ふめいなじょうきょう
かなり曖昧な状況ではあるけれど、ひとまず竜は離れた位置に降りたため、それぞれで地面に降りていく。
ライラリックュスがお尻を叩いているのは、飛ぶ間よほど力を入れていたのだろう。
今度優しい乗り方でも、話してみよう。
ハッシュリシアスは、腕をぐるりと回す。
戦うわけでもないだろうけど、腕や首が疲れるのは、同じだ。
わたしも少し身体をほぐしてから、入口まで歩いていく。
竜のヒロスターニャも、身体をほぐしているのは、飛びかたというより、また飛ぶのかわからないためだ。
「どう思うの」
「どうって言っても、なんで入口から動かないのか」
「上の気になりますよね」
ライラリックュスもあとからきて、上を確認している。
上の竜は降りようとしないというより、なにか警戒している感じにみえる。
入口近くまでいくと、なにか街のヒトと、外からの竜乗りが話しこんでいる。
「……いつになったら、入れそうなんだ」
「まだ、わかりません」
「なにか説明くらいは」
「待っていてください」
近づいていき話しこんでいる複数名とは、少しだけ離れているヒトに話しかける。
「これ、どうなっているんですか?」
「さぁ」
「様子は」
「様子っていってもね」
ハッシュリシアスも同じように、たずねている。
「これなんですか?」
「さぁ」
「なにかは」
「よくわからないのさ」
ここにいる複数名は、なにもわからない状態で、街の外にいるらしい。
ライラリックュスがわたしとハッシュリシアスの腕を引くと、さらに少し離れてから立ち止まる。
竜とは、まだ距離がある。
「二人は、これなんだと思いますか?」
「わたしは、街なかで竜が暴れていたとか」
「竜の規制とか。ときどき大陸の連中や教会関係がそういうのするだろ」
「なんか違うんですよね」
ライラリックュスは、なにか察しているのだろうか。
「暴れてないかな」
「ほら上に竜いるでしょ。街中でなら、そのあと降りて抑えたり、返って中心部分に集まるじゃないですか」
「そうねぇ」
「それじゃ規制じゃないか」
「でも、規制でしたら、さっさと入口で検査してみたり、荷物預かりとかするんじゃないですかね」
みていると荷物を点検したり、なにか聞き取りをしているわけではない。
「でも、それじゃなにかしら」
まだ、思いつくことも多少はある。
「罠」
「わなかぁ」
「罠って」
なんだろう。
「それなに」
「そうだ、なんだ」
わたしも納得は、していない。
「何に対しての罠になるのよ」
一応リーダーっぽくたずねてみる。
「リーダーっぽい」
「それいいから」
罠ねぇ。
けれど、たしかになにかの仕掛けをしている気がする。
なにか待っているのだろうか。
「なにかここの土地で変わったこととかあるのかな」
「あまり詳しくないけど、ここの辺りなら鉱石の採掘や調査とか」
「それならもっと谷にもあったわ」
「あとは……竜に関することじゃないなら」
ハッシュリシアスが、なぜかライラリックュスをちらりとみる。
「なにかある?」
「ヒトや団体とか、かもな」
「どういう意味なの?」
「待っているとして、それだったら、街になにかがくるまでの時間とかじゃないか?」
なにかを待っているから、ここを通行止めにしている、ということらしい。
もう一度聞いてみようかと、わたしが足を動かすと、入口の街のヒトが来たと叫ぶ。
「なんでしょうか」
わたしたちの竜より小さい竜が何機か、わたしたちの後ろから速さをだして降りてくる。
抜かしてから、入口近くのヒトたちも驚いて避けている。
かなり慌てて街のヒトたちは、なにか降ろすのを手伝うと、中に入っていく。
「あれってヒトよね……」
「荷物もなにか持ってますね」
「それより、もういいらしい。勝手に通ってるぞ」
入口で塞いでいた街のヒトたちは、全員なかに戻っていくため、そこに集まる竜乗りたちもあきれつつ、中に入っていく。
「いきましょう」
上で周回していた竜たちも、少しずつ広場に降りているのがみえる。
「あれを待っていたんですね」
街中は騒がしいけれど、それは中央に位置する広場の感じだけで、ほかの住宅などは静かな場所がおおい。
広場に来ると、もうさきほど降りてきた竜たちは、違う場所にいるらしく、姿はみえない。
「さっきのヒト平気なのかな」
「ライラリックュスは姿みえたの?」
「いえ、だけど、かなり急いでいたし怪我とかでしょうか」
ハッシュリシアスは、街中で聞き込みみたいだ。
そうはいっても、みえるのは外部の竜乗りか開いている露天などで街のヒトたちは、ほかはあまりみかけない。
「教会かな?」
「やっぱりそうですよね」
ライラリックュスがそう思うのは、広場の近く、少し歩いていくと教会があり、その敷地の門が開いていて、そこにつめかけているようなざわざわ感がある。
けれど、教会に押しかけても事情を話してくれるとは限らないため、ここの街にある職業紹介所にいってみる。
受付には、リナミィナよりさらに若い子がいた。
けれど、目はするどいし髪を短くし、きちっとしているため、返って話しかけにくい。
「ここのウラナイって」
「はい! ウラナイですか?」
すぐに返事がくるため、ライラリックュスが戸惑う。
「そうです。何軒ありますか。あと、こちらの端末で……」
「端末ですね。どうぞ」
リナミィナがテキパキ設定してくれたおかげか、ライラリックュスは受付はすぐにできた。
けれど、ウラナイの紹介は、自分で検索している。
わたしも空いている端末で自身のをタッチしてから、話しかける。
「こちらに絵描きや素材屋などってありますか」
「絵描きですか?少しお待ちください」
手元にある端末でなにか確認したあと、こちらに向きなおる。
「登録では、ありません」
「そうなんですか」
「ですが、路地で絵描きはいらっしゃいますよ」
登録していないってことらしい。
「未登録で絵描きですか?」
「そうです。街はずれにいたり街の一部に描いていたりです」
「それは、いいのかな」
「お待ちください」
また端末をみている。
「未登録なんですね」
「いいかは、こちらには書いてませんが、住民もあきれているのか、そのままのものもあります」
自分で探すしか、ないらしい。
離れてから、ライラリックュスをみると、まだ端末を検索していた。
「ウラナイそんなにある?」
「いいえ、違うもの」
「少しみてるね」
まだかかりそうなため、この場所の掲示をみたり窓の外をみたりする。
やはり、こちらの中に来ても訪れるヒトが少ない。
街の道にも少ないし、あの場所に集中しているらしい。
掲示には、探し竜の情報や鉱石の新発見場所の情報、以前わたしたちの遭った毒の霧の現場の続報などが貼られている。
読んでいると、ライラリックュスが声をかけてきた。
「いいですよ」
「おわった?」
「これ、みてもらってもいいですか」
近くにいくと、端末を指している。
「ウラナイのなら、わたしわからない」
たしかに、ウラナイのもみていたらしいけれど、いま表示されているのは、別のものだ。
怪我や急病などが項目ででている。
「この辺り」
「原因不明……?」
場所を検索しているのかと思っていたら、そのほかのは、最新の記事や話題を調べたらしい。
ここにある端末の使いかたではないけれど、それはそれとして読んでしまう。
「なんでしょうか」
そう言われても、曖昧な話しにはなる。
原因わからず。
竜にも同じ症状。
怪我をしたのか。
専門職不在。
教会での集会。
「これだけだと、わからない。もう少しわかるのないかな」
ライラリックュスに返すと、ライラリックュスも端末を返却した。
あまり受付の側では、話しにくい。
少し離れてから、ベンチに座る。
「原因わからないのに、専門って」
「竜たちは、身体丈夫なはずよ。でも、高熱や魔力切れ、飛び過ぎの疲労はヒトと一緒」
でも、どこで調べればいいか。
街のヒトは、教会に集まっているようだし、あれ以上のは、端末でもでてこないみたいだ。
「竜たちに聞いてみますか?」
「竜たちって」
「街の外で待機してたじゃないですか」
「あの竜たちは、外からきてるし」
「違う竜たちも」
「あ! あの上で待機していた竜ね」
職業紹介所を離れてから、竜たちがいそうな場所を探す。
けれど、ここの街の地図もわからないため、まずは、どうしたらいいか。
「待機場所って広いところですよね」
「そうだけど、広場にはもういないし」
わたしたちの竜たちは、街の端にある少し狭いけれど、竜専用の食事場所にいくと言っていた。
そちらまで、ライラリックュスと歩いていく。
途中露天で声をかけられるも、いまはあいさつくらいだ。
専用の食事場所まで来るも、わたしたちには広いスペースでも、そこで食べているわけではなかった。
飲みものくらいにして、ほかの竜たちと話しこんでいる。
「なんだ、用は済んだのか?」
「いえ。ちょっと聞きたくて。竜たちの間で原因がわからないなにかが、ここであるって聞かない?」
曖昧な話しだから、伝わらないかもしれない。
ヒロスターニャがほかの竜をみたあと、少し移動していくため、ついていく。
「不明だと言ったか」
「そうね」
少しほかの竜と距離が開いてから、立ち止まる。
「なんだ。ちょうど向こうの竜が、そういった話しをしていたな」
「そうなの!? それじゃ」
「いや詳しいのは聞いてないし、あまり話したくなさそうなやつだぞ」
「どういうの?」
少し間をあける。
まだ三日経ったわけじゃないから、覚えているはずだ。
「不明ではあるが、倒れているとか言ってるな」
「倒れる?」
「あぁ怪我でも病気のやつでもないのに、倒れているやつがいるとか」
「それって、寝てるとか?」
「さぁ……だが、それに近いかもな。言い方はわからないが、竜も倒れている。ヒトもいるとか。けれど、街のやつも、それを探してるのかも。慌ててきた竜も、様子おかしいな」
「ちょっと……まずいわね」
「あぁ……逃げるか」
いや、わたしたちが悪いことしたみたいじゃない。
けれど、ヒロスターニャも少し不穏に思っているのはたしかだ。
「わかった。教会に集まるのは、そういうことなのかも」
「なにか、わかったのか」
「えぇ」
ライラリックュスをみると、なぜかあきれている。
「なに? なんか変かな」
「ねぇ……教会にいくって感じですよね」
「そうね」
「でも、そんな事情なら、あまり外部に伝えたくないんじゃ」
「だけど、困って……」
「それです!」
「えっ?」
ヒロスターニャも頷く。
「困ってるとこに、体当たり? みたいな」
どういう意味なのだろう。
まさか、わたしの現在の見え方なのだろうか。
「そんな、困ってるからって教会にいって話しするだけよ」
「う……ん……そうですか。ちょっとハッシュリシアスにも意見をたずねてみましょう」
なにかわたし、したのだろうか。
よくわからないけれど、ハッシュリシアスをまず探すことになる。
竜とわかれてから、また中央の広場に向かう。
少しいそうなお店をみていくも、姿がみえない。
広場まできて、とりあえず左に曲がる。
端末でみていたときに、ウラナイのお店がそちらにあるということだ。
四軒と少しあるというけれど、その少しというのは、なんだろうか。
「ウラナイってほんとに小さい場所でも、できるんですよ」
そのほんとに小さいお店は、みつかるお店なのだろうか。
通り過ぎそうになって、みつけたひとつに入っていく。
ライラリックュスが、なかを見回しながら、声をかけている。
「ここは、どんなのするんですか?」
「割となんでも運勢ですよ。得意なのは、ヒト関係と土地かな」
「道具は?」
「道具は、あんまり得意じゃないから、顔みたり、少し身体見せてもらったりですよ」
ライラリックュスが、こちらにと呼ぶため、椅子に座る。
わたしがされるのか。
「どう?」
「占いですか」
「いいえ、みた感じのことね」
「みた感じねぇ……」
少しジロジロみられて、なんだか居心地悪い。
「どう美人でしょ」
「それより、なんだかいろいろ抱えるようにみえますね。ちゃんとじゃないけど、ときどき逃げないといけない」
「そう……ありがとう」
「おいおい、それだけですか」
ライラリックュスが肩をつつくため、もういいらしい。
なにか払うひまなく、外にでてしまう。
「よかったのかな」
「いいんです。よさそうだけど、もっと腕をみがく感じがいいかも」
なにか手帳にメモしている。
またライラリックュスが歩くため、ついていく。
「次のもなの?」
「次っていうのは」
「わたしがっていう意味」
「そうですね」
ライラリックュスは街に降りると、いつもこうしているみたいだ。
少しだけわかるのは、腕ためしもあるけれど、なにかウラナイに必要なのを探しまわっているということだ。
わたしが試されている気分には、なってしまう。
「わたし頑張るね!」
「そんなに気合い入れるようなものじゃ」
次のお店は、割と近くらしい。
いま来ていた道を戻り、十字を左に曲がる。
少し歩くと、路地裏に入っていく。
薄暗い路地にも、ところどころ上から光りが斜めに入る。
行き過ぎてから、また戻る。
「ここなのかな」
「うん。入ってみましょ」
狭い路地の中央ほどに、また道があるも、入れるか心配になるほどだ。
それでもそこを少し進むと広くなる。
数軒だけお店がみえる。
そのひとつに入っていく。
「いらっしゃいませ」
「ここ分かりづらいですね」
「よくみつけてきましたね」
フードをかぶった女性だ。
でも、話しかたから若いヒトらしい。
「支払いなしでできるのってありますか」
ライラリックュスは、はっきりと言うも、驚いていない。
「そうですね……お座りください」
また前をすすめられてしまった。
「このかた、できれば仕事運みたいなのとかありますか」
仕事運っていうけれど、わたしのでよかった運ってないのだけど、いいのかな。
「そうね。支払いなしだと、本当にお話しだけよ」
「いいです」
そういうことらしい。
二つ三つ質問に応えると、雑談に近い話しをされた。
わたしには、よくわからない。
「そうですか。ありがとうございます」
ライラリックュスは、もう戻るようだ。
気になり、話しかける。
「こういったこと、よくあるんですか?」
「こういう?」
「支払いもなしで、商売いいんですか」
「あぁ! なんとなくわかるから、いいわ」
外にでたあと、ライラリックュスがまた動き出しそうになる前に、質問しておく。
「こういうの、よくあるのね」
「お店回ることですか?」
「いいえ。支払いもしないのに、お店回るから」
「それですね。修行というか、研修というか、それぞれで得意なのとかあるんですよ。腕をはかるのにも訪れたほうがいいって」
「そっか」
ライラリックュスのウラナイの方針みたいなのが、そこにあるみたいだ。
なかなかハッシュリシアスに会わない、というか、路地じゃなかなか会わない、と思っていたら路地を戻りひとつみつけたショップをみると、ハッシュリシアスがお店のなかから、出るところみたいだ。
「みつけたわ」
出てきたため、声をかける。
「いま探してました」
「そちらは、なにかみつけたか?」
「教会にいくと言うのですが、原因不明のなにかで、倒れている現象みたいです」
こんな説明でハッシュリシアスに伝わるのだろうか。
「そうか。あまりいかないほうがとも想うが、いくのか?」
「そうみたいです」
「それは、困るな」
あきれている。
伝わるらしい。
「でも、街の竜たちも困ってるのよ」
二人して、なにか別のことを考えているようだ。
「そうか。まぁそれならな」
教会にいくのに賛成なら、そう言ってほしい。
「ハッシュリシアスはどう?」
「教会の前で集まるのでいいか? もうひとついくから」
「わかったわ」
先に教会の前にいけば、いいらしい。
買いものもしてからと思い、ライラリックュスと相談しつつ、お店に寄ることにする。
小さいビルではあるけれど、二つほどのお店にいき、多めに食料と一応で装備品を追加する。
ハッシュリシアスの分も、必要なものがよくはわからないけれど、余分に仕入れておく。
一度買いものを竜の場所に置くと、また教会に向かう。
多めに食料を持ってきたことを伝えた。
教会の前にいき、ライラリックュスが聞いてきた。
「確認ですけど、あまり無茶なことは」
「わかった」
「本当にですか?」
「わかったわ」
ハッシュリシアスを待つ間、心配そうにこちらをみる。
ヒロスターニャもなんだかあきれていた。
わたし、そんなに無茶なことしたかしら。




