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一週間付き合った彼女に嘘告だったと笑われたので縁を切ったら、以前から俺を誘っていた美少女が「今度こそ私と遊んで」と言ってきた  作者: 柊ナツキ


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7/21

第7話 今夜の話を送る相手がいない

 二十二時になる少し前、私はスマホを充電器から抜いた。

 榎並くんの名前を開いて、文字を打つ。


『今日の委員会でさ』


 そこまで書いて、手が止まった。


 昼、榎並くんは自分の椅子を持っていった。

 夜に二人で連絡するのも、もうしない、と言って。


 委員会で話そうとしたことを、今日も最後まで言えなかった。

 配る紙の並べ方を相談している途中で時間がなくなり、結局、前と同じに決まった。私の案の方が絶対によかった、というほどではない。ただ、どう思うかくらいは聞きたかった。


 榎並くんには、そういう話もできた。

 話の途中で別の用事を思い出しても、戻ってきて、それでさっきのは、と聞いてくれた。

 先週の木曜も、何を言おうとしたかもう一度話せた。


 私は書いた文字を消した。

 ここへ送ってはいけないことくらい、分かっている。


 ベッドへ腰を下ろし、別の友人の名前を開いた。


『今、電話できる? 少しだけ』


 送ると、スタンプが先に返ってきた。


『ごめん、妹がまだ宿題終わらなくて』

『何かあった? あとでなら返せる』


 忙しいのは知っていた。前にも何度か、家で妹の勉強を見ていると言っていたから。


『大したことじゃないから大丈夫。また明日』


 返してから、スマホを膝へ置く。

 本当に、明日でよかった。委員会の小さい話なんて、一晩待って困ることではない。

 榎並くんへは、それを待たずに送っていた。


 最初の夜は、何を話せば恋人らしく見えるか分からなかった。

 小椋は、承諾をもらったら普通にしていればいい、と言った。金曜に来ると言ってくれたかだけ、後で聞いた。

 毎晩電話しろと、誰かに言われたわけではなかった。


 私から、今日は何してたの、と送った。

 榎並くんは、帰りに寄った店が混んでいたことを話した。私がその店を知らないと言うと、写真を探してくれた。

 次の日は、小テストの一問で変な間違いをしたと話していた。

 いつも私だけが聞いてもらっていたわけではない。

 だから、電話を切る時は、また明日、と自然に言えた。


 一度、部屋の外から母に呼ばれて、途中で切った夜もあった。

 用事が済んで戻ると、榎並くんから『終わった?』と来ていた。

 返せば、また続きができた。あの夜、私の時計を見ているのは私だけではない気がした。


 通話の途中で、今、眠い、と言われた日もある。

 じゃあ今日は終わり、と私が言うと、彼は最後に一つ聞き返した。

 明日の小テスト、範囲どこまでだったっけ。

 それを教えて切った後、明日はどうだったか聞こうと思った。


 そういうところは、本当だった。


 そう思ってから、昼にも同じことを考えていたと気づいた。

 告白が罰だったと言っても、話した内容まで嘘にはならない。その分は残しておける気がしていた。

 椅子を持っていく彼へ、前みたいに、と頼んだ。


 でも、前には、二十二時に連絡する約束なんてなかった。


 スマホを取り直し、最後の通話履歴を見た。

 金曜の前の夜。切った後に、私からスタンプを送っている。

 もう寝たかと思ったところへ返事が来て、嬉しかったのも覚えている。


 その下には、土曜の話が残っていた。


『金曜に時刻を決めよ』


 私は、自分が打った言葉を長く見た。

 一週間が終われば、それ以上決めなくて済むつもりだった。

 榎並くんが、金曜になるのを待っていることも分かっていたのに。


 砥上さんとの約束を断ってほしい、と頼んだ時もそうだ。

 友人のままなら、言えなかった。

 その日、私にも会ってほしいとは言えても、他の女子とは行かないで、とまでは言えない。


 でも、彼女なら。


 実際に榎並くんは断った。

 送ったよ、と言われた時、ほっとした。いつもの金曜にも来ると言ってくれた。

 小椋にそれを伝えた時より、榎並くんから返事をもらった時の方が嬉しかった。


 私は画面を伏せた。

 自分が何をしたのか、ずっと知らなかったわけではない。

 ただ、付き合っているように振る舞えば、一週間の間、彼も嬉しいだろうと思っていた。

 終われば少し拗ねるかもしれない。でも、また四人で店へ行けば、そのうち戻るだろうと。


 今日のお昼、榎並くんが持っていった椅子の分だけ、机の端が空いた。

 私たちは三人で食べた。パンの袋を開く音が、いつもより大きく聞こえた。


 まだ話せるかもしれない。

 今夜ではなく、明日なら。


 榎並くんとの画面をもう一度開いた。


『少しだけ、連絡してもいい?』


 短くして送った。

 送ってから、昼に聞いた返事で足りていたと分かった。


 私は歯を磨きに洗面所へ行った。

 戻るまでに何か届く気がして、スマホを部屋に置いていった。

 ベッドの上には、さっきと同じ画面があった。


 送った一行は残っている。

 返信はなかった。


 あと一分だけ待つつもりで、充電の線を持った。

 先を端末へ挿し損ね、もう一度やり直す。

 枕元の時計は、二十二時を少し過ぎていた。

 今夜言おうとしていた話の続きを、私はまだ覚えていた。

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