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ヒロイン  作者: 十矢


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18/20

さんかせず

 リナミィナの依頼がおわると、お祭り楽しんでくださいね、と言われたあと、お礼はなにがいいかなと聞かれた。

 そういえば、決めてなかったと話しをしたところ、そんなに多くないですがと、魔導石を数種類と、それに竜のアイテムなどを加工してくれる加工場を使う許可をくれた。

 いつでも、この街で使っていいらしい。


 お祭りは、もうあと数日だと言われて、ハッシュリシアスとライラリックュスは、少しはのんびりできるかもといく気だ。


 泊まる場所に戻ってきたのは、まだ夕方手前だったため、竜に風の竜の話しを聴かせていた。

 あの指輪は、どういう意味だったのか。


「あのひもで通した指輪は、どういうのなの」

「さぁな。詳しいのは。ただ、妖精王国時代のものなんじゃないか」

「腕輪も、指輪もなんだか懐かしそうにしてたわ」

「そういえば時代史はニガテなんだったか」

「違うわ……竜王国時代のほうが詳しくなり過ぎて、もうなにか混ざってきちゃう」

「よく話しをしているからな。また話すか」

「まったく何百年か前の知識ばっかりね」


 少しおかしそうに、笑っている。


「最近のは、すぐに忘れてるからな。竜時代のは千年よりもっと……一万年?」


 自慢にしないでほしい。

 一万年でも千年でも、もうたいして変わらない。


「話しは、またしてくれる」

「いいぞ。もっともまた夜に、ゆっくりとだな」

「そうよね……寝てもまだ話してるものね」

「寝るな。聴きたいのだろう」


 また話しだしそうなため、とりあえず竜王国時代の話しは今度にしてもらう。


「ま、それより風の竜は、知り合いに会うってことだったけど、なんで、そんなに急いだのかしら。慌ててお祭りの時に戻ってきたそうよ」

「計画性なしだな」

「そういわないでよ」


 でも、竜のいうことはわかる。

 この地域のお祭りの時期がわかっているのだから、でかければ、戻ってこられるかくらいは、考えるんじゃないかということだ。


「竜でも、急ぐことはある。でも、自然の声を聴くにしては、時間がかかっているな」

「少し疑問なんだけど、やっぱりあの指輪、なにか意味があったんじゃないの」


 少し眼を細めてこちらをみる。


「忘れていることのほうが多いが、妖精王国時代は、とにかくいろいろあった」

「妖精……わたしいまのところ会っていないわ」

「妖精たちは自分たちの領域からは、あまりでたがらない。ときどき(なが)しで歌をしていたり、詩を詠むのもいるが珍しいだろう。あの指輪は、なにかでもらったんだったか……忘れているな」

「なんだ、忘れているのね」


 けれど、けっこう見た目にも貴重そうなため、いまのところ布に包んでカバンにある。


 このあとは食事にすればいいだけなんだけど、街中は、お祭りの前だけあって慌ただしい。

 ほかの竜は、ときどき慌てて低空を飛び、なにかにぶつかりそうになるし、飾りは途中で止まっている場所があったり、屋台の材料が足りないと悲鳴が聞こえてきたりする。


「ここの連中のお祭り、本当にできるのか」

「そうよね。お祭りもうすぐなのに」


 それでもリナミィナの依頼がひとつ済んだため、身軽にはなった。

 変わらずアオイハナに関しては、なにもわからない。

 それに、ハッシュリシアスの行動も少し気になる。

 護衛で頼まれた仕事以外にもあると、ライラリックュスは言うけれど、お姫さまのいる国も、慌ただしいのかもしれない。


「あなたは、食事どうするの?」

「さてな、昼には集会で食べてきたが、こう慌ただしいと、ゆっくりできる場所などあるか」

「そうね……たしかに」


 話している目の前で、物をぶつけて散らばる音がするし向こうではなにか割れる音がした。


「山のほうでもいけば、だれかいるだろう。なければ、木の実にでもするか」


 羽を拡げるため、少し避ける。


「あ、山のほうなら」

「なんだ」

「風の……」

「風の竜にも、会えたらな」


 そういってから、ふわりと飛ぶ。


 ハッシュリシアスを探しにいくことにする。

 泊まる部屋を探してみていなければ、ライラリックュスといるかもしれない。

 ライラリックュスがウラナイしたがっていると、伝えてみよう。

 ウラナイにも、種類があるらしい。


 それに彼女がおこなうものは、わたしの想像しているものとは、だいぶ違うようだ。


「外れるとか当たるとか、そういう次元のじゃないのかも」


 落ち着く場所にでられたら、手帳にも書き込まないといけない。

 依頼の残りは、と考えながら歩く。



 アオイハナと絵は、なにもヒントが得られない。



 しばらくは、ハッシュリシアスを見守る活動かもしれない。

 泊まる建物に入り、部屋の前についた。


「ハッシュリシアスいる?」


 少し待ってみるけれど、返事はこない。

 試しにわたしたちの部屋にいき、扉を開けようとするも、鍵がかかっている。

 これなら、ライラリックュスもいないのだろう。


「あとは、どこだろう」


 竜のいそうな場所に行ったのなら、さっき話してくれただろう。

 それ以外だと職業紹介訓練所か、あとは、食事スペースかもしれない。

 食事のことは、ともかく明日の打ち合わせをしたい。

 お祭りに参加するなら、数日泊まることになるし、時間があるなら、ここの加工場にもいきたい。

 使っていいと言われているから、竜の装飾や鎖など、できることもあるだろう

 そうして探し歩いているうちに、急にお店から、ハッシュリシアスがでてきた。


「あっ」

「追い出されてたの?」

「いや、詳しい話しを聞きたかったのだけど、よく知らないらしい」

「そっか。ライラリックュスと一緒じゃ」

「ウラナイするところがあると言ってたけど、そんなに遠くじゃ」


 立ち話ししているうちに、ライラリックュスもでてきた。


「あっ」

「知り合いいたの?」

「いいえ、ウラナイしませんかって聞いたんですけど、お祭りの時期は急いでるから、急ぎじゃないって」

「そっか」

「ウラナイって後回しですね」

「そうなのかな」


 あまり探してまわる前に、集まってしまった。

 わたしもお店まわりをしようかとも思っているけど、それにしては、どこもばたついているらしい。


「お祭りって……」

「準備が……」

「あちらこちらで、物落としてるぞ」


 あまり落ち着いて、お店をみてまわるような感じでもないらしい。

 ふと影がくると、ライラリックュスの竜だ。


「あれ……どうしたの」

「空いてるなら荷物運ばないかって、言われるから、こっちきた」


 ハッシュリシアスの竜も降りてくる。


「あれ……」

「あの。低空まで竜が飛ぶから、いろんな場所で物音してるわ」


 この様子だと、ヒロスターニャのいうように、山くらいが一番静かなのかもしれない。


「そうだ。少し早めに飛ぶことになりそうだ」

「えっ……用はいいの?」

「ここのは、いいはず。でも、早めに飛ぶほうがいいが、そっちのはどうなんだ?」

「そっちって、依頼?」

「そうだ」


 すっかりわたしのは、依頼をしてまわっていると思われているらしい。


「平気よ。リナミィナの頼みは済んでるんだから。でも、お祭りは……」

「いきたいけど、ここの地域の住民じゃないから」

「わたしも、そうです」


 なぜか、急にでかける話しになる。

 お祭りは、いいのかしら。


「夜に竜たちに話して、朝かな」

「そうですね」

「次のは、決まってるの?」

「そこは、リーダー」

「そうですよね、リーダー」


 行き先もまだ決まっていないのに、朝には、飛ぶらしい。


「まぁ……それじゃ朝までには、考えるわ」

「よかった」


 朝、ハッシュリシアスのいる部屋前で、集合することになった。

 ハッシュリシアスは、もう少しだけまわってから、部屋でゆっくりするといい、また分かれた。

 リナミィナには朝伝えるとして、ライラリックュスに話しかける。


「ねぇ、数日はいる気持ちだったんだけど」

「え、あぁそうですよね」

「どうしたの」

「夜にまた、部屋で話しますね」

「そっか」


 また夜に、寝られないらしい。

 話し途中で、違うことしようかな。


「ちょっと、食事にしない? あいてるかな」

「わかりました! 探しましょう」


 二人で食事スペースを探していき、三つめをみにいくと少し狭いけれど、入れるお店があった。

 入ると窓は小さく、通路に棚があったりする。

 アンティークの小物が置いてあるけれど、これ棚がなければ、もっと広いお店なんじゃないかな。

 実際のテーブルと席数では、そんなに多くは入らないだろう。


 角の席に案内されると、小さいテーブルだけど、落ち着くことはできそうだ。

 ライラリックュスが注文を選ぶなか、テーブルに手帳をひろげ、書いていく。

 しばらくちゃんと報告をまとめていなかった。

 前に細かくできたのは、職業紹介所だった気がする。

 わたしたちの持っている手帳は、特別なものなため書くのをあまりサボると、なにか……あるらしい。

 なにがあるのか、知らない。


「手帳えらいですね。わたし書いてないかも」

「できれば、あとでにしないほうがいいわよ」

「そうですね。注文したあとにしようかな」


 わたしも、メニューをみたあと二人で注文して、また手帳に戻る。

 でも、ライラリックュスは気乗りしないのか、すぐに閉じてしまう。

 しばらく書いているうちに、注文したものが届く。

 顔を上げると、ライラリックュスがなにか話しそうな感じだ。


「手帳もう少しなんだけど、ライラリックュスはいいの?」

「なんていうか、どこまで書こうかなって感じなんです。あとにしよ」

「そっか」

「あ、食べましょ」


 なんだか、ライラリックュスはときどきぼーっとしている。

 考えごとらしい。

 夜中の話しも半分は愚痴なのだけど、ほか半分は、なにかウラナイをするほうの悩みというか、なにかを迷っていることが伝わる。


「おいしい」

「小さいお店にしては、ちゃんとしてるね」


 近くの席のかたも、おいしいね、と話している。

 もしかしたら、この地域では有名なお店だったのかもしれない。


「これなら、ハッシュリシアスもきてもよかったですね」


 手帳をカバンにしまい、少しだけ悩むけれど、たずねる。


「ねぇ風の竜の噂、どう思う?」

「ウワサというと」

「風の声が聴こえたのは、本当だと想うの。でも、知り合いまで、そんなに急いでいったのは、竜にしか、わからないなにかあるよね」

「そうですよね」

「ハッシュリシアスのウラナイと、なにかある?」

「え……あぁあとでお話しします」

「そっか。竜たちも実は、少しだけ気になるの」

「なんですか」

「以前との態度と少し変わってきてる。そっちはどうかな」

「わたしのは……少しは話すようになったけど、態度とかわかるかな」

「なにかないかな」

「えらいですね」

「え……」

「なにか、竜としっかりと意思疎通するみたい」

「そうでしょ。契約もあるし、竜に乗るし」

「契約とか……あまり話すなって言われたんですよね」

「それは、みんなよね」

「いえ……ほかにも」

「ほか?」

「うん」


 なんだか、真剣だ。

 やっぱり夜にもう一度話したほうが、いいかもしれない。

 地域の会話は、やはりお祭りの話しが多い。

 けれど、ときどき前より騒がしいとか、ほかの地域のヒトが来ると、迷惑なことも多いと、地域の悩みもあるらしい。

 窓が小さいため、あまり風景はみられないけれど、それでもときどき竜が上を横ぎる。

 お会計をするときにも、どこかライラリックュスは、沈んでいるため、声をかける。


「どこか、体調わるいの?」

「平気です」

「はやめに戻ろっか」

「いいですよ。もう少し歩きましょう」


 そう言って、お店をでて歩きまわるも、気になってしまう。

 町の飾りは昼間よりも増えていて、少し薄暗くなると、明かりもついている。

 ときどきなにかのマークがあるのは、ここの街のものなのだろう。

 ひとつだけおおきめなショップに入り、なかをみていくも混んでいて、ゆっくりできるところは少ない。


 もしかして、本当に体調が悪いのかもしれない。

 そう思って、はやめに戻ることにした。


「そろそろ部屋にいきましょう。はやめに明日の準備でもいいし」

「え、まだ」

「いいわ。いこ」


 部屋にいく途中、少しだけハッシュリシアスの部屋の様子を気にすると、もう戻ってきているのかもしれない。

 部屋に入り、先にシャワーにすることにした。

 この前は、夜中おそくで慌ただしかったからだ。


「どうしたのかしら……」


 浴びつつ、ライラリックュスのことを考えてしまう。

 ただお祭りに参加しないことで、落ち込んでいるなら、まだいいのだけど、どこか体調が悪いのか、それか、ほかのトラブルでもあったのだろうか。


「交代よ」


 乾かしてから、そう声をかける。


「そうですね」


 少ししてから、シャワーして戻ってくる。


「それでなんですけど、お祭りよかったんですか?」

「ええ、たしかに楽しそうだけど、ほかの依頼のもあるし、お祭りの期間ずっといることになっちゃう」

「そっか。風の竜ちゃんと食べてるかな」

「平気よ。怪我じゃないから、少しすれば、動けるようになるわ」


 しばらく雑談するも、なんだかそのまま話しをしている。

 このまま、寝てしまうのだろうか。

 そう思っていたら、ふと会話が途切れてしまった。


「風の竜の心配?」

「いいえ、そうじゃないの」

「迷ってるようにみえるわ」

「……うん」


 あまり話したくないのかもしれない。

 でも、なんとなく聴いたほうがいい気かする。


「ハッシュリシアスに、なにかした?」

「え!? わたしなにか言いましたか」

「ううん。たぶん」

「そっか……あなたと会う前に、別の場所で会ったから、ウラナイしました。少し前から、気になる……ていうかみたほうがいいと思ってた」

「そうなんだ」

「ハッシュリシアスのこと、どうみえてます? 言い方変かな」

「ハッシュリシアスかぁ……」


 すぐには、応えられない。

 いくつか当てはまりそうなものもあるけれど、これだと、決められない。


「わたしは、仲良くなった竜乗りとか、リーダーの下に集ったとかくらいなんですが、話すようになると、けっこういいヒトなんだっていうのはわかります」

「そうね」

「だから、心配」

「どういうのなのかな」

「言える部分と言えない部分あって、あやふやしかない」

「いいよ」

「ハッシュリシアスとは、これからも旅していきそうだけど、どこかでバラバラになる。いいえ、離れる?ううん……はっきりとは表現が、なんですよね」

「ひとつ聴いていい?」

「はい」

「それって……結果ではなくて、経過?」

「わたし次第なのかな……」

「それなら任せて!」

「えっ……」

「わたし依頼されたら、基本最期までみるの。ライラリックュス、わたしに依頼して?」

「依頼増やすんですか……?」


 なんで、そこで飽きれるのだろう。

 竜とどこか態度が似ている。

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