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看板娘、頑張る  作者: 相川イナホ
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彼女との出会い

 グレイブ達は明日から王都方面へ護衛の仕事で出向くというおばさん情報があるので暫くは嫌味攻撃から開放される。

 でも、ごはんを食べる姉たち親子の横で、私はしょんぼりしていた。


「玉の輿、玉の輿って言って騒いでたからバチがあたったのかなぁ」


 姉が恋に破れて出戻ったのは私の責任ではないとは思うが、タイミングが妙にかぶる。

 仕方ない、グレイブを見返すために玉の輿に乗るぞ作戦は凍結だ。

 何も実質作戦は実行されていないけれども!


  私だって、姉の新生活が全力で失敗する事を願っていた訳ではない。

 どうか神様の気まぐれが起きて、姉が幸せになりますようにって神殿でも祈っていたくらいだ。


 こうなる事を予想できていたのに止められなかった自分が歯がゆいけれど、姪っ子はかわいい。

 

 姉の子どもはリナリーと言い、あのくそったれ貴族と顔形がそっくりだ。

 だけど姿形なんぞ、所詮は表面の事だ。姉の子どもというだけでもう目に入れても痛くない。


 うん、この子をこの世にプレゼントしてくれただけで、あのくそったれ貴族の事は赦せそうな気がしてきた。こんなに可愛い子と過ごせなくて、むしろざまーみろといった感じだ。


 父もそうなのか、相好を崩しているのを見るとまんざらでもないらしい。

 

 はぁ~。かわいい。リナリーかわいい。


 もう、私、結婚なんてしなくてもいい。一生リナリーを見守って暮していくんだ~。


 えへらへらとだらしなく笑っていると リリンとドアが開く音がした。



 「いらっしゃいませー」


 入ってきたのは三角帽子をかぶった眠たげな目つきの小柄な女の子だった。


 「これとこれ、あとお茶」


 メニュー表を指さすと窓際の二人掛けの席にさっさと座ってしまう。

 そして自分が座らない方の席にはどっかりと荷物を置いてしまう。


 「はーい。かしこまりましたぁ」


 

  チラリと見れば、席に座るとさっさとどこからか取り出したぶあつい本を広げて読みだしてしまう。


 …変わったお客だなぁ。


 つたない手つきでスプーンでスープを掬おうとするリナリーを見守ってほっこりしたかったけど、お仕事が優先ですからね。


 夕げの営業時間は短い。

 ウチのメインのお客様は旅行客がほとんど。そういう人達は殆ど夕飯は泊まる宿で食べる。

 だから、夜遅くまで開けていても廃棄食材が増えるだけだから、ウチは短期決戦だ。

  

 姉親子には疲れただろうから姉の自室に入っててもらい今頃は寛いでいる事だろう。


 「ごめんなさいB定食は売り切れました」


 最後のお客がA定食を仕方なく選び、もそもそと食べはじめた頃、件の三角帽子の女の子が本を読み終えたようだ。ごそごそと帰り支度をしはじめる。

もちろん、彼女の選んだメニューはすべて食べつくされ、お代わりに注がれたお茶はすっかり冷え切っている。


 まぁいいんですけど。ウチの席はすっきすきですから!営業時間内ならいくらいてくださっても!


 他のお客様にご迷惑になりますのでって一度は言ってみたいわ!くぅぅ~~。


「お代は1500リルです」


 女の子は懐からコインがぎっちぎちに詰まった財布を取り出して支払おうとして。


 ぶちまけた。


「あー。」


 なのにぼーっとしているから、私がいそいで拾い集めた。


 「はい。この中から1500リル頂きますね」


 すごいお金を持ってるなぁこの子。いささか心配になるけど所詮は他人だ。

 その年まで生きてきているんだから、今までも何とかなっていたんだろう。


 「御釣りの8500リルです。これは女性の方にプレゼントしているクッキーです。どうぞ」


 女の子は御釣りを財布にしまおうとしてギチギチなのを見て諦め、鞄にそのままつっこんだ。


 …いや、いいんですけどね。


 女の子は手渡されたクッキーをすぐさま小袋から取り出し、ぼりぼりと噛み砕きながら爆弾発言を投下してくれた。


 「このあたりでおすすめの宿屋ってどこ?」


 え?今から宿を探すつもりだったの?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 宵の内といえども、辺りはもう暗い。

 それなのに宿探しを手伝ってあげる私も大抵人がいい。


 でも予想通り近所の2~3件をあたってみたけれど、どこも満室だった。


 「宿を探しているならいいところがある」


 宿探しをしていた私達に親切そうに声をかけてきた男がいたけど、さっきウチでA定食を食べてた男の人とコソコソ話をしていた人だった。


 あーお金をぶちまけた所を見ていたのかぁ。


 ついてったら愉快じゃない目にあいそうだなぁ。


 ころっとだまされてついていこうとした三角帽子の少女を引きとめて、私は腹をくくった。


 ウチで食事をした片方が被害者で片方が加害者とか笑えない。


 「いいえ。知り合いのところが今夜キャンセルが出たっていう話を思い出したのでそこにいきますから大丈夫です」


 そういうと、少女の手を引っ張って走る。


 「凍れ」


 いくつかの路地を曲り、メインの通りに出る手間で水たまりを一瞬凍らせる。

 背後で叫び声とうめき声が聞こえるのでうまくひっかかってくれたようだ。


 「やっぱり後つけられてた。」


 「今のは??」


 「しっ!悪者よ。見つからないように戻るわ」


 「あなた今魔法使った?」


 そこかい!


 

 

 






 


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