69.今までで一番のピンチ
そして、時は流れイベント開始日となった。
ドキドキ!
私は配信をする為に、OVSを起動!
そして、動かす為のソフトもOK!
更には正体がバレると参加が無効になっちゃうから、ソラちゃんがどっかのサイトからダウンロードしてくれたボイチェンも!
そしてそして! ソラちゃんがどっかのサイトから取ってきた壁紙!
かわいい夜空の壁紙だ。
後はコメントが見えるように、画面上にコメント欄を表示させる!
やり方はソラちゃんが教えてくれた。
これがあるとスマホでもコメント確認しやすいんだってさ!
最後に私のキャラクターを画面上に呼び出す。
私と同じ黒髪セミロングの髪型だ。
無料で作ったアバターなので、特徴らしい特徴はない。
よし! 準備も完了したことだし、配信だ!
今の時刻は朝7時。
朝早いけど、まぁ大丈夫でしょ!
私は配信を開始するボタンをクリックした。
「皆おはよう!」
その後私はVtuberとして、はじめまして! と言った後に自己紹介をする。
けど、誰もコメントしてくれない。
いつもだったら、すぐに返事が来るんだけど……。
もしかして、電波が悪いとか……?
それか……。
私はマイクをミュートにする。
「ソラちゃん! なんかパソコン壊れたかも!?」
「ふぇっ!?」
私はベッドでまだ眠っているパジャマ姿のソラちゃんに、叫んだ。
なぜソラちゃんが私の部屋で寝ているのかというと、今日なにかあったからすぐに対応できるようにと、泊まってくれたのだ。
「な、なにがあったんですか!?」
ソラちゃんは起き上がって、一緒にパソコン画面を覗き込んだ。
「誰もコメントしてくれないんだけど、電波が悪いとかパソコンが調子悪いとか、そんな感じかな? いつもなら沢山コメント来るのに……」
「? 別になにもおかしいことはないと思いますよ。 って、ルカさんは有名になってからスタートしたので、同接0人を経験してないんですね」
「同接って?」
「え!? いつも同接……同時接続数見てないんですか!? ここです! ここ! ここに今この放送を見ている人の数が表示されます!」
「あっ! 0ってなってる! 配信に夢中で気にしたことなかったよ!」
「そ、そうなんですか?」
その後、ソラちゃんは色々説明してくれた。
本来同接0人は珍しくないことや、来てくれてもすぐに配信から去る人も多いこと。
そして同接0人だと1対1になるから入りにくく、最初の1人に来てもらうのすら難しいということも。
そうならない為にも、有名Vtuberを目指す人は準備期間というものを結構な期間設けるらしい。
結局、私は昼まで配信して、1人に好きな食べ物を訊かれたくらいで終わってしまった……。
☆
昼食は、ソラちゃんと一緒に近場のハンバーガーショップに行った。
食べ終わった後も、勿論配信をした。
その日は結局、合計6時間配信したけど、合計6人しか来なかった。
その中でもコメントしてくれたのは、2人だけという悲しい結果に終わってしまった。
「では、なにかあれば連絡ください!」
「今日は本当にありがとう!」
その日の夕方、私が無事に初日の配信を終えたのが分かると、ソラちゃんは帰っていった。
次の日もその次の日も……イベント終了日まで、夏休みということもあり、1日結構な時間配信したけど、結局ほとんどコメントがなかった。
中々に心が折れるね、これは。
イベントじゃなかったら、とっくに活動をやめていたレベルだよ……。
私はこのイベントを通して、ネームバリューなしに、1から配信や動画を始めて成り上がった人達の凄さを実感した。
☆
「まぁそう落ち込むな。そんなもんだ。私も昔ニコ生……ニコリン生放送をやっていた時そんな感じだったし、コメントのほとんどはアンチコメだったからな」
8月1日、大会の結果発表の後、クランメンバーが再びソラちゃんの家に集まった。
というか、師匠の言うニコ生ってなに?
ニコリン動画って言う動画サイトがあるのは知ってるけど。
「さてはニコ生を知らないな? 今も有名……まぁ、昔はもっと有名だったけど、それなりに有名だぞ?」
「そうなの?」
そして、私の他のクランメンバーも大会に参加したので、その結果を聞いた。
だけど皆私と似たような結果だったらしい。
「豪華旅館……!」
私は悔しくて、100円ショップで買ったマシュマロにハチミツをかけて、やけ食いした。
甘くて美味しい!
「落ち着け」
「だって……優勝できるかなって思ってたから……」
「お前の目的は優勝より、温泉旅行だろ?」
「うん!」
「だったら問題ないな」
どういうこと……?
「優勝者から温泉旅行券を譲っていただくことになった」
「「「え!?」」」
ど、どういうこと!?
「1つ言っておくが、別に私がお願いした訳じゃない。
どうやら私達クランへの寄付的な意味合いだそうだ。
“配信で例えるなら、ウルチャみたいな感じ”……って言ってたな。
更にその後、仕事続きでどっちみち行けないし、一緒に行く人もいないとも言ってたな」
ありがたいけど、いいのかな……?
「実はこれ大会2日目に、クラン主である私宛にメールが来てだな。
“絶対優勝するから、温泉旅行楽しみにしててください”的な文面だった。
まさか本当に優勝するとは思ってなかったから、正直びっくりしてる」
「だろうね!」
かなりトークスキルとかに、自信があったんだろうね。
でも、本当にありがとうございます!
「これで豪華旅館だ!」
「そうだな!」
「はい!」
ココロちゃんとソラちゃんも、思わず笑顔を見せた。




