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看板娘、頑張る  作者: 相川イナホ
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名馬の産地

 ここで出てくる最強クラスの魔物はミノタウルスに似ている。

 エリアボスの中では比較的弱い魔物である。

 比較的というだけで、弱いという訳ではない。


  エリアのボスなのである。当然強い。


 


 ミノタウルスの咆哮。

 恐怖で足がすくんで動けなくなる、もしくは動きが鈍くなる。

 ごめん。私のレベルだと、効かないんだなぁ。


 「バインド」

  私の影より、ニュイが長く伸ばした蔓を伸ばし魔物の動きを封じる。

  咆哮の後、恐怖で固まっているだろう私達を狙って突撃しようとしていた魔物の足が止まる。

  

 「穿て!凍りの楔よ!」


  私の魔法の攻撃。


 技名をいちいち叫ぶのは趣味ではないけど、仕方ない。

 今日はオハツの仲間「バラン」との共闘なのだ。何をするのか伝えないと仲間同士で、連携が取れない。

 

 空中に出現した氷の杭はミノタウルスの比較的柔らかそうな腹部分と足止め強化のために足元に向かって 飛んでいく。

 …惜しい。 やはりミノタウルスには魔法攻撃が効きにくいみたいだ。


  腹部分に飛んでいった氷の杭はいくつかはミノタウルスの持つ斧によって叩き落とされる。

 だが、足元は狙い通り、地面に縫い付けられた。




 「がうがうがう!」


 そこを狙ってのレオの噛みつき。


 「ぬぉぉぉぉ!なぎ払い!でござる!」


 ちょっと待て、薙ぎ払いは複数に囲まれた時の技だ。

 あわててレオは、ミノタウルスから離れる。

 この人戦闘センスないわー。


 すぅっ…とうっすらミノタウルスの表面に傷がつく。




  「がう!」


 巻き込まれを恐れて、離れていたレオは再びミノタウルスに向かって走り出す。

 レオの突進。からの足元への噛みつき。

 ミノタウルスは、バランスを崩し尻もちをついた。


 「棘の鞭!」


 そこへニュイの鞭打ちからの棘のある部分での締め付け。バインドの強化。

 斧の攻撃を恐れていたけど、今なら尻もちをついた状態なので斧をふりまわされても回避できる。


 「から~の射突!」 


 こいつは物理攻撃の中でもレイピアのような突き刺す攻撃が弱点で、風や水、氷や炎などで攻撃してもあまり効かない。

 外側が固すぎるのだ。一点集中で突いた方が効果がでる。

 錬金取っておいてよかった!。

 薙刀の刃部分を形を変え、先端部分をエストック風に変化させる。

 ぶすり、と嫌な手ごたえがする。慣れないなぁこれ。

 

 

 「から~の電撃」


 ばばばばば!

 いわば電極ぶっさし状態での放電。

 これは効果は抜群だぁ。

 


 「二段払いなのである!」


 だから、表面への攻撃は効かないってのに。


 ズバッ!ズバッ!


 

 うーん惜しい。その剣でなきゃ、もっとダメージ与えられるのに。

 ござる剣士のバランも首を傾げている。

 ですよねぇ。切れ味に違和感あるでしょ?


 ミノタウルスの咆哮。

 

 うん、だから効かないのよね~。

 ござる剣士のバランも歯を食いしばって耐えている。ちょっとだけかかってるかな?


 ミノタウルスは斧を杖代わりに身体を起こした。

 もう少し倒れていて欲しかった!



 ぐわっ!とミノタウルスの身体が膨らんだと思うとニュイの拘束の蔓がはじけ飛んだ。

 そのまま突進してこようとするけど、ニュイによってその足元は影に縫い付けられている。

 ミノタウルスはたまらず手をついた。

 さらにその手を影に拘束。グッジョブ!ニュイ!


 

 「いやぁぁぁぁぁぁ!」


 掛け声も勇ましく、大上段に構えた剣でバランが斬りかかる。

 全体重と運動エネルギーを剣先に乗せた重い斬撃。


 ミノタウルスの首が叩き折れました。


 この方、こうやってその剣使いこなしてるんだ。

 槌とかと大差ないような。


 どぅっとミノタウルスは倒れた。

 

 そして光の粒子となって消えていく。

 どういう仕組みなのかわからないけれど、後にはミノタウルスの使っていた斧と腰巻と魔石、肉の塊が残る。


 そして、私の錬金さんがお仕事をしたらしくコインがいくつかチャリーンチャリリリーンとばらまかれた。錬金術師のスキルを持った状態で、効果が抜群の攻撃が決まった時に起こる現象で仕組みは良くわからない。だけどゲーム中もお世話になりました。


 ありがたくバランさんと山分けをする。馬の購入資金のタシになるわぁ。

 まぁ魔物由来のコインなので、流通通貨と換金しないと使えないだろうけど。


 「肉はもったいないでござるが持っていけないでござる」


 「では私が」


 「斧と魔石は町に戻ってから売って山分けにするでござる」


 「待って」


 私はごそごそとレオの元主人の錬金の材料と錬金術の本を出す。


 「はじめてやるから、うまくいくかわからないけど」


 ゲームでは何回となくやったけど、現実でははじめて。

 でもスキルも取ってあるし、やり方知ってるし材料もそろっているし。


 ……



 斧から一振りの剣を作り出す。



 「これあげるわ。あなたの剣、切れ味がちょっと…なので。」


 材料がまだ余ったので、私用の小ぶりな剣も作る。


 ミノタウルスの腰巻は洗浄して、剣を包む鞘替わりにさせてもらった。


 「錬金術師殿であったかー」


 いえいえ、単なる飯屋の看板娘ですよっと。


 

 町まで戻る気がないので、これで手打ちにいたしましょう?バランさん。


 「肉だけではつり合いが取れないでござる。これももらって欲しいでござる」


 バランさんは私に魔石と自分の懐にいれたさっきのコインを全て私に押し付けた。

 たしかに、錬金術師に仕事を頼むと目の玉が飛び出るほど高いらしいけど。


 「いえいえ、私が勝手にしたことなので、…でも、そうですかありがたくいただきます」


 変に謙遜してもバランさんも困るだろう。後で支払うので支払先をとか言われたら、その情報が巡り巡って不安材料になってしまうかもしれない。

 私の身バレは避けないと。

 バランさん、いい人っぽいけど。

 この人のことそれほど知ってる訳じゃないからなぁ。


 「これでは到底足りないでござるが、これ以上支払うと馬の購入資金が…さびしくなるでござる。申し訳ない。必ず残り分を払うので連絡先を教えて欲しいでござる」


 「た、旅をつづけながら修行をして錬金の材料を集めているので、どうぞ、気にしないで」


 勝手に作った物にそんなに恐縮されても。


 そんなこんなで、ようやく名馬の産地へ到着。



 道中、私の錬金スキルさんがさらにいいお仕事をしまして、懐がけっこういい感じになったので、予定よりちょっといい馬を買えそうな気がしてきて気分はあげあげ。


 村の役場に寄って、コインを換金して(冒険者ギルドですればもっといいレートだそうだけど)

村長ご推薦のオーケーイー牧場へやってきました。

 ゲーム中で、3年後にここへ来た時には魔物によって蹂躙されて寂びれていた場所なだけにこの活気を見ると、胸が痛くなるような。


 「村長の紹介か、…あのエレの町に続く街道に出現するミノタウルスを倒してくれたとか。これははりきって良い馬を出さねばなぁ」


 

 牧場主のハリスンさんがニコニコと私達を出迎えてくれた。


 「『ドラゴンフライズ』のバランと申すでござるよ。それとこちらが…」


 「旅の錬金術師で、アールと申します」


 リリアンナの最初の一文字のアルファベットを名乗っておく。

 こっちの世界の人にはわからないだろうなぁ。


 「オーケーイー牧場のハリスンです。どうぞうちの自慢の馬を見てやってください。ほらあの黒のたてがみの馬は将軍閣下の愛馬『エティ号』と兄弟馬なんですよ」


 エティ号の兄弟馬に寄り添っている白い馬、その足元にいる銀色のたてがみの仔馬は…あらあれは3年後に勇者が手に入れる事になっているハヤテ号ではないだろうか。




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