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看板娘、頑張る  作者: 相川イナホ
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仕掛けを頑張る


 「ここがあのゲームでのオープニングの現場になるのね」


 魔物の活性時期というのはどういうわけか10年に一度あたりのスパンであるらしく、その度に王都では討伐隊が編成され、この辺境の地へ派遣されている。

 ところが、ここ数年は何百年というスパンで考えると王種が誕生する年まわりでもあるらしい。

 ※マリエステル王女情報。


 アリオスもバトルホースという種族の王種なので、それでなのか、と納得。


 ちなみに魔族の王も存在するけど、そっちは魔族の王という訳で魔物の王とは区別される。魔王という言葉を使うとどっちもあてはまるので混乱するよね。


 魔族は人間の国には不干渉だ。太古に交流して嫌な目にあったかららしい。

 精霊族も獣人族もあまり人間が好きではないらしくそれぞれの領分に引きこもっているらしい。

 まぁそれぞれ違う大陸にすんでいるから別に交流しようと思わなければ出会う事もなく、出会わなければトラブルなども起きようがない。

 逆にいい影響もお互いに与えあえないって事なんだけど。

 

 それぞれに魔物の脅威は同じようにあるんだから共闘すればいいのに、それぞれの大陸で完結しちゃって没交渉のようだ。


 あれ?人族って他種族の皆さんから嫌われてるんじゃ?

 えー。やだなぁ、なんかそれって、何かがっかり。

 過去に何しちゃったのよ…。


 話はそれたけれど、魔物の王種が同族を率いると脅威の割合が高まる。

 戦略をめぐらし、連携をとるようになるかららしいけどね。

つまりは手ごわい相手という訳になる。


 この戦いで、ゲーム通りに負ければ、国は大損害を受けその影響は庶民ほど酷い様相になる。

 ゲームでは、国政の荒れから賊が蔓延り、犯罪や悲劇が多発していた。

 特に前世の私の押しである、イザーク様をはじめとするミレニア家の悲劇は、どうにか回避させてあげたいと思う。

 だから、どうにか出来そうならどうにかしてみたい。

 そう思ってこの計画をたててみたけれど。

 出来るかなぁ。不安がよぎる。

 

 私達は、アリオスに、見張りを頼んだティルダ少年たちと別れ、仕掛けを作る事にした。


 慎重に取り出したる樽入りのトロール殺し。

 これにあるものを加えて…と。


 「調合!っとよし」


 薬師スキル取っておいてよかったわー。錬金スキルとの相性もいいし。


 そして準備のととのった樽を次々と地面に埋める。


 トロールの体重って約2~3t?いやトロールの重さなんて計った事ないし、わからないけどゴブリンやオークあたりが踏んでも抜けない程度の強度を設定。

 でも、トロールなら確実に踏み抜くはずだ。


 踏み抜けば、中身は「トロール殺し」である。

 これは、ドワーフどころかトロールさえもへべれけに酔わせるという、めちゃくちゃ強いお酒だ。

 人間様は薄めて薄めて飲むが彼らには大奮発して原液を樽ごと用意しました。

 しかも、お酒は彼らの好物だ。

 これが私の用意した秘密兵器。

 これを用意するために、大枚はたいたのよね。


 トロールはあまり頭のよい魔物じゃない。

 目先の事に気をとられると、目的を忘れる事なんかしょっちゅうあるらしい。

 今回は好物のお酒で足止めをし、さらに酔いつぶれてくれたらいいなぁと思って作戦たててみた。


 うまくいけばいいけど。


 あとはニュイに命じて根を下ろさせる。

 これをしておけばここが戦場となっても影移動で安全に移動できるはず。


 普段はこの辺まで冒険者が立ち入るエリアだ。

 地元民に被害を与えては申し訳ないので出来る事を出来るだけする事にした。

 それこそ落とし穴だとか虎バサミとかしかけたい所だけど、ちょっとそれは危険すぎる。


 それにトロール殺しでトロールを足止め出来れば、勝機も増すはずだ。

 あとは高慢高飛車令嬢の装備のあの扇で、遠くから援護射撃をして加勢しよう。

 それでも足りない時には範囲魔法でと覚悟を決めた。


 だいたいの地形と、ニュイによる位置取りを確認してティルダ少年たちと合流する。

 見れば、ティルダ少年達の他にも冒険者たちが一緒にいるようだ。


 近づいてみて、私は息を飲んだ。


「ゴブリンの虜から助けだしたんだ。アリオスさんが手伝ってくれて助かった」


 「……」


 自分達でも戦って逃げ出せたという、その冒険者達は20人程。

 どう見ても、街に戻って処置していたのでは間に合いそうもなかった。

 私の視界の中のマップには冒険者の数と同数の光る敵マーカー。


 古今東西、ゴブリンの虜となれば、予想がつく事態。


 「私は薬師です。ここで処理をしましょう」


 まだ腹も膨らんですらいない、今なら間に合う。


 

 ゴブリンの繁殖方法は他の生命体への幼生の植え付けである。植え付けられた生き物は生きたまま、身体を中から食われる。


しかも、麻酔のような成分を分泌するらしく、死の直前まで宿主は中から食われているのに痛みを感じない。


 やがて幼体として成長したゴブリンが腹を割って出てきて、宿主は死ぬ。


 そうなる前に教会では魔物にとって不快な魔力を流し、幼生のうちに宿主の中で殺し、ヒールで損傷部分を治す。

 やがてその幼生だったものは、身体の外へ排泄物とともに排出されるが薬でも似たような処置はできるのだ。


 まずは身体の中のゴブリンの幼生を殺さないと。


 「吐き気や腹下しをしますが、死ぬよりは苦しくありません」


 私は急きょ錬成した薬を皆に配った。


 「街に戻ったら神殿でみてもらってください」


 材料費がかかる薬だが、ここで投与しなければ、彼ら、彼女らの命はないかもしれない。


 そして、まるでトロイの木馬じゃないか。


 魔物を身の内に宿した冒険者が塀の内側へ入る。


 治療が間に合えばいいけど、もしうっかりと中でゴブリンが宿主から孵って幼体が逃げのびたとしたら。


 塀の内側からも危機はやってくることになる。


 魔物が意図的に考えてした事だとしたら、恐ろしい。


 

 そして私的には薬師ギルドでの薬の錬成の試験に、その薬の錬成があった事が功を得た。


 「出来上がった薬を持ち歩いていてよかった…」


 何でもかんでもストレージに放りこんでいるのは悪癖かなぁと思っていたのだけど、今回はそれで助かった。


 ティルダ達の姉貴分の冒険者も、どうやら助けられたようだ。

 ゴブリンの虜囚になるなどとショックな事だったと思うけれど。


 「体調が戻り次第、クソゴブリン共は殲滅してやる」


 気炎をあげているところを見ると、心は折れていないらしい。


 ちなみに神殿での治療もめっちゃ高い。


 冒険者へ復帰後も、大変そうだ。


 それについては助けてはあげられそうもないけれど。




 


 




 





 

 

 

 




 

 

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