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ヒロイン  作者: 十矢


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15/20

かいてあるもの

 教会の神父さまに案内された倉庫で、ようやく旧王国文字をみつけた。

 腕輪の解読には、まだ時間がかかりそう。

 わたしは、あまりこの時代の旧い文字はわかりそうにない。


「教会って、こうした資料も集めるのもお仕事なんですか」

「いいえ、わたしの仕事ではありますが、神父としての仕事というのではないですね」


 意味深なのだけど、神父さまは掛け持ち仕事もあるのだろうか。

 けれど、いまは拡げられている一覧や資料で、旧王国文字をみていくことにする。


 読めない。


 竜王国時代の禁断の書の文字なら読めるけれど、それよりあとの文字は、勉強しそびれているのよね。

 仕方なく、ハッシュリシアスのみているものとは、違うものを手にとる。


「あれ……なんだろう」


 腕輪のとは違うみたいだけど、少し知ってる気がする話しがある。

 もしかして、竜に聴いたことのある話しなのだろうか。

 物語にも想えるけれど、バラバラになっている。

 設定集的なものなのかしら。

 わたしが悩むもほかの三名はパラパラと(めく)っている。


「みつかりそうですか」

「少しだけ。でも、この文字列探すのは苦労するかもだ」

「そうですよね」


 神父さまも協力してくれている。

 いまわたしの手にある物語のは、直接は関係していなさそうだ。

 バックから手帳をだして、それにタイトルや少しだけわかったものを書き出す。


「時間かかるわよね」

「そう……かもな」


 ハッシュリシアスと眼があう。

 伝えようか迷っている。

 腕輪の文字と地の竜は、本当に関係しているのだろうか。

 けれど、思いつくものもあった。


「なにか、みつかるでしょうか」

「ひとついいかしら」


 ライラリックュスがこちらをみる。


「なんですか」

「もしかして関係ないかも。でも、王国文字で思い出したことがあるの」

「どういうのですか。話してください」

「ちょっと待ってね」


 少し暗いため手帳をテーブルに拡げてから、明かりの下に持っていく。

 少し書きこんでいく。

 さきほどのこととは、別のことになる。


「ハッシュリシアスは、旧王国文字がわかるのよね」

「まぁだいたいは。王国文字と近いし」

「神父さまは、どのあたり」

「わたしは、旧王国時代とその前くらいですね」

「ライラリックュスはどう」

「わたしはまだらですね。ゼンブというより、ちょっとずつ」

「それなら、こうしましょう!」


 書物をそれぞれで読むのもいいけれど、腕輪の文字があるのを忘れていた。

 手帳に書いたものが読みづらいけれど、伝わったらしい。


「それじゃ、わたしが書くんですね」

「ライラリックュスは、細かく写してね。ハッシュリシアスは、神父さまと見比べて、発音や似ているか選別」

「わかった」

「わたしはそれぞれを組み合わせるから、意味が通じてるなら示してね」


 ライラリックュスに腕輪の文字をみせながら、ひとつずつ丁寧に書いてもらう。

 ハッシュリシアスと神父さまは、出してあるなかから似ているものをさらに、別の紙に書いている。

 それを言ってもらい、わたしが意味になりそうかをまた聴き返している。

 だんだんとやり方がわかってきた辺りの時に、ライラリックュスがなにか呪文のように応えている。


「おと……あめ……し……かけ……」

「なにか……」

「しーー」

「に……いし……と?」


 繰り返している。

 幽霊に取り憑かれた者にみえる。

 怖い。


「おとにして、意志ありて、影あるところ……と」

「音は音だから、繰り返している」

「それじゃ、並びがあるの」


 神父さまが、紙にいま聴いたものを写す。


「意志ありて影ありしところに、付加される音でしょうか」

「影……」


 ハッシュリシアスが驚いている。


「どうしました」

「影……を探してるんだ。偶然だな」


 幽霊のことだろうか。


「とにかく付加される音というのは、竜が探している声なのかもしれない」

「違うかもな」

「なんで、そういうのかな」


 神父さまがひと息入れましょうと、ポットから、温かい飲みものを入れてくれる。

 ハッシュリシアスの表情が暗いのが気になるけれど、それは、ここの場所が薄暗いからなのだろうか。

 少し狭いけれど、カウンターで並ぶ。

 椅子は二つしかないため、わたしとライラリックュスが座る。

 ハッシュリシアスが、なぜか丁寧に、どうぞと示してくれたのだ。

 護衛だ。


「神父さまは、ここの教会以外にも、担当はあるんですか」

「ええ。ここは受け持ちのひとつというだけで、中央のひとつにオフィスと、それに地方も含めて複数あります」

「偉いかたなんですね」

「いえ。どこも神父、シスター不足なんですよ。シスターも経験を重ねている者は、中央に派遣しています」

「竜もけっこう数が減ってきたってこの前、妖精噂を聴いたわ」

「そうなんですね。竜に関する文献は、なかなかまわってこないため、それは貴重なお話しです」


 本当にここの神父さまは、神父さまなのだろうか。

 そう疑うくらいには、この方はなにか違う眼をしている。


「ライラリックュスは、けっこう文字や分析ができるのね。驚くわ」

「わたしはウラナイの関係で、吸収するだけなんです。はるか昔にある資料もときには、読まなくちゃいけなくて」


 カップをそっと持っていく。

 遠慮している風ではなくて、意外と勉強することが多いらしい。

 ひと息しつつも、さきほどのことを考えてしまう。

 付加される音というのは、竜の探しものな気がする。

 ヒロスターニャが、言っていたことに近くなる。

 竜も、たくさんのモノを抱えていて、捨てられないモノもあるというのだ。

 長生きすると、どこかで増えてしまうと言っていた。


「もう少し探してみます。神父さまありがとうございます」


 神父さまは、やや楽しそうにカップを持っている手とは、反対を差し出す。


「見つかるよう、こちらももう少しアタマをひねってみます」

「わかりました」



 倉庫からでて教会の外にでると、まだそれほどに、夕暮れではなかった。

 とても長い時間過ごした気がするのに、集中していたからかもしれない。


「あとは、どうする」


 神父さまには、もしなにかみつかったら、職業紹介所の担当に知らせるように、伝えた。


「竜に向かう前に、もうひとつだけ」

「わかりました」


 お祭りは日にちが近くだ。

 これでみつからなければ、明日以降、竜にも手伝ってもらうことになる。

 もうひとつの心当たりは、すぐ近くだ。


「リナミィナ」


 夕暮れ時、仕事終わりのリナミィナを呼び出した。

 もう暗くなりかけだ。


「おお! 男の子」

「ハッシュリシアスっていうの。グループかな」

「リーダーはきみだよ」

「そうね」


 それじゃ、わたしの名前になってしまう。

 それは、そうとして、聴くことがある。


「喫茶店いく?」

「いいえ、だずねたいの」

「なに?」

「この腕輪とか、みたことは」

「……ないわ」

「そっか。それと、泣き雨についてなんだけど」

「ええ、なにかしら」

「石って意志っていう意味なのよね。地の竜が声を待っているのは……雨でも石でもなかった。地の竜と逢いたいの。なんで、黙っていたの?」

「……それお祭りのためなのよね」


 リナミィナの寂しそうな表情が、わたしの確信になった。

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