現象かな。

 夢中で人を育ててたら、育った人達がまた下の人達を育て、というサイクルが出来てきたように思う。

 



  暇な時に郊外に広い土地を買ったのでちょっとした遊園地などを作ってみたりして。

 ほらメリーゴーランドとか観覧車とか。

  庶民的なブランコとか滑り台だとかもこの世界にないんだもの。

 リナリーに喜んでほしくて作ってしまったけど、これがけっこう盛り上がっている。

 旅芸人の人達から、ぜひここで興業をさせてほしいといった依頼もあったりで面白い。

 人が集まるところに人って集まるんだねぇ。

  

  それにこの世界の人達って結構娯楽に飢えてるみたい。

 たしかに、グレイブと付き合っていた頃ってデートで行くとこなかったものねー。

 町はずれのちょっとした丘でピクニックとか、市場をぶらぶらしたりとか、それはそれで楽しかったけれど。

 あ、思い出すと胸が痛む。

 しくりと胸が痛む。


 はぁ~、こういうのやなんだよなぁ。

 揺り戻しっていうか、大丈夫だと思ってもふいうちで気持ちが戻っちゃうの。



 寂しいな。

 何かしていないとふと空虚な気持ちになる。

 家族もいて、可愛い甥姪がいて、頼もしい人外もいて。

 仕事もあるし、いろんな能力も使えるようになったけれど。

 私の心の欠片はグレイブが持っていっちゃったから。


 いつか私の欠けた部分は何かで埋められてしまうのだろうか。

 それとも痛みに鈍感になって気がつかなくなるのかな。  

 たしかに前ほどはきつくはないけど。

 寂しいね。

 寂しいよ。


 グレイブは、少しは同じ気持ちを持ってくれているのかな。

 全然そんなの関係なく、生活してるのかな。

 どうして、私の前に現れるのだろう。


もう何とも思っていないのかな。

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