レベルをあげよう2
エレの町へレオと戻る。
約束を1日オーバーしてしまった為にダンデライオンの皆さんに平謝りする。
彼らは彼らで私のいない間に、またあの魔力スポットに行ってかなり稼いだらしい。
レベルとランクとお金と、すべてにおいてUPしたという話だった。
丁寧に御礼をいってエレのギルドで私が参加していない日にちの分も含めて謝礼を渡す。
まぁお姫様から多少の謝礼は出たので、懐は痛まない。
敵方の隠密さん達と戦って、私の方もレベルが少しだけ上がっていた。
スキルポイントが増えたので、何かスキルをとろうと思う。
ゲームでは色々な職業による能力を見につける事ができて、上限はレベル10だった。
能力同士は足し算で強さとして反映し転職を繰り返す方が有利だった。
とはいえ、相性の悪い物もあるわけで、そういう組み合わせに敢えて挑む者や、相性の良い物同士の掛け合わせで相乗効果を狙い、サクサク進むのも自由というやり込み要素も魅力のひとつだったと思う。
他のゲームでは剣(物理)と魔法(氷や雷など)を同時に使う者は魔法剣士とか魔法戦士とかいう職業だと思うが、ここでは例えば料理人としての能力を持っていた場合、剣士で戦っていたとしたら、勝手に敵を賽の目にしちゃう技だとかスライスしちゃったりする技がランダムでさく裂する。
それらは単なる剣士の技の回転斬りだとかスラッシュより強力で、効果が抜群だった。
意外な組み合わせで意外な効果の技が出るのでそっち系統に傾倒していたゲーマーも多かった。
と言う訳で、汎用性のある料理人のスキルから火加減、包丁さばき、匙加減を選ぶ。
包丁さばきは剣士との相性が抜群だし、匙加減は薬師や錬金術師とかの相性が抜群だ。
そして改めて確認すると魔法使いの能力のところに火魔法が増えていた。
あれ?あたためって火魔法じゃなかったの?
…試してみました。
今まで出来なかったファイヤーボールが打てました。
あたためはレンチンだと判明。
今まで人とかに使わなくてよかったよ。
ほっと胸をなでおろす。
ふいに タマゴをレンチンして爆発させてしまった前世の苦い過去を思い出した。
多機能レンジを使用してたんだけど、結局レンチンしか使っていなかったのに5年でお陀仏というどうでもよい事だけ思い出した。
更に思い出そうとする。
夕陽が当たる2階建ての安アパートに住んでたような気がする。
寂びた鉄製の階段を上がって2階に昇ると洗濯機が外にあって、ドアを鍵で開けて狭い玄関を通るとすぐに台所があった気がする。
夜は静かで、ベランダから下を覗くと少しだけ雪が積もっていた。
誰かと住んでいたのか、一人で住んでいたのか。
思い出せるのが前世にはまっていたゲームとレンチンでタマゴ爆発とは、我ながら使えない記憶だと思う。
ヤミを通して、ルルからの連絡待ちの間、ダンデライオンの皆さん抜きで魔物狩りに行く。
彼らには依頼終了の書類を渡してあるので、王都のギルドへ戻っていった。
短い付き合いだったけど、気持ちのいい連中だった。
今度、何かあった時にはまた彼らに頼もうと思う。
さて、レオと私だけでの狩りのチャレンジだ。
とはいえ、レオが殆ど弱体化してくれたのを最後にプスリとやるだけなのだけど、けっこうレベルとスキルとポイントがたまった。ちなみにこのレベルまでいけば、単独では無理でも、仲間のセレクトでは魔王とよい勝負が出来る頃合いだ
私の戦闘隠密看板娘とかいうわけのわからない職業もレベル6まで行った頃、見覚えのある馬車が私達のいる前に停車した。
「こっちこっち」
声がした方を見れば、ヤミが私の影から半分身体を乗り出して、馬車を手招きしていた。
こわっ!軽くホラー再びである。
私が固まっていると、馬車を操っていた人物がヒラリと御者台から飛び降りる。
「おひさしぶりです。」
ひさびさのカゲだった。
「こっそり抜け出してきた」
ルルも馬車の中にいた。何故か大量の鞘豆の鞘を取りつつ。
あれか?梱包用のぷちぷちみたいな物で手慰みになっているのだろうか?
「肉ばっかりで飽きた」
切実な理由らしい。
聞けば、カゲがいれば、高速で移動できるところを、遠征軍に合わせて移動しているので、かなりの手持無沙汰との事。
とはいえ、単独で突っ走るといろいろ大っぴらにしたくない能力が衆目を集めてしまうため無為を囲っているとのことで、私の進呈した「世界のきのこ全Ⅲ巻」は多いに喜ばれた。
どう切り出した方が良いのか、迷っていたけれど、ヤミからあらましを聞いていたと見え、私のアリバイ作りに協力してくれるとの返事をもらいほっと胸をなでおろす。
「この本はとても貴重で価値があるもの。だから、対価に私のとっておきをあげる」
ルルはそういって私にひと粒の種のような物をくれた。
「これに魔力を注いで育てれば、カゲのような能力が芽吹く。それを使うといい」
ヤミかカゲを一時だけでも貸してもらえるだけで良かったのだけれど、能力そのものを私にくれるらしい。
「王都を起点として植えればいいと思う」
そう、ルルが言ったとたん、わたし達は知らない場所にいた。
「ここは安全。西の塔と呼ばれている場所だから」
ルルはそういうと、私の影に種を植えた。
「繰り返して。『闇と影を司る花よ記憶の陰に寄りてその根を伸ばせ』」
私がルルの言葉を復唱すると、種は私の影に沈んでいってしまった。
「あとは魔力の多い場所で、根を下ろさせればいい。枯れないように世話をして」
次の瞬間には再び、エレの町の元の場所へ戻っていて驚く。
「この場所もいい場所。『根をおろせ』」
「根をおろせ」
ルルのマネをすると私の影から緑色の葉っぱが生えてくる。
なるほど、魔力スポットのような所で、あの種の根をおろさせればいいんだ。
「行きたい場所、根を下ろさせる。基本行ったところしか移動できない」
どういうしくみかわからないけど、王都からエレの町まで、何かが繋がったらしい。
「成長すると『カゲ』のように人格のような物を持つようになる。どのような姿になるのかは宿主のセンス次第」
なんと、カゲもレオのような魔法生物だったようです。
「良い場所を教えてもらえましたね」
ルルの足元の影にも緑色の葉っぱが生えていた。どうやらそれがカゲの本体らしい。
カゲの顔が心なしかつやつやしている。
ここの魔力スポットは彼らにはよほど良い栄養になるようだ。
「生まれたら名前をつけてやればよい。よい主人でいる限り、彼らはちゃんと従う。では騒ぎになる前に戻る。下僕、周囲を警戒。」
本当に、こっそり抜け出してきたと見えて、ルルはあっさりと帰っていった。
「で、どうやって使うの?」
あとに取り残された私は途方にくれた。




