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看板娘、頑張る  作者: 相川イナホ
22/42

うろうろおろおろ

 

 「じゃぁそういう事で」


 ダフネ様を男爵ジュニアにまかせ帰ろうとすると、引き止められた。


 「まてまてまてまて」


 「え?だってもう私にやれる事ってないですよ?」


 きょとんとして答えれば、男爵ジュニアが、頭を押さえてうめくように言った。


 「ちゃんと、最後まで始末をつけてから帰れ…お前は…」


 子どもらしくありませんねぇ、ジュニアは。

 子どもの本分なんて出たとこ勝負のなりゆき任せでしょうに。

 もしかして、やっぱりジュニアったら、本当は35,6じゃないの?

 顔も老けているし。まぁまだほっぺは艶々のぷにぷにだけど、そういう大人だっているよね?


 「まず、第一に、そいつは誰だ?雇ったものなのか?信用できるのか?」


 レオの事を指さしていうから、ああそういえばちゃんとレオの事を紹介していなかったなと思い出す。


 「この間はてっきり王女殿下側の私的な護衛なのかと思っていたが、お前の関係者なのか?」


 「うーーん。飼い犬?」


 何と言って紹介していいのか悩み、レオのもうひとつの姿を思い浮かべて言う。

 前世で多分子どもの頃に飼ってたボーダーコリーそっくりなんだよね。

 なのに、ジュニアが絶句して口をぱかぱかと開けたり閉めたりしている。


 「おまっお前、そっそれはっ!」


 「細かい事はいいじゃない。それよりダフネ様のこと、ジュニアにお任せするしか平民の私にはできないんだけど?」


 頭をぐりぐりと押し付けて、「撫でてーほめてー」と甘えているレオのちょっと軽くくるくるしてる髪を撫でながら私が言うと、ジュニアは頭痛がするとばかりに自分の頭を押さえている。

 ボーダーコリーは、元々は牧羊犬だけあってめっちゃ賢いんだよー。レオも一緒でかしこいんだよー。


 人型を取った時のナリは大きいんだけど、そして決してオバカじゃないんだけど、精神年齢が小学生低学年なみなんだよね。


 いつもにこにこ機嫌がいいし、まぁときたま拗ねてツンな時もあるけど基本的に「ご主人様だぁぁい好き。お仕事何します?何します?」って聞いてくるとってもイイコ。

 レオといるととっても癒されるのよねー。

 おまけに強いし。もう彼氏とかいらないんじゃないかな?

 特に馬鹿グレイブとか!


 「…信用できるならいい。前にも言ったが、わが家は父が亡くなった事で口さがない親戚連中が出入りする。嫁入り前の貴族令嬢を家に連れ込んだとかバレたら…」


 あー。そっちの問題かぁ。たしかにジュニアはまだ独身だし?年上好きだし?綺麗なおねぇさんを、憧れるあまりにかどわかして連れ込んだとか邪推されちゃうわけだ?


 「じゃぁ?お宅のお嬢様が浚われそうになっていたから浚いましたって素直に申し出ればいい?」


 「それはまずいだろう。」



 「いっそ、親のところに届けます?」


 ヤミさんに頼んで、ルルさん経由で将軍閣下に「来ちゃった♪」をすればいいのでは?


 この方、「社交界の黒薔薇」とか呼ばれているらしいけど、本当はダンスより剣を振ってる方が好きという脳筋よりの方だよ?多分他の貴族の方は知らないけど、私は設定集を読んでるから知っている。


 ちゃんとルルには今回の遠征は「油断しないで命だいじに」って伝えたし、マリエステル王女の「お願い」によって、退役兵士達を中心に「義勇軍」が結成されたし。

 それによって後発隊に戦力増強かかったし。


 このあと、レオの元のご主人様の錬金術師さんが「来る魔王復活」に備えて作りだした兵器をひっさげて私も参戦するつもりだし!


 あくまで遠くからこっそりとだけど!


 ゲームのオープニングで、遠征軍がトロールがまじったオークとコボルト軍と大混戦しているワンシーンがあったから、ゲーム知識活用してエレの町原産の「トロール殺し」をたんまり手にいれてある。


 卑怯と呼ぶなら呼ぶがいい。


 ただの平民の看板娘が頑張ったところで、出来る事なんかしれてるからね!!


 

 「あくまで、ご本人の意思を聞いて…ですけれど。そんな手もあるんじゃないかなーと」


 だから、大敗退とかならないはずだ。多分、いやそうなって欲しい。



 銀髪騎士イザーク様の裏切りフラグを叩きおり、本編では殺されてしまっていたであろうダフネ様も助かるし、お父様大好きのダフネ様は将軍閣下と魔物討伐隊で大暴れできるし。いい事づくめ?


 「うん、それがいいと思う。」


 いや、戦場になる場所に貴族女性を連れていくのはどうか?とかジュニアが悩んでいたけど、

「この人、めっさ強いよ」と教えてあげたら信じられない風だった。


 まぁすんごい美人だしねぇ、そうは思わないよね。意外性でギャップ?

 そういうの好きな人もいるんじゃないかなぁ。市場は小さそうだけど。


 この方、貴族夫人になって「まぁおほほ」なんて無理なのよ。

 うるさい御仁は物理で黙らすとかそういう人なの。

 そう考えるとこの方も不幸だったんじゃないかなぁ。


 指揮官としての能力はどうか知らないけど、女に生まれてこなければ、将軍閣下の一人息子としてその能力を思い切り開花できたでしょうに。

 

 つくづく、この世界、この時代ってと思ってしまう。

 たしかに男女でその基本体力とか違うでしょうけど、魔法なんて反則ものもあるくらいだから、せめてもう少し自由であるべきだと思うの。


 私は少しだけ、この艶やかな美女に同情をした。


 身分もある。見目麗しい外見も持っている。なのに、人ってよくばりだ。

 それでもおかれた状況に我慢がならない時もあるんだよね。

 この人の魂の渇きは、「社交界の黒薔薇」だなんて呼ばれても、癒えないものなんだろうね。




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