わたされたしゃしん
夜中まで話しこんでしまい、また寝不足だ。
ライラリックュスは、ウラナイに真面目過ぎるのだ。
もっとも仕事としている部分と、プライベートで悩む部分とが、一緒になっているらしい。
わたしが提案した依頼は、保留されてしまった。
しばらく考えたいとのことだ。
信頼されてるな、と感じる。
リーダーと言ってくれるのは、案外本気で言っているみたいだ。
朝にハッシュリシアスの部屋にいき、朝食をたずねる。
「ハッシュリシアスいる? 朝食べるの?」
「朝は食べるが、少し待ってくれ」
「はぁい」
聞かなかったけれど、一緒に食べるということでいいのだろう。
部屋に戻り、次の行き先を考える。
ハナも絵も、なかなか繋がりのあるものがわからない。
時間をかけてみないと、いけない。
飛んできた方向から考えてみると、山か海を少し飛んでいき向こうにいくか、それか、陸をしばらく飛んでから大きい街を探すかになる。
手元にある端末を睨むと、ライラリックュスが笑っている。
昨日よりは、気分がよくなったのかもしれない。
「ライラリックュスは、準備もういいの?」
「食べてからにします」
「わたしもそうしようかな」
「決まりましたか?」
「悩んでいるのよね」
ハッシュリシアスが来たため、外に朝食にでる。
昨夜に、買っておいてもよかったけれど、ここの街も今日飛ぶから、外のお店で食べることにした。
朝はまだ街中は、夕方ほどではなくて準備に動くのは、お昼過ぎてからなのかもしれない。
向かいあってから、改めて聞いてくる。
「それより、夜中まで騒がしいな」
「あら、部屋まで聞こえてたの」
「バタバタしていただろ。それくらいはな」
看板に、いま売り出し価格のパンとあって、お祭り用に大量に仕入れた価格らしい。
「おいしいね」
「ここの地域は、食べものはいいですよね」
これなら竜たちもいい食事になっただろう。
あまり過疎化が進む地域にいくと、竜たちの食べるものが少ないときがある。
「決まったか? 行く場所」
「まだ悩んでるの」
ライラリックュスと同じ内容を聞かれてしまった。
「山沿いに進むか、それか海」
「陸地は?」
少し驚いている。
「大陸にいくのか? たしかに続いているが、あまりよくない噂とかあるぞ」
「ハッシュリシアスのいる地域は、平気なの」
「こちらは、まだ平和だな。といっても、もう怪しい噂はかなり届く」
「妖精噂ね」
もし、と食べながら話しが進む。
「もし、大陸なら」
「それなら、もっと装備品積まないといけない。いきなり竜が撃ち落とされる場所だぞ」
わたしのイメージと、けっこう違う。
わたしが以前いったときには、そんなではなかった。
以前いた場所だ。
それとも、少しの期間で状況が違ってしまったのかもしれない。
「ライラリックュスは、大陸はなにか聞いたりした?」
「大陸……ですか。あまりいい話し聞かないです」
「そうなんだ」
「ウラナイの材料には、困らないらしいです……たぶん」
「いろんなアイテム使うのね」
「使わないヒトもいるけど、アイテムからの魔力がけっこうためになります」
ライラリックュスは、お腹いっぱいに食べるらしい。
わたしは朝は少食なため、もういっぱいだ。
まだ二人は、かかるだろう。
飲みものをまたひとつ頼む。
ライラリックュスがときどきハッシュリシアスのことを観察するように、みているときがある。
ウラナイの結果も気にしているようだし、なにか様子が変化していないか、みてしまうのだろう。
わたしの飲みものがくると、二人も追加で飲みものを頼む。
ここからは、あまり窓が見えないけれど、少し窓の外が気になる。
気にしているのは、竜の食事のことだ。
夜には山のほうで食べてきたらしいけれど、朝はどうしただろうか。
風の竜の様子も聞きそびれてしまった。
「怪しい噂って、どういうのなの?」
もう少し、ここの場にいそうなため、話しを聞いてみる。
種類はどういうのだろう。
「いろいろあるな。上に浮かぶものは、全て撃たれるとか、雲からなにか降ってくるとか、食事には気をつけろとか」
「撃たれる?」
「降ってくるの? 食事」
「竜同士で闘わせてるとか、魔力貯蔵をしすぎて、爆発起こしたとか」
「なに……それ」
「とにかく、際限なく妖精噂というには、危ないものをよく聞く」
「食事……毒?」
「そうだな。外部から入ってきたやつには、スパイが必ず接触してくるらしいし」
「それどこのセカイなのよ……まるで……」
「そう! まるで、戦を起こす準備してるようだろ。だから、怪しいって」
「アタマいたい!」
「どうした?」
「いいえ……」
竜にどう話しすればいいか、考えてしまう。
そんなはずはないのに、そういう妖精噂があちらこちらであるらしい。
「ライラリックュスもそう?」
「うん……まぁそんなところかもしれないです」
「そっか」
ライラリックュスの話しもそう聞くなら、やはりそういったことは、あるのだろうか。
けれど、やはりどこか違う。
そういえば以前の街中の話しでも、不穏な話しが何度か聞こえてきた。
わたしがぼーっとしていると、二人がここのお店の感想を話している。
なかなかに好評では、あったみたいだ。
「山のほうも様子みにいきますか?」
「竜たちは、また集会かな」
「どうだろ、夜は落ち着かなかったけど、いまごろなら街中で食べるところかもね」
そういってお会計に向かう。
少し並んでいるため、待っていると、並んでいるヒトがこの地域の話しをしている。
「お祭りできそうだってね」
「竜が返事したって」
「またいい宝石がみつかるか」
なんだか聞いていて、嬉しくはなる。
風の竜が戻ってきたことで、お祭りの話しが盛り上がっている。
あの竜にとっては、自分のおかげではないとも話していたけれど、やはり竜のいるお祭りなのだ。
外にでて、どこに向かうほうがいいか。
「職業紹介所は、どうしますか?」
「先に」
「いいえ、竜と話してからにするわ」
朝に少し出ると言ったきりだから、そんなに街のはずれにいったわけでは、ないはずだ。
「ここの近くで食事って」
「大きい食堂がひとつ」
「そこは、ヒトの食事場所だったわよね」
「あとは」
「中央の広場か」
「あ、上からみたときに、少し離れて、もうひとつ屋根付きの広いところあったです」
「そこかもね」
三人で、そのまま向かい歩きだす。
歩きながらの話しは風の竜の体調と、これからの装備品だ。
大陸にいくかは、まだわからないけれど、備えはしなくてはいけない。
あまりに地方にいくと、食事量も少なくなるため、竜たちのお腹も減りぎみになる。
「けっこう食事ないと、文句言われるわ」
「そ、そうですか」
「竜の食事、がまんするのはムズカシイのか」
「わがままってほどじゃなくても、話しがひねくれてくるわ」
「なんだか、どんな話しになるのかは、気になります」
「あとでね」
「ここの街もそんなに、大きくはないから、寄るならもうひとつ大きい街だな」
「近い場所であるかしら」
ようやく山とは、反対側の方向になる屋根付きの広い場所に出た。
ここは雨もしのげるし、集まりやすそうだ。
だんだんと観えてくると、それなりに竜たちが集まっている。
一応食事もしているから、ここの街で仕入れたのだろう。
近くにいくと、まるで見張りのようにして、待ち構えている竜がいる。
知らない竜みたいだ。
「まて……いまは入らないほうがいい」
「どういうことなの? 呼びにきたのだけど」
「まて……少しみてくる」
ゆっくりとした動作で、向こうまで歩いていく。
「どうしたのかしら」
またゆっくりと戻ってくると、なにか頷いている。
「もういいらしい。見張りを頼まれていた」
「そうなの」
「大した話しじゃなさそうなんだがな。すまない」
「いえ、ありがとうございます」
その竜は羽を拡げ、なにか側にあったものを掴んでから、飛び去っていく。
「食事のお礼もらっていたな」
「その代わりに、見張りしてたんですね」
近くまでいくと、ヒロスターニャとほか五頭ほどの竜がいるも、食事も途中でやめにして、話していたようだ。
「なにかあったの?」
「いや、妖精噂さ。少し興味深い」
「食事はとれたの」
「ま、なんとかな」
先に飛んだ竜に見張りまでしてもらって、それでも少しだけの話しらしい。
二人の竜も、話しかけてはいるけれど、同じような内容らしい。
後ろにいる二人をちらりとみたあと、こちらをみる。
「それで」
「大陸は、ちょっとまだなため、その前に海か山越えて広い街に降りるわ。そこで装備品買い増しする」
「そうか」
まだヒロスターニャのさらに後ろにいる二頭の竜は、話しこんでいる。
こちらに聞かれていても、構わない内容らしい。
竜が上をみるため、わたしも上をみる。
「風があるな」
まだそんなに荒れてはいないけれど、ゆったりと風の音がする。
「そういえば、泣き雨らしいわ」
「泣き……」
「お祭りの時期になると、晴れても雨だって」
「そうか、早めに出るようにして、正しいのかもな」
「そうね」
街の広場で一度降ろしてもらうと、職業紹介所にいく。
リナミィナに、この街から離れることを伝えなくてはいけない。
紹介所の中は、朝から混んでいるようだ。
景気が好くもわるくも、リナミィナは忙しいらしい。
少し待ちそうなため、竜には一度待機してもらい、三人で並ぶ。
カウンターがなかなか進まないけれど、リナミィナは、こちらを認識はしているみたいで並んですぐで、軽く手を振ってくれた。
待っていくと、カウンターでリナミィナが営業事務笑顔で応える。
「おはようございます。職業の紹介や派遣も承っています。けど、違うみたいですね」
「おはよう。少し早いんだけど、ここを出るわ。お祭り参加できないみたい」
「え! そっかぁ、残念」
「もう少ししたら、竜と飛ぶから、あいさつにきたの。いろいろお話しありがとう」
「みなさま、ありがとうございました」
「それじゃ」
わたしが振り向こうとすると、待ってと言われる。
「出るなら、これ渡すわ」
カウンターの下がわで、なにかを探している。
「なにかしら」
紙に印刷したなにかの姿だ。
「これ竜に聴いたときに、気になって探してみたの。旧い竜の写真で、地域の竜の記録のなかでもあまり残っていないめずらしいもの。複写だけどね」
「わかった」
「風の……知り合いの竜とも逢えるといいわね」
「ええ、逢えるわ……たぶんだけどね」
リナミィナが軽く手を振ってくれると、もう次の相手をしている。
ハッシュリシアスが横からみているため、見せるようにする。
「旧いな」
「複写だって」
「それにしても、背景がぼやけてる」
何頭かいる竜のうち、仲良さそうにしている三頭が中心の写真らしい。
ほかの周りの竜たちは、はっきりとはわからない。
もしかしたらはじめに撮ったときには、もっとはっきりとしていたのかもしれない。
ライラリックュスがちらっと見たあと、カバンからなにか包みを出してくれるため、それに収めてからカバンにしまう。
また竜たちの側にいくと、ヒロスターニャは、体操のように身体をひねったり傾けたりしている。
「準備してるの?」
「そうだ……いいだろ」
「そうね」
ほかの二竜は、少し暇そうにしていた。
「さ、リーダー、次はどこまでいきますか?」
「一度上がってから、山沿いをまわって、平気そうなら海がわから、向こうがわにいくわ。広い街があったかわからないけど」
「それなら、少し遠くまでいけば、たしかあったと思うな」
「わかった」
「そこで、休憩ですか」
「あとは、装備品整えるの」
それに絵やほかのことも広い街なら、またわかることがあるかもしれない。
「いまのところ平気そうだけど、気をつけてね」
ハッシュリシアスの竜が、少し不安そうだ。
「どうして」
「山からの風と海からの風は、違うの。不安定な部分があるかも」
「わかったわ」
「鎖繋いで、荷物積むわ」
ヒロスターニャは、それで準備体操していたらしい。
口で紐や鎖を器用に背中に回すと、片手ずつ、それを自身に巻きつつ、結べるようにする。
わたしは、それを手伝う。
ハッシュリシアスとライラリックュスも、竜の準備をしている。
遠くから、またお祭りの準備の賑やかな声がしている。
ここのお祭りは、風の竜との協力で成るお祭りだ。
ちゃんと食べただろうか。
それに、街の代理となっているリナミィナも、どこか竜を怖がっていた。
今度会うときには、お話しや竜たちのお世話をいろいろ相談してみてもいいのかもしれない。
依頼ではないけれど、そのくらいなら、リナミィナもしてくれるのではないかな。
ライラリックュスが準備できて、乗り込むところで、わたしも背中に移った。
ヒロスターニャが鎖ともうひとつロープをベルトに固定するよう指示してくる。
やけに頑丈に、安全帯を用意してくれた。
なにかあるのだろうか。




