みずうみでさがしてあるく
二階の部屋で資料について少しずつ話しをしつつ、交代でお手洗いをして休む。
ハッシュリシアスは、護衛の癖なのか座りこむと目を瞑る。
おそらく休めるときには、しっかり休めという伝えなのだろう。
神父さまは、落ちついているようにはみえる。
資料から目は離さない。
ライラリックュスとわたしは窓の側で、外を眺めている。
また一機竜がわたしたちとは反対に飛んでいく。
「止められますよね」
「そのはず」
「最近なにかと竜規制がありませんか」
「そうはいっても、個体は減ってるって話しなのよ」
竜規制の話しは、もうずっと前からある。
竜乗りたちは気にしないけれど、竜とあまり触れない者や一部損害を受けた者たちにとっては、竜はその対象だ。
たしかに言うとおり、竜規制はここ一、二年で少しずつされている。
いくつかの話しは聞いているけれど、それの影響がはっきりするのは、もう少し先のことだと聞いた。
若干云いたいこともあるけれど、もう少し経ってからしっかり伝えよう。
「もし、上に上がれないときには、みんな低空になっちゃいますね」
「低空飛行なら、安心かな」
「わたしの竜は、いらいらしそう」
「でも、そんなに高く飛ばないのでしょう?」
「最近はね」
「前には違ったの」
「高く飛ぶときもあったんですが、なんかちょっと遭って」
ライラリックュスは、意外と前からいろいろトラブルに遭っているらしい。
「そう、わかった。気をつけるわ」
「いえ、そんな」
話していると神父さまが近くにきた。
「よろしいですか」
「ええ、どうぞ」
竜の話しだろうか。
「お二人は、竜長いのですか」
「それなりに、ですかね」
「街にも竜乗りはいますが、全盛期よりも竜は減っています。なにか知っていますか」
「いいえ、わたしは」
「……やはり減っていますか」
「そうです。全体で減ってしまうのか、それとも街のことなのか、よくわからないのですが」
「神父さまは、竜を怖がっていませんか」
「平気です。寧ろ本当は好きなのかも。けれど、代表も含めてよく思わないかたたちもいるようですね」
「そうなんですか」
ハッシュリシアスは来ないところをみると、仮眠しているみたいだ。
わたしが云えることは少ないけれど、ライラリックュスは興味はあるようだ。
「竜は、怖いときもあります。けれど、豊富な知識とそれに尊敬もあります」
「尊敬?」
「ヒトに対して、ちゃんと尊敬をしてくれています」
「そうなんですか」
「少なくともわたしの竜は荒っぽいですが、それでわたしが嫌うことはないですよ」
ライラリックュスは怖がっているけれど、理解しようと努めているみたいだ。
わたしは怖いとは思わないけれど、理解はもっとしっかりしたい。
同じだ。
「竜規制の話しですが、竜が減っていることと関係ありますか」
「それは、どうかはわかりません。ただ、わたしは怖がることも規制もある程度は仕方ないですよね。それはわかります」
あまり軽んじることはしたくない。
竜が尊敬してくれていることは、肌身でわかる。
そうでなければ、わたしたちを乗せてくれないはずだ。
「怖いことは、いいこともあります。けれど、代表含めて怖さが勝ってしまうこともある。特に人はそうらしいと」
「それは、竜たちがですか」
「そうです」
「わたしは、ほかにも怖いものはたくさんあります」
「例えば?」
「……ヒトです」
「そうですね。ですが、そのヒトたちは、怖いものは遠ざける、または反対になります」
「攻撃すると?」
「いえ、ごめんなさい。竜規制の話しですね。規制をすべきなのは人ですか」
「竜もヒトも同じなのに」
ライラリックュスのひと言は、わたしはなぜか理解する。
けれど、神父さまはわからないようだ。
ハッシュリシアスが動き出したところで、出発しようとなった。
もう少し先はあるけれど、ここから先は休みは地面だけらしい。
「先ほどのお話し、またしたいです」
「いいですよ。またゆっくりでもできれば」
神父さまの言われる先ほどの話しは、規制の話しではないのだろう。
たぶん竜たちもヒトも同じなのか、という話しだろうと思う。
外は少し曇りがちだ。
けれど、崩れるほどではなさそうだ。
ハッシュリシアスと神父さまが、また先頭になる。
ハッシュリシアスも仮眠を取っていたとしても、話しは聞いていたのだろうと思う。
そういえば、わたしが竜とよく話しをするとしたところけっこう驚いていた。
「前のお二人はけっこう体力自慢」
「ライラリックュスも体力あるわよね」
「ウラナイって体力いるんですよ」
「聞いたことないわ」
ライラリックュスの職業は、いったいなんだろうか。
またしばらく歩くと、だんだんと森がみえてきた。
「森?」
「いえ、その少し横辺りなんです」
遠くからではわからない。
森の中には入らずに、逸れていく。
様子がわかってきた。
たしかに、湖がある。
けれど、どこか様子が違う気もする。
「湖ですが、森の外側なんですね」
「こちらまで来るのは、久しぶりになります」
神父さまは、何度か来たことがあるらしい。
休憩した場所からは、思ったよりは離れていなかったけれど、それでも街からはずいぶんと遠くだ。
「材料ってどこにありますか」
神父さまは荷物を降ろすと、体操している。
なにか懐かしそうな表情だ。
「少しお待ちください」
わたしたちはよくわからないけれど、少し待つみたいだ。
森からは、涼しい風が吹いてくる。
こんな時でないなら、ゆっくりしたい場所だ。
「必要なものは、どういうのなの」
「資料には詳しく書いてあるらしい」
「回収するには、手分けしたほうがいいよね」
三人で話していると、湖からなにか跳ねたりする。
魚かもしれない。
「まずは一つですね」
「え! なんですか」
神父さまの近くにいくと、なにか足元に落ちている。
「魚です。この魚は水のなかにある邪魔なものをくわえて吐き出すんです」
「えぇ!」
「これを待ってました」
「ともかくみつかってよかったな」
跳ねていると、また違うものが落ちてくる。
「あ、また」
拾うと、水のなかにあったため濡れているけれど、小さいなにかの素材だ。
「次は、森のなかですね」
「森ですね」
「なにがあるんですか」
「いってみよう」
ハッシュリシアスがなにか楽しそうにしている。
探しものが楽しいらしい。
森に入ると、少し暗くなる。
木の実や草だろうか。
神父さまは資料を片手に探しまわる。
先ほどの湖に大きい荷物は置いてきたみたいだ。
「慣れてますね」
ライラリックュスがいうのもわかる。
森も来たことがあるらしく、わたしたちとは違い、あまり整備されてもいないのによく歩く。
木の上をみたり下を見たりする。
落ちているのかと思ったら、違うのを探している。
「なにか目印は?」
「たぶんいるのですが、見当たらないです」
「いる?」
言われてみると、木の上をなにか走っていく。
小動物が木の上を伝いながら、移動している。
「あの動物がおそらく運んでくれます。いきましょう」
素早いため、ときどき影しかみえないけれど、それでも追いかけていくと、背の高い木の上で集まっているのがみえる。
「ここですね」
木の根元にたくさんなにか落ちていた。
「これですか」
「そうです。いくつかでいいので集めましょう」
ここの木の上で過ごすらしい。
それで、この小動物のあとを追いかけていたみたいだ。
「拾いました」
「それじゃ戻っていきましょう」
来た道を戻りつつ、集めたものをライラリックュスが預かり、それを持ってきていたバックに収めている。
「これで二つめですね」
「まだありますよ」
神父さまは資料に載っていたものを集められる場所はここだと目的地にしていたらしい。
「それじゃ、みんなここでみつけられますか」
「そのはずです。ただ数個ムズカシイものもある」
気になるため、たずねてみる。
「もしかして、神父さまはここの湖は遊び場所かなにかで?」
「よくわかりますね! よく釣りに来たり、動物たちを観察しにきたりしています。もっともここ最近はしばらく来ていなかったため、変わっていないか心配でした」
「そうなんですか」
「街も地域も少しずつですが、変化しています」
森を出たため、先ほど置いてきていた神父さまの荷物の側に集まる。
また数個魚が飛ばしたのか、湖の側に転がるものもある。
「二つめですが、あといくつですか」
「あと三種類は必要です」
「三つめは」
「湖の反対側ですね」
ハッシュリシアスが荷物を持つため、周りに散らばるほかの転がるものも集めてから、動き出す。
湖はそれほどには大きくない。
二十分もすると反対にきていた。
「こちらではなにをしますか」
「さきほど跳ねていた魚が今度は、別のものを運びます」
「また来るかな」
「こちらのは、鳥が狙ってくるため」
「あ!」
魚が跳ねたあと、すぐに低空で鳥がきて、それを咥えてしまった。
「失敗ですね」
「次だ!」
鳥が来る、と思った瞬間にライラリックュスが水のぎりぎりまで近づき、ジャンプして捕まえる。
「できました!」
「すごい!」
手のひらにあるそれを見せてくれる。
反対のでみたのとは、似ているけれど違う。
「やはり何名かいると簡単ですね」
「前にはこれはどうされたんですか」
「水の中に入ってきました」
「それはなんとも」
寒い時期でなくてよかった。
いや神父さまが来たのははじめてじゃないから、もしかしたら寒い時期にも来ていたかもしれない。
「よし次」
「休みませんか」
「次も!」
ハッシュリシアスはすっかりやる気だ。
次の探しものは花弁らしい。
目印はとたずねると、赤いのと桃色のみたいだ。
周りには見当たらないけれど、近くらしい。
「森のなかですか」
「いいえ、少し歩いた先にあった気がします」
神父さまと歩いていくも、まだ見えてこない。
「この先ですか」
「だいぶ前のことになります。場所がわからないかもですね」
「分けますか」
ハッシュリシアスが少し離れるため、腕を掴む。
「ちょっと待ってね」
「どうした」
そういって別の方向に向ける。
まだ花の拡がる場所は見えない。
けれど、風があるため花弁が足元にいくつか落ちている。
「ほら」
「こっちだな」
少し歩くと花畑がみえてきた。
畑といっても、手入れがされたものではないだろう。
自然と拡がるものだ。
「わぁ」
「きれいですね」
ライラリックュスが子どもの頃のようにはしゃぐ。
「これウラナイに使えそう」
商売のことは、頭から離れないみたいだ。
「せっかくなら楽しめれば、いいのに」
「え、楽しんでますよ」
「商売抜きでね」
「ウラナイ……省くのはなかなかムズカシイ」




