要塞都市ベローニ
ベローニウォール要塞都市。
諸貴族領をいくつかはさんだ、アステルガ国の最北端ベローニ辺境伯様が統治する辺境伯領の要塞都市で、魔物の多くが住んでいる領域からわが国を守っている壁を持つ。
ここが第一の壁だが、もうひとつ内側のヘルドラン城壁のあたりまでゲーム開始時には魔物の領域が広がっていた。
私は賑わっている街を複雑な思いをして歩いていた。
脳裏には崩れた建物や魔物が徘徊するゲームでの場面が浮かぶが、今私の歩いている街では営みが活発に営まれ、人々の顔に暗さはない。
この喧噪が、人々の営みが、3年後には蹂躙されつくして廃墟を晒すのみとなるのだ。
「信じられないけど、これは現実に起こりうる事なんだよね」
魔物討伐隊の後続隊を追い抜いて、ベローニ近郊に差し掛かった時に、私は魔物討伐隊がこの地で敗北した原因の一旦を知った。
街道を横切る形で張られたロープ。左右の森に潜んでいた隣国の弓兵や傭兵達。檻に入れられた魔物や伏せられた召喚士達。さらに先には落とし穴と罠がてんこもりの状態だったのだ。
おそらく後続隊がここで急襲を受けたために、先発隊と合流が出来なかったことも敗因なんだろう。
もちろんロープはレオが気がついてエリオールが蹴爪で切り裂き、人化したアリオスが剣と鞭を使って無双した。
馬って蹴爪あったの?そこが私にとってすごく疑問だったけど!
バトルホースにはあるよ?との本人達の情報で納得せざるを得なくなった。
もちろん、私も魔王四天王のひとりとならやりあえる位、レベルをあげていたので頑張りましたよ。
とはいえ、刃物が怖いので範囲魔法でちょっと森ごと消えて頂いただけですけど。
罠を解除する時間がなかったので、落とし穴の周辺には錬金で作成したパイロンを並べて、危険入るな!
と書いてきたので大丈夫でしょう。
周囲の森も焼けて街道が広がったので迂回路も問題ないと思う。
死体とかも焼却処分になったのでアンデット化もしないでしょう。
街道に置かれたパイロンがなかなかシュールだけど実利だよね実利。
そうして私はキラキラの目立つアリオスにはフルフェイスの全身鎧をきせ、ベローニ辺境要塞都市に入ったのだった。
ちなみに先発隊の方もさくっと追い抜いております。
先発隊は大所帯なため、足が遅いのだ。
全員人間の姿で宿に泊まりたいとの主張だったので、今回は皆人化しているので、一見は冒険者のパーティのように見えるだろう。
この世界の人は、一見して職業がわかるような恰好をしているけどそれって対策されやすくないかなぁと思いつつ、とりあえず、王都で仕入れた物で仮装だ。
ニュイが斥候、レオが魔法使い、アリオスとエリオールは盾職と剣士で、私は弓を背にした薬師見習いだ。
え?おかしいかな?最期の。
例の扇もちゃんと装備してあるよ。
いや、だってね同じ飛び道具なら扇の方が楽なんだもの。
弓はカムフラージュよ、カムフラージュ。
この辺境の地のギルドなら、身分証を作るのが緩いらしいとの情報も得たので、ここで皆のギルドカードを作る。
街へ出入りするたびに入街料とか取られるのもこれで最後だ。
とはいえ、わたし達は暗闇に紛れて、どこにでも入りこめるんだけど。
「♪」
人外達は冒険者ギルドへ登録へ。
なんかやたら楽しそうな後ろ姿だ。
グレイブに冒険者ギルドでの階級の上げ方や依頼の受注の仕方を聞いていたから、人外達にはそれに沿って行動してもらう。
私は薬師ギルドへ試験を受けに。
まぁ一応薬師資格を取らないと、何かで尋問された時とかに裏がとれないからね。
「師は誰じゃ?」
「錬金術師でもあるキリアン・ジョエル様です」
「どこのギルドじゃ?」
「最後は王都で生活してました」
「そうか、亡くなったのか」
「はい。それからは師の残した本とかで勉強しました!」
レオの元の主であるキリアン氏は錬金術師の他に薬師免許を持っていたため名前を使わせてもらった。
あとは10種類位の代表的な薬の調合試験を実際にして見せて、薬の知識を質疑で答えて終了。
薬師のギルドカードを手にする事が出来た。
「これお願いします」
その足で冒険者ギルドへ行き、依頼を出す。
ひとつはカモメ亭へ帰宅が遅くなるとの連絡の手紙の配達、もうひとつは薬草採集の依頼だ。
これを冒険者になったばかりのレオ達に受けてもらう。
思ったとおりに首尾よくいろいろ進んだのでニコニコ顔が止まらない。
何故こんなにまどろっこしい事をしたかといえば、壁の向こう側へ怪しまれないように出るためである。
普通、冒険者になったばかりの物は壁の向こう側へいきなり出たりしない。
でも依頼ならありえる。
今回私が用事があるのは壁の向こう側、これから、魔物討伐隊の先発と魔物側が死闘を繰り広げるだろう場所、そこである。
そして、先発隊がベローニウォールに近づいている現在、悠長な事をしていたら下調べをしたり工作をしたりするする時間がなくなってしまう。
ふふんふんふーん
思わず鼻歌が出てしまう。
ギルドの掲示板に受付嬢が私の依頼を貼り出す。
「その依頼もらったァ」
レオと同時にもうひとりの手が私の依頼書に伸ばされていた。
「おりょ」




