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一週間付き合った彼女に嘘告だったと笑われたので縁を切ったら、以前から俺を誘っていた美少女が「今度こそ私と遊んで」と言ってきた  作者: 柊ナツキ


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第29話 一人ずつなら、勝てたのに

「最初、わたしが選んでいい?」

「うん。じゃあ、俺が箱を開ける」


 伊都が問題の紙を真ん中へ置いた。

 三升ずつ並んだ小さい正方形の枠と、二枚ずつの候補が三組。

 各組から一枚ずつ残し、三枚で九升を隙間なく埋める。重ねたり、枠からはみ出したりはできない。


 残した札は、枠の中で回したり置き直したりしていい。

 選ばなかった方を箱へ戻したら、その組の選択は確定。一回の挑戦中は取り直せない。

 やり直すなら、三組とも初めから選ぶ。

 相談は自由だった。


「これなら、二人で早くできそうだな」


 俺は三組を横へ並べた。

 最初の二枚は、細い三升の棒と、L字に曲がった三升の札だった。

 後の二組は、どちらも曲がった三升と、四升の正方形の組だった。

 伊都は最初の二枚を持ち上げ、枠へ重ねず、少し離して見ている。


「どっち?」

「待って。最後の形も見たい」


 俺も残りの候補へ目をやった。

 後の二組で四升を使うと、多すぎる。三升を三枚なら、ちょうど九つ。

 最初の二枚はどちらも三升だった。曲がった方が伊都の好きな配置を作りやすいだろうと思った。


「長い方は、場所を取るから」


 俺は棒をつまみ、箱へ戻した。

 伊都の指が、曲がった方を持ったまま止まる。


「……今、戻した?」

「うん。こっちで、先に端を」

「まだ、選んでなかった」


 俺は箱の中を見た。

 もう戻した札を取り出せないと、さっき二人で読んだところだった。


「同じ三升だから、後でも合わせられると思って」

「形、違うよ」


 伊都は言いかけ、枠の中へ一枚を置いた。


「残りには、棒がない」


 彼女が二組を確かめた。四升を使えば、数が余る。

 曲がった三升を二枚とも残し、一度置いてみよう、と伊都が言った。

 端を入れ替え、上下を回した。

 最後に、下の一列だけが空いた。


 三升、横に並んでいる。

 伊都の手元に残った札は、角が曲がっていた。


 彼女はその札を回し、空いている列へ当てた。

 入らないのを確かめてから、俺の方へ向ける。置いてあった二枚も動かしたけれど、今度は別の角が出た。

 俺も一枚を回しかけ、彼女の指と同じ所へ手を伸ばした。

 二人とも、一度手を引いた。


「あの棒を、ここへ置きたかった」


 彼女が指した。

 俺も空いた三つを見る。数だけは、合っている。


「先に言ってくれたら」


 口に出た所で、伊都が俺を見た。


「見たいって、言ったよ」


 俺は答えられなかった。

 彼女は最初に、自分が選ぶと言っていた。

 俺の置いた札を受け取ってもらう約束ではなかった。


 諦めて、三組の札を全部出し直した。

 もう一度同じ問題をやるより、別の問題の方がいい気がして、俺は次の紙を開いた。


「今度は、ちゃんと見る」


 伊都も新しい候補を並べた。次は自分で、と最初の二枚へ手を置く。

 最初の組には、四升の四角い札と、三升の細い札がある。

 後の二組は、棒と曲がった札。どちらも三升だった。

 俺は、その六つ分を指で押さえた。


「こっちなら、端が揃う」


 伊都が四角を枠へ置く。

 角へぴったり合ったので、次に置く場所も見えると言った。


「待って。後の二組、三ずつ使うなら──」

「ここから、つながるよ」


 彼女が細い札を箱へ戻した。

 俺の指は、まだ二組目の数を押さえていた。


「それだと、十になる」


 枠は九升だった。

 伊都が残りの候補へ目を戻す。どちらを選んでも三升ずつで、小さい二升の札はなかった。


「……四角が入る方だけ、見てた」

「俺、今、それ数えてた」


 彼女は四角を持ち直した。

 枠へは入る。でも、選ぶ三枚を全部使うことはできない。


「一回、戻して──」

「その組だけ、選び直すのはできない」


 俺が言うと、伊都の手が止まった。

 言ってから、さっき自分も箱へ先に返したことを思い出した。


「今、岳が言い終わる前だったね」


 彼女が小さく言った。

 俺も、うん、と返す。

 それなのに、そこから普通に札を集める方へ戻れなかった。


「伊都、俺が数えてる時は、待ってほしい」

「うん。でも、最初は、わたしが形を見てる途中だった」

「急いで進めた方が、いいと思って」

「わたしも、置いたら分かると思った」


 机の上には、入らなかった形と、余った数が残っていた。

 四角をつまんだまま、伊都が俺を見た。


「岳が先に戻すなら、わたし、何を選べばよかったの」


 伊都が聞いた。

 俺は、残った方、と返しかけた。

 それなら一人でも同じだと思って、言葉を止める。


「俺も、数を伝える前に決められると、見る所がなくなる」


 返すと、伊都は手元へ目を落とした。

 いつもなら、負けた方が次をせがむ。

 今は、どっちが勝ってもいなかった。

 さっき岳と出たいと言われた時には、こんなふうに手が止まると思わなかった。

 彼女も札を集めようとして、俺がまだ持っている一枚を待っていた。

 俺はそこへ重ねてから、指を離した。


 隣の卓で、別の客が駒を片づけている。

 俺は箱を少し寄せ、候補だった棒を見た。

 伊都の指には、まだ四角い札がある。


「……一回、全部戻そう」


 言うと、彼女は札を机へ置いた。


「遊戯会、どうする?」


 さっきまでなら、すぐ出ると答えたはずだった。

 紙の上の二人分の欄は、まだ空いている。

 俺はそれを裏返さず、机の脇へ残した。


「やめたいわけじゃない」

「わたしも」


 伊都は短く返した。

 俺は最初の問題を、もう一度手元へ引いた。

 できなかった理由を、今度は彼女の手より先に決めたくなかった。


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