俺の幼馴染 ※グレイブ視点
リリアンナは俺の幼馴染で恋人だった。
過去形なのはここ半年もちゃんと話をしていないから…かな。
半年前、つまらない喧嘩から仲違いしてそれからぎくしゃくしている。
とはいえ、10年以上の付き合いの中ではくっ付いたり離れたりもあったから今回だって仲直りできるはずだ。
「よう!リリアンナ!店の前で客引きか?色じかけとは品がない事だな!」
なのに、俺の口は思いとは別の言葉を吐き出す。
もういっそ黙っておけと自分でも思うのだけど、自分ではやめられない。
あんな服であんな角度をしたら見えちゃうじゃないか。
だから注意をしようと思っただけなのに。
リリアンナは大人になるにつれ、とても綺麗になった。
袖から覗く二の腕も白くてやわらかそうで、目が吸い寄せられる。
屈んだ事によって、腰から尻のラインが服の上からでも目を引く。
ばかやろう不用心すぎるだろう。
大きな目もやわらかなあの唇も半年前は全部俺のものだったのに。
もどかしくてもどかしくて夢に見る彼女は最近よく見るような寂しげな表情をして俯いている。
その顎に手をかけて顔を覗き込んで、涙をぬぐってやりたいのに。
彼女にむかって手をのばそうとすると遠くへ遠くへといってしまう。
もう、俺が悪かったと謝ってここ半年のことをなかった事にしてしまいたい。
けど、それは俺が冒険者をやめるということで。
仲間もいる。小さい頃から憧れていた仕事だし、俺にはこの仕事しかできない。
彼女のように接客できるわけでもなく親父さんみたいに料理ができるわけでもないし。
「グレイブぅ」
俺のパーティで唯一の女性であるセリカから呼ばれ、沈んでいた思考の海から浮上した。
「買い出しも終わったし、そろそろ宿へ戻ろうぜ」
「明日からまた護衛の仕事だからなぁ」
仲間がそう言っているのに適当に相槌をうつ。
「ああ」
そういって振り返った視界のすみに、焦がれた小麦色の髪が見えた気がした。
「リリアンナ?」
目を眇めて見るとその姿は雑踏に消えてしまった。
「…男連れだったな」
「…別人だろ?こんなとこにいるわけないじゃん」
仲間もその姿を目に捕えたと見て、そんな風に言ってくれる。
「他人の空似じゃね?」
「ねぇ。早く宿屋へ戻ろうよ~」
セリカがぐずるので、後ろ髪を引かれる思いでその場を離れる。
でも宿屋へ戻ってからもぐずぐすと考えてしまい、あの時に追いかけてみるんだったと後悔した。




