レオとニュイ
夕べは大変だった。
ルルから貰った種から謎の植物が芽吹き、その花の蕾から魔法生物が生まれた。
そいつにせがまれて名前をニュイとつける。
意味はよく覚えていない。パっと心に浮かんだので適当だ。
レオも多分魔法生物なんだろうけど、多分発生の仕方が違う。
レオの前のご主人でレオの製作者はよい腕をした錬金術師だった為、錬金的な方法でレオを創造したのだろうと推察できるが、ニュイは何かの植物の種から発生した種なので根本的に違うのだろうと思う。
だからかなぁ~。
この二人めちゃくちゃ仲が悪い。
夕べ、ニュイに名付けをして5秒後にはドアをぶち開けてレオが現れて、ニュイに向かって威嚇した。
レオはボーダーコリーに似た犬の姿をとる事もあり、性格が犬っぽい。
それに対してニュイはなんだか猫っぽいんだよなぁ~。
犬猿の仲ならぬ、犬猫の仲。
もう夜中なのに、フーフーシャーシャーぎゃんぎゃんといがみ合っているので、二人まとめてレオの部屋に押し込んだ。
ところがニュイの奴は影を伝えば、楽に移動できると見えて、鍵をかけても何のその。(そのために工作と錬金のスキル取って、ドアを直した。ひどいとばっちり)
人が寝ている部屋に忍び込んでくる。
レオがそれに気づいて押しかけてくるのエンドレス。
おかげで寝不足の上に余分に結界のスキルまで取らざるをえなくなって、スキルポイントを無駄ではないかもしれないけどいくつも消費。これは痛い。またどこかでレベル上げとスキルポイントを習得しなくっちゃなのである。
私の計画では隠密へのポイント激フリでこっそりひっそり、ゲームの筋書をちょこっと改ざんできればいいのに。なんで魔法使いとか鍛冶師とかのレベルあげちゃってんのよ。
ふぁぁ眠い。
「ニュイえもん、何処でも行けちゃうドア~」
「意味わかんないんですけど」
寝不足の変なテンションでニュイに移動を頼む。
「根を下ろした場所しか行けないって言われたでしょ。最初に目的地まで行っとかないと移動できないの」
「ちぇーケチ」
見れば私の影から半身を出しているニュイを踏みつけようと、レオが足元をタシタシタシと踏みしめてる。
ニュイは簡単に影を出たり入ったりして上手に避けているみたいだけれど。
「レオ、それだと主人の足を踏もうと頑張っている人に見えるからやめなさい」
「くぅぅん」
レオは、なんと上目使いに顎を足の上に乗せて可愛いワンコの姿になってしまいました。
「いやぁぁん。あざと可愛い」
「フン。腹黒犬」
「わふわふわふわふ」
レオがニュイに悔しければ犬になってみろと煽っております。
案外言うのね。
「さぁエレの町にレッツゴー」
女騎士さんを助けた後くらいから敵を現す光点が王都から殆ど消えた。
何かがはじまっている気がする。
急がねば。
念のため周囲のマップに敵意がある存在を検索する。
そして隠密スキルを発動、気配をたつ。
エレの町にはニュイの能力で移動する。
魔力スポットの上へ現れた私達は思わずため息を吐く。
何か影の中を移動する時って無意識に息とめちゃうんだよね。
「安全に送り届けてるんだぜ。信じてなかったのかよ。ま、いいけど。オレはここにいるから用があったら呼んでくれ」
ニュイはそこで魔力を補充しているそうだ。
「食事だよ。移動すっと腹へるんだ」
「わふっわふっわふ」
ご主人様が呼んだらすぐに来るのだぞ、とレオ。
先輩風吹かせたいのかなぁ。
犬の時の方がよくしゃべってませんか?
再びエレの町に来たのにはわけがある。
ニュイの移動範囲は今のところ王都、エレの町、西の塔なのだ。
つまりは足を用意しないと、移動に支障が出る。
そこでゲーム知識。このエレの町から北に5キロ行ったところに馬の産地があるのだ。
3年後のゲーム開始時には、ほぼ壊滅していたけど、勇者は残った馬の中から名馬を見いだし愛馬とするのだ。3年前の今ならまだ産地は現役のまま。
いいお馬さんもよりどりみどりのはず。
そういえば、このエレの町の近くの馬の産地の草原には、美味しい装備を落とす魔物がいるのだが。
そう、ちょうど前を歩くあの人のような装備を。
黄金色に輝く全身鎧、その腰に下げる剣も黄金色。全身キッラキラの。
「何か拙者に用でござるか」
「いえいえ、すごーく目立つ装備ですね」
「そうだろう。そうだろう。拙者の装備は素晴らしいだろう。」
なんの因果か、3年後に魔物が落とす美味しい装備とそっくりな姿で全身固めた冒険者と道中を一緒する事になった。
「貴女も馬を買いに来たのであるか?この産地には名馬がたくさんいると聞いて拙者もどうせなら、とわざわざ出かけてきたでござるよ」
ござる剣士のバランと旅の道連れになった。
「馬にかける情熱を我が仲間は理解してくれなかったでござるよ。拙者は一人でも大丈夫でござるが、お嬢さん達、この辺には強い魔物が出るという噂もあるゆえ拙者と一緒で良かったでござるな」
まぁレオがいるんで、たいていの魔物は大丈夫なんですけどね。
私もそこそこ出来ますし。
はずかしながら。ええ、そこそこですけど。ええ、あくまでそこそこですが。
ええ、本当にそこそこです。そこそこしか出来ません。
「だから本当にほどほどだってばーー!!!」
ええ、いきなりエリアボスクラスの魔物が現れるなんて!聞いてないわぁぁ!!
「え?もう危機なの?」
くつろいでいた感じがありありとした恰好でニュイが現れて一緒に戦ってくれるという。
「足止めはまかせて」
「わふわふわふわふわふ!」(主殿の安全は自分が守る!)
犬の姿の方の時の方がやっぱりレオはおしゃべりなようだ。
「ここは拙者にまかせるでござるよ」
目にキツい輝きを放つ大剣を抜くバラン。
いや、その大剣とか鎧兜とか、見た目だけで見かけだましなんですけど。
じゃぁ何がその装備が美味しいって売った時に大した金額になるのだ。
えーっとその装備3年後にドロップ品としてこの辺の魔物から出るんですけど。
……。
つまり?
ここでござる剣士はその美味しい装備を全て落とす事になり、それがどういう訳か魔物が所持するようになる。
……。
つまり?
この辺で装備を落とすような目に合ってるってことじゃないの?ゲームの中では。
それ死亡フラグだ!
絶対、ここら辺りで何かあって命(装備を)落とす羽目に会ってるんじゃ。
「バラン殿~~!!命がけで必死で戦うでござるよ!!」
ござる口調が移っちゃった。…。




