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看板娘、頑張る  作者: 相川イナホ
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さて、いっくよー

「はぁ…すっきり」

「アリオス様、御髪たてがみを」

「む。まかせた」

「満腹ぅ。」


 アリオスはエリオールに襟足のところで髪を括ってもらっている。

 ニュイはお腹を撫でているし…。


 「……」


 まぁ、五月蠅くは言うまい。彼らを一方的に私の事情につきあわせている訳だし。

 これが終わったら、彼らを自由にしてあげてもいいのかもしれない。

 私は一人で立ち向かえる事などできない臆病者だから。

 

 というか、平常時において、こいつらどう扱えばいいの?


 「さて、戦局はどうなっておるのだ?」


 アリオスの言葉に眼下を見る。


 「そろそろ出番のようですね」


 エリオールの言葉に皆、それぞれの装備を確認する。

 準備は万端という訳ね。


 「さぁ、いっくよー」


 ニュイの掛け声で、わたし達は戦場に跳んだ。


 


 オーガ達に冒険者達が蹴散らされる。そこへ王国の兵達が盾をもって割り込む。


 「ありがてぇ!」


 「今のうちに立て直しを!」


 「よーし回復薬を使え!一旦下がって体勢を整えるぞ」


 「剣を替えろ!魔力回復薬を魔法使いに飲ませろ!」


 盾の集団はオーガ達をその盾で押しとどめる。後方から炎のついた矢が飛んできて、オーガ達をひるませる。

 

 が、その時 ドシーンという大きな大きな物音とともに森の木々が揺れ、見上げるような大きな生物達が姿を現した。


 「でたわね。トロールだわ」


 ゲームのオープニングではわからなかった。

 トロールは森の奥から現れたのではない。

 いきなり現れた魔法陣から湧いてでたのだ。


 「呼び寄せた奴がいたのね。魔物の王の配下の仕業?」

 「近すぎるよ?あれでは被害が大きすぎる」


 一旦後衛に下がった冒険者達はともかく、盾でオーガ達を足止めしている兵達がトロール達においつかれる。


 「間を割るわ。できるだけ離さないと!」


 「まかせて」


 ニュイの再転移で、わたし達はオーガ達の背後から襲いかかった。


 盾をしまったアリオスとエリオールは、斬る、斬る、斬りまくる。


 そこへレオが魔法で電撃をかける。


 私は私で飛び道具で応戦。


 いやいや、あんな怖い魔物の傍になんて寄れませんよ。


 私達に背後から襲われてオーガ達は後ろを振り返った。


 そこで転移。


 オーガの目にはトロールの群れ。


 やりやがったなとばかりに味方であるはずのトロールに飛びかかるオーガ達。


 「今のうちに!」


 更に転移してニュイに兵の中の隊長らしき人の耳元で囁いてもらう。


 「た、たいきゃくー!戻れ戻れ!!」


 隊長さんらしき人は びっくりして左右をキョロキョロ見たけど、すぐに指示を出してくれた。


 「将軍は…大丈夫のようね」


 私はミレニア将軍の安否を確認した。


 ゲームだといきなりトロールが出現して、現場が混乱したどさくさに、将軍はオーガの一匹に襲われ、助けに飛び込んだ銀髪騎士のイザーク様は深手を負うのだ。


 ところが、ゲームではいなかったダフネ様がそれに気がついて、オーガを斬り付け、イザーク様が弓矢でそのオーガの頭を打ちぬいていた。


 「姉上!」

 「イザーク、よくやったわ」


 「二人とも、よくやった。兵をいそぎ退却させる!我に続け!」


 「「はっ」」


 混乱を立て直して、将軍たちは兵を退却させる行動に移った。


 仲間割れで混乱したのは一瞬の事で、トロール達はオーガ達を蹴散らすと退却する兵を追いかける。


 「よーし踏み抜け!踏み抜け!」



 私の祈りが通じたかのように、トロール達がしかけを踏み抜いた。


 とたんに臭う、強いアルコールの臭い。


 トロールさえも酔うというドワーフ特製「トロール殺し」その臭いにトロール達は埋まっていた樽に群がり掘り起こそうとする。中には土に染み込んだ酒を土ごと口にするトロールもいる。


 「召喚陣を消すのよ!」


 アリオス達にはトロールが呼び出された召喚陣を壊して消してもらう。


 「レオ!ある程度トロール達をホイホイしたら。炎で!」



 「「心得た!」」


 「ご主人様、まかせて!ホイホイの意味がわからないけど!」


 「トロール達が集まったらって意味よ!ニュイは召喚陣まで皆を運んで!」

 

 「わかったよ。ご主人サマ!」

 

 「私はなるだけ魔物を間引くわ!」


 私は扇を取り出そうとしてやめた。せっかくだからアレを使ってみる。


 「レオの前のご主人様って何者だったのかしら」


 取り出したのは、肩に担ぐ形のバズーカ―である。この時代のこの世界にはない物。オーバーテクノロジーである。


 「遠距離からだったら大丈夫なんだからっ」


 剣技スキルも持っていて、問題なく発動するんだけど、ちょっと腰がひけちゃう私である。

 出来るだけ遠くから攻撃をしかけたい。


 「身体強化をかけて…狙って…」


 引き金に指をかける。身体強化をかけていなかったら肩がはずれていたかもしれない反動とともに、弾が打ち出される。


 トロールの見た目はどうみても恐ろしげな怪物である。私は思ったより冷静に照準を搾れたようだった。


   ズンッ


 まだ、兵を追っていたトロールの脇腹に着弾する。


 緑の血しぶきをあげ、トロールがふっとぶ。


 「かぃか…ん、とはいかないわね。グロ…」


 あとは、無我夢中で、動く魔物を打ちまくった。


「死ね死ね死ね、シネシね…倒れろ倒れろ倒れろ!」


 



 「…!ご主人さまっ、もう、終わりました!!」


 どれくらい、そうして討ちまくっていたのか。レオの手が私の引きがねを引く手に重ねられて、私は我に返った。


 レオの放った炎の魔法がトロール殺しに引火し、トロール達は炎に包まれていた。


 「…魔法陣、壊し終わりました」


 アリオス達もニュイに連れられて帰ってきた。


 「…けが人を助けましょう」


 ニュイの転移で戦場を縦横無尽に移動しながら、怪我をした人達にポーションを飲ませたり、意識のある人にはポーション瓶を押し付ける。


 この行為が後に、「ベローニウォールの神の使徒降臨事件」として語り継がれる事になる。

 たしかに、アリオスは神々しいほどの美貌の持ち主だけれども!馬なので!

 単なる人に擬態した馬なので!

 そして、その場に私もいたんですけど!薬作ったの私なんですけど!!



 「私達が始末できなかったトロールも軍と冒険者達によって倒されたとのことだし。帰ろう…。

将軍も銀髪騎士様もダフネ様も無事のようだし」


 もう戦闘隠密看板娘などという者は必要ないのだ。

 そんな者、いなくていい。

 平和、になった訳ではないけど、大きな悲劇は回避されたと思う。


 「帰ろう、父さんも姉さまもきっと心配してる」


 「「わが主殿、我々の帰る場所は一緒です」」


 「あなた達がそれでいいのならいいけど…」


 私はふと憂鬱な気分に襲われた。


 「そうか、私は幼馴染に婚約を破棄されてNTRた単なる看板娘に戻るのか」


 現実はなかなか厳しかった。


 



 


 


 


 


 


 


 

 





 


 


 


 




 


   

 

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