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ヒロイン  作者: 十矢


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22/30

ちゅうしんぶからはなれて

 ハッシュリシアスが来たため、教会のなかに入っていく。

 外からみたところでは、そんなに大きい建物ではない。

 上に細くなり、後ろの敷地はわからないけれど、正面と上方にセイントクロスがある。

 けれど、入ってみるとけっこう奥があり、席数もかなりある。

 上も思ったより高くみえる。


 ヒトは前に集まるも、ざわついている。

 わたしたちが入っていっても、あまり気づかないくらいだ。

 話し声が聞き取れないけれど、前方や右隅(みぎすみ)で話し合っているようだ。

 ようやく聞こえる位置まできた。


「これで何例めだ」

「そうはいっても」

「シスター神父はいまどちらに……」


 正面に集まるのは、シスターの話し合いらしい。

 右隅の集まりは、なんだろうか。

 ハッシュリシアスが側までいくも、また戻ってくる。


「神父さまが不在らしい」

「そうなの」

「シスターに話しているが、神父さまが戻ってこないとわからないと」

「右の話しは、なにかしら」


 三人で右に近寄ると、簡易ベットのようなものが拡げられた床で、一人寝かせられている。

 いまは眠っているようにみえる。


「呼びかけたのか」

「前と同じだ」

「どこで」


 近づいたあと眠っている横顔をみるも、苦しんでいるようにも怪我をしたようにもみえない。


「眠っているみたいな感じです」

「ねぇ、これってなにかの病気?」

「いや、違うんです。そういうのに詳しいやつに聞いても、生きてるって」

「でも」

「神父に調べていただいてるんだが、噂では街中の呪いじゃないかって」

「呪い?」

「少しずつ増えてるんです」


 話しの途中でハッシュリシアスとライラリックュスが腕を引っ張るため後ろに下がっていく。


「おいおい、さっき聞いてたか?」

「そうですよ」

「なにか詳しく聞かないと」

「聞いてみて、もしかしてなんとかするって気になるか」

「そうですよ」

「とりあえず聞かないと……」


 わたし自身そういうけれど、聞いてみてどうするかは考えていないことに気づく。

 もしかして、それか。


「聞いてみてから、判断するときもあるけど」

「二人さっきからのは、そのこと? わたしがなんでも引き受けるのは、どうするか考えていないって」

「その通りじゃないですか」


 二人ともそうらしい。


「やだなぁ、ゼンブ引き受けるわけじゃないわ」

「それじゃ」

「断るのも、半分……いえ、三つにひとつ……」

「まだあるんだな」

「そんなにわたしを頼るなんて、あまりないわ」

「それじゃ、これが倒れてるだけじゃなくて、なんだと思う?」

「呪いはちょっと……でも、少し調べてみないと」

「調べるのは、いいが、神父さまもいないし」

「まだあるわ」

「どんなのですか?」


 教会の後ろのほうで、相談をする。

 特に聞かれても問題ないはずなんだけど、なにか二人があまり関わらないようにしている。


「神父さまは少し探してみて、あと絵描きもみかけたら聞かないと」

「絵描き?」

「絵も探してるのがあるから」

「依頼ですね」


 アオもわかればいいけれど、そちらは大変そうだ。


「絵って……探すのが依頼なのか」

「以前みた不思議な絵を探してるっていうの」


 ハッシュリシアスが、また難しい表情だ。


「絵を一枚探すのか?」

「そう、いえ。一枚なのかわからないわ」


 とりあえず教会を出たそうにしている。

 わたしたちが出口に向かうと、また別のヒトが入ってくる。

 たぶん、いま運ばれてきたヒトの様子をみにくるのだろう。

 通り過ぎるときに声が聞こえる。


「呪いだよ」

「ここは教会だよ」


 できれば呪いであっては、ほしくないけれど、あまり関わらないようにしたほうがいいらしい。


「あまりわからなかったわ」


 出てからそれでも、敷地から離れて二人に話す。

 二人が同時に応えてくれる。


「病気じゃないですね」

「病気の症状じゃないな」


 驚く。

 あまり興味がなさそうにみえたからだ。


「二人わかるの?」

「城では、けっこうさまざまに症状みるからな」

「わたしは、ウラナイ最中によくいるんですよね」


 なんだか複雑だ。

 でも、もしかしたらだけど、二人にももっと……


「あまり深入りしないけど」

「そうですよね」

「二人って、もっと協力とかしないかな」

「やっぱり!」

「え、なに」

「頼まれること考えてないですか?」

「ないわよ」

「あまり街のことひとつひとつに関わるのは、この先大変ですよ」

「そうだと思うぞ」

「特にそんなつもりは、ないわ」


 そんなことは、ないつもりなのだけど、そう思えばいまも教会で呪いについて詳しく聞こうかと思っていた。

 倒れているヒトの様子ももっと観察したかった。


「とりあえず、神父さまを……」

「二人とも心配してくれてるのね」

「心配……まぁそれに近いな」


 あきれているのは、心配してくれていたことらしい。


「そっか。そうね、もう少し慎重にするわ」

「そうですよ。まずは神父さまですね。でも、どうやって見つけるんですか」


 それには、少し心あたりがある。


「居場所っていうか、探すのはわかるかも」


 ハッシュリシアスは一度教会を伺ってから、またこちらをみる。


「知り合いじゃないよな」

「ここの街の特徴がなにかありそうよ」



 教会は街の中心ではないけれど、ここの街路は十字に拡がる。

 外の門はあるけれど、真ん中が広い敷地があり、竜も多少なら降りることができる。

 神父さまがいるとは限らないけれど、いってみることにする。

 ライラリックュスとウラナイを探しながら歩いたため、少しは詳しくなった。

 はじめにきた入口やウラナイのあった路地ではなくて、まだ入っていない路にいく。

 そちらに、教会があるわけではない。


「こっちには、なにかあるのか」

「いってみるわ」

「この辺り、絵描きとかいそう」


 さきほどの道よりは広くはないけれど、三人でも歩ける。

 少し入っていくと、足元に近い場所や高い場所に小さい絵がみえる。


「足元のは、動物ですか」

「上にいるのは、ずいぶんと派手だぞ」


 進むごとに絵が増えていく。

 あまりヒトが住んでいないのか、静かではあるけれど、あちらこちらにあって、こんなに描いていていいのかな、と少し気にはなる。

 そういえば、受付のヒトも困っているような表情にみえた。


「こんなに絵、描くんですね」

「一人じゃないかもな」


 ヒトが住んでいそうな建物もあるけれど、ここの路は利用が少ないのだろうか。

 ときどき分かれ道があるのだけど、その都度どうする、とたずねては意見はバラバラで真っ直ぐいったり曲がってみたりする。

 そのうちに、行き止まりのときもあり引き返す。


「どこにいるんだ」

「迷子なんですか」


 少し不安になってきた頃、ひとつの通路のような場所で梯子がかけられていて、その上に誰かいる。


「いた、この子ね」


 近づくも気づいてはいないらしい。


「このヒトですか?」

「そう」


 高い場所にいるため、声を少し高くして呼びかける。


「作業中でしょうけれど、少したずねたいことがあります!」

「……はい。いま下りるため、少し待っていてください」


 なにか腰にたくさん物がついている。

 にぎやかな音をさせつつ、少しずつ下りてくる。

 近くでみると、けっこう若いヒトらしい。

 顔や腕など、インクがついている。

 けれど、近くでみるとキレイな顔をしている。


「キレイな絵ですね」


 いまはまだ描きかけだろう、壁の絵ではあるけれど、印象に残るような絵になるのだというのは、わかった。

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