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一週間付き合った彼女に嘘告だったと笑われたので縁を切ったら、以前から俺を誘っていた美少女が「今度こそ私と遊んで」と言ってきた  作者: 柊ナツキ


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第12話 勝ちたいけど、それは要らない

 体験を終えた所に、小さい記念品の棚があった。

 一人一つ、好きな物を持ち帰れるらしい。


 仁科は金属の知恵の輪を選んだ。

 まだ袋へ入れず、片手で輪を動かしながら、もう片方で昼食の案内を見ている。


「それ、今外していいの?」

「飯までには、戻せるだろ」


 俺が聞いたのは、そういうことではなかった。

 大庭が係の人へ確かめ、見本なら試してよいと教えると、仁科は手元の輪を袋へ入れ、見本の輪へ持ち替えた。


 棚の真ん中には、さっき組んだ形を小さくした飾りがあった。

 俺はそれを一つ選ぶ。砥上なら、もう一番よさそうなのを見つけていると思った。

 本人は、一番端でしゃがんでいた。


「これ、どう思う?」


 手のひらがこちらへ向いた。

 木の鳥だった。丸い胴に短いくちばし。片方の翼が少し上がり、胴も横へ膨らんでいる。

 似た鳥の中で、それだけが斜めに立っていた。


「こっちの方が、形、揃ってるけど」


 隣の一羽を指すと、砥上は、そっちも見た、と返した。


「見た上で、それ?」

「うん。それがいい」


 俺もしゃがんだ。

 さっきは一本ずれただけで、あんなに困っていた人だ。今度は、ずれている方を気に入っている。


「いい景品を取りたくて、急いでたんじゃないんだ」

「榎並より先に作りたかったの」

「そこは、変わらないか」

「勝ちたいのと、これが欲しいのは、別でしょ」


 俺の持った完成形の飾りを、砥上が見た。


「榎並は、そっちが欲しいんだね」

「そう。ちゃんとしてるし」

「こっちも、鳥としてはちゃんとしてるよ」


 言われて、もう一度見た。

 鳥ではある。そこまで疑ってはいなかった。


「伊都、それにするんだ」


 大庭が来た。

 手には、昔の街路の絵が入ったしおりがある。


「これ、呼ばれて、急いで行くところみたいじゃない?」


 砥上が鳥を横へ向けた。

 大庭は少しかがみ、空いている方の手を差し出す。


「倒れそうには見える」

「倒れないよ」


 砥上が棚へ置いた。

 ちゃんと立ったので、大庭も手を引いた。


「本当だ。私なら、そっちの丸いのかな」


 大庭が見せた一羽は、正面へまっすぐくちばしを向けていた。

 砥上は、そっちは落ち着いてるね、と言う。どちらも替える気はなさそうだった。

 しおりの絵をもう一度見たいと、大庭は隣の棚へ戻っていった。


 俺は残った鳥へ、顔を寄せた。


「呼んだの、どっちにいるんだろうな」

「え?」

「こいつが行く方。前? 横?」


 砥上は鳥を持ち上げ、くちばしの少し斜め前を空けた。


「こっち。首だけ先に行ってる」

「ああ。翼はまだ、ついてきてないのか」

「そう」


 返事が、さっきより速かった。

 彼女は俺の見ている方へ、ほんの少し鳥を回した。


「こっちからだと分かる?」

「うん。待ってもらえなさそう」

「待ってくれる相手に呼ばれたのかもしれないでしょ」


 それなら急がなくていいのに、と思って、また見た。

 俺の隣へ、砥上も顔を寄せた。


「榎並、二回見た」

「今ので、三回目」

「数えてたんだ」


 俺も少し笑った。

 形がきれいなのは、今も自分の選んだ方だと思う。でも、彼女がこの鳥を棚の奥へ戻さないのは、分かる気がした。


「昨日の箱に入る?」

「たぶん。青い鳥の隣、空ければ」

「翼の上がってる方は、見せたいな」


 砥上が、俺ではなく鳥を見た。

 自分の手で一度向きを変え、また戻す。


「じゃあ、そっちを手前にする」


 その時、仁科のスマホが鳴った。

 希望していた店の席が空いたらしい。


「四人いけるって。俺、もう外れた」

「輪?」

「輪。飯の方は外さない」


 見本を戻した仁科が、食事の階へ向かった。

 大庭も自分のしおりを袋へ入れる。砥上は鳥の片翼に小さい紙を巻いてもらい、引っかからないよう袋へ収めた。

 俺はその間、自分の飾りを待たせていた。


 席へ案内されると、砥上は記念品の袋を膝の横へ置いた。

 メニューを見る前に一度だけ、中を確かめる。


「置く所、決めた?」

「うん」


 端末を出し、何か短く書き込んだ。


「向き、忘れそう?」

「そっちは忘れないよ。置いた所も、見せようかなって」


 俺が見たいと返すと、彼女は画面をしまった。

 仁科が定食の写真を真ん中へ寄せるまで、俺も、鳥の置かれた白い箱を想像していた。

 四人の昼食が、そこからなかなか決まらなかった。

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