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一週間付き合った彼女に嘘告だったと笑われたので縁を切ったら、以前から俺を誘っていた美少女が「今度こそ私と遊んで」と言ってきた  作者: 柊ナツキ


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第9話 土曜を取り返した人から次の誘い

「榎並、明日、一時半のままでいい?」


 金曜の校門で呼び止められた。

 自転車を押して出かけた俺の前へ、砥上がスマホを持ってくる。


「いいよ。先週話した店の前だろ」

「うん。それと、来週の日曜も空いてる?」


 画面には商店街の地図があった。

 四つの丸の下に、九月二十六日と書いてある。


「四箇所回ると、景品がもらえるんだって。行かない?」

「また勝負?」

「わたし、一緒に歩く相手を誘ってるんだけど」


 そっち、と指先が俺を向いた。

 俺は自転車ごと門の脇へ寄った。


「行きたい。午後?」

「そう。沙弥も見たい所があるって」


 少し後ろにいた大庭が、畳んだチラシを広げた。

 昔の商店街の写真だった。


「この日、資料室も開くから。前に行った時は閉まってて」

「何が見られるの?」

「古い看板とか。ここ、今の通りと店の名前が全然違う」


 写真の角を指され、俺も覗き込んだ。

 目立つ建物より、その横の細い道が気になる。地図に引かれた裏道へ、今もつながっているんだろうか。


「何見てる?」


 仁科が水泳の袋を肩に掛けたまま、俺の横へ来た。

 日付を見た途端、自分のスマホを出す。


「あ、それ。串が売ってる日だろ」

「そっちで覚えてるんだ」

「二十六日だけ、って書いてあるから」


 仁科の画面には、鶏の串が三本並んでいた。


「限定の方は昼過ぎからなんだって」

「三本だと、四人で一本足りないな」


 俺が言うと、仁科は写真を自分の方へ戻した。


「一人前だろ、これ」

「分けるつもりはなかったか」

「食べたくなったら、自分の頼めよ」


 砥上が笑った。大庭は写真より、その下に載った店の古い外観を見ていた。


「そこの店も、展示にあった気がする」

「串は、今の方を見たい」


 仁科はチラシを覗かずに答えた。

 同じ店の話なのに、向いている年代が違う。


「わたしも寄りたい店ある。前、店頭に出てたのが気になって」


 砥上が地図を俺へ向け直す。

 俺は資料室と串の店と、彼女の指した場所をつないだ。


「じゃあ、資料室を十五分くらいで見て、こっちで食べれば──」

「十五分だと、写真だけで終わるかも」


 大庭はチラシの小さい説明まで指でなぞった。

 仁科も、並ぶ分は欲しい、と言う。

 俺は自分の端末を出しかけた。開始の時刻を聞いて、一度道順を組み直せば。


「榎並、今、全部決める?」


 砥上に止められ、顔を上げた。

 大庭はバスの来る方を気にしている。仁科の袋も、ずっと肩に掛かったままだった。


「……必要な時刻だけ、後で送って」

「うん。それで四人で決めよう」

「俺も、歩いてみたい道があるか見る」


 砥上が頷いた。

 まだ線になっていない地図を、自分の端末へ送ってもらう。


「泳ぐ予定入らなければ行ける。月曜に確認して言う」


 仁科が袋を掛け直した。

 大庭もチラシを畳み、バス停の方へ一歩動く。


「明日は、わたしの買物だからね」


 砥上が、俺へ向き直った。


「うん。日曜と一緒に考えそうになってた」

「明日まで四人にしないでよ」


 仁科の方へ目が動いた。

 本人はもう、串の画面を閉じている。


「俺、明日は練習」

「人数確認しなくていいから」


 砥上に言われ、俺は口を閉じた。

 大庭は笑いながら、先にバス停へ向かった。仁科も手を上げてプールの方へ行く。

 砥上は見送ってから、俺の返事を待っているように立っていた。


「明日は、二人で行く」


 俺から言うと、彼女はやっとスマホを鞄へ戻した。


「そう。買物が済んだら、コロッケ」

「俺のりんごの方も、残ってるといいな」

「それは、もう一回先」

「覚えてたか」

「榎並が食べたいって言ったんでしょ」


 俺も覚えていた。

 けれど自分が言った分まで、相手の予定に残っているのが少し意外だった。


「買物って、どのくらいかかりそう?」

「まだ、見てから」

「日曜と同じ答えだな」


 砥上が小さく笑う。


「箱だけだから、そんなにかからないよ。色で迷ってるだけ」

「その『色だけ』が長いんだろ」

「だから、榎並にも見てほしいの」


 返す言葉が少し遅れた。

 付き合って待つつもりでいたけれど、俺の出す答えも欲しいらしい。


「……分かった。じゃあ、一時半に店の前」

「うん」


 砥上は、来た道の方へ歩いていった。

 俺が自転車にまたがる前に、短い連絡が来る。


『早く着いても、先に買物始めないでね』


 俺が何を買うんだ、と思っていると次が来た。


『わたしが先に入ってても、呼んで』


 俺は『一緒に選ぶんだろ。待ってて』と返した。

 地図を保存する前に、明日の待ち合わせ場所をもう一度確かめた。

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